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「アゲイン(陸×千)」
4:手さぐりの夜

アゲイン 4-2

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細身とはいえ、千田の体は間違いなく、男。
柔らかさもないし、下半身に触れれば、女にはあるはずのないものがある。
それでも、違和感とか嫌悪感とか、まるでない。全てが千田というだけで、寧ろ、愛しくてたまらない。体中が熱くなってくる。
どんなに好みの体を持った女なんかよりも、この体が一番興奮できると、断言できるほどに。

「好きや、有介…」

暴走しないように、怖がらせないように、沸き起こる欲望を必死で堪えながら。きつく目を瞑って羞恥心と必死に闘う千田に、陸はそっと囁く。それから優しくキスをして、抱きしめた。
すると、ゆっくりと目を開けた千田が、先ほどの恥じらいはどこへやらとばかりに陸をしっかりと見て、

「俺も……陸が好き」

笑った顔は、薄暗い部屋の中でそこだけ輝いたように、陸には見えた。

千田はその言葉を、ほぼ条件反射のように答えていた。
好きだ、なんて……初めて言われたわけでもないのに、この状況下でも自分にそれを言ってくれたことが、ただただ嬉しかったのだ。
こんな体でも欲しいと思ってくれて、同じ男の体を見ても触っても、心からの言葉をくれた彼が、愛しくて仕方ない。
だから気が付けば、羞恥心なんて一気に吹き飛んで、自分も好きだと、告げていた。

どちからかともなくキスをして、見つめ合い、微笑み合う。
すると、陸が本当に嬉しそうに笑って、

「な、俺のこと、いつから好きやったん?」

掘り下げて聞いてくる様は、まるで子供のようだと千田は思った。
こういう少し子供っぽいところもまた、陸の意外な一面であり、千田が好きなところ。

「陸こそ、どうなの?」
「ん?」
「男の俺を、なんで好きになったの?」

同性で恋に落ちる。千田はそこに不自然さを感じたことはないし、周囲にも同性カップルはたくさんいるし、自分だってありえることだろうぐらいには思っていたけれど。
いざ自分が当事者となり、相手が女性に不自由したことのないモテ男となれば、不思議で仕方ない。
だからこの機会にと、そんな質問を投げかけてみれば、

「…うん、そっか…、そうやなぁ」

千田の前髪を掻き上げた流れで頭も撫でてきた陸が、

「どうしてだか有介のことは、最初から恋愛対象やったかな」

自分はこいつを好きになる―――そう思っていたと。

それは、千田も同じだった。

『あ、千田やったっけ?』

グループとしての初仕事があったスタジオで、何となく一番最後になってしまった千田が駐車場に出ると、困ったように立ち尽くす陸と目が合ったあの日。
所属ユニットのプロデューサーであり事務所の大先輩でもあるわけだから当然挨拶はしたことがあったものの、まともに話したことはなかった。

『なぁ、ここってタクシー来ないの?』

行きはショッピングモールのシャトルバスにちゃっかり乗って来たものの、帰りはのんびりしてる間にバスが終わってしまったようだった彼は、帰る手段を失い呆然としていた。その姿があまりに気の毒だったから、

『俺の車で良ければ、送りましょうか?』

気が付けば、そう提案していた自分。そして自分のその言葉に、本当に"助かった"という表情を見せた陸。
彼はお礼にと、帰りがてら夕飯に誘ってくれた。そこまでしてくれる彼を千田は不思議に思いつつ、何となく離れがたかった自分もまた、彼の誘いに乗った。
陸との食事は本当に楽しくて、芸能界での話もすごく勉強になった。でも時間的にそんなに長くは居られなくて、それが何だか本当に残念で……

『良かったらまた行こうよ。連絡先教えて?』

気さくな笑顔でそう言ってくれた彼に感じた、ドキドキ感。
赤外線を通じて入って来た"安藤陸"という文字に感じた、特別感。

『千田とは一度話してみたかったんやわ。今度はもっとゆっくり話そな』

自分をそんな風に気にかけてくれていたことに、たとえそれが社交辞令だとしても、千田は嬉しくて仕方なかった。
いつか来るかも分からない"今度"に、ワクワクした。
今思えば、あの日すでに自分は、彼を恋愛対象として見ていたに違いない。

だって、ほら。
あの日の感情は、今だって根本的には変わっちゃいない。
あの日より、今の方が強いというだけ。
そして明日はきっと、今日よりも強く……

この人も。
自分と居て、そんな風に……感じてくれているのだろうか。

「考え事すんなや」

回想モードに入っていた千田の頭を、陸が優しく笑いながらくしゃりと撫でた。
ずいぶん余裕やな、と口を尖らせる彼に、千田は笑みがこぼれる。
あの日までずっと遠くにいた人が、ふとしたきっかけで、こんなに近くに居ることが信じられない。

「"最初から"って言われて……つい、初めて話した日のこと、ちょっと思い出して…」
「ん?」
「陸、困ってたなぁって」

思えば、自分たちを繋げたきっかけも、陸の"うっかり"だった。

「ああ、あれなぁ。情けないところ見られたけど……」

でも…と、陸が千田にチュッとキスをして。

「有介が車で送ってくれるって言ってくれて、"このチャンス逃したら後がない"って思ったよ」

ずっと、誘う理由を探してたから―――

「……え?」
「千田有介君を個別に誘う正当かつ自然な理由は一体何やろ…って。最終手段は幸樹使うつもりやったけど、アイツけっこう抜けてるから、大河にでも勘付かれたら厄介やなって思ってたからさ」

結局大河に勘付かれたけどね、と、自分自身以外には相変わらず鋭い弟に"お手上げ"とばかりに陸が笑う。

「あのとき有介、"俺、最近までペーパードライバーだったんです"って言いながら助手席の俺を必死で気遣ってさ。エアコンの温度とか車内の匂いまで気にして。めっちゃ安全運転しながらも新幹線の時間気にしてくれたり。俺の思ったとおり、コイツええヤツやなぁって思った。
きっとあのとき俺、有介に落ちたのかもなぁ。だから、あの流れで食事誘うの緊張したよ」

警戒されないように爽やかさを出すのが大変だった、と。

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