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「Engagement(直×大)」
中編:夏休みの課題

Engagement 中編-1

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【中編:夏休みの課題】

8月15日。月曜日。
快晴。猛暑日。

4日目にもなると、大河もようやく回復してきた。
熱も微熱程度まで下がり、余裕も出ている。
この日も、昨夜遅くまで仕事だった直希をそのまま寝かせ、一人で通院に訪れていた。

「ええ天気やなぁ」

診察室を出て待合室に戻った大河は、入口の窓から見える青空にボソリと呟いた。
すると、その入口から現れたのは、長身の見慣れた男。
目立たないようにかキャップと伊達メガネをつけた彼―――直希は、大河の姿を見つけると真っ直ぐ歩み寄ってくる。

「混んでるからええよって言うたんに」

診察前に直希からメッセージにそう返信したはずだと大河が苦笑いをすると、

「休みなんだから良いよって言ったろ?俺も」

まだ無理するなよ、と直希が近くの長椅子に促してきた。

「だいたい、起こしてくれれば良かったのに」
「アホ、それでお前が倒れたらどうするん。休みぐらい睡眠取れや」

口を尖らせて文句を言い募ってくる直希に、大河は苦笑いで軽く流す。いくら寝込んだとはいえど疲労と風邪ごときでここまで大切にされてしまうと、くすぐったくて仕方ない。

付き合い出して1年が過ぎたが、直希は相変わらず当たり前のように愛情をかけてくれるし、そこに見返りを求めたりしない。
だからこそ大河も、自分なりに返したいと思うし、彼との時間を大事にしたいと思う。花火の約束もそのひとつだった。彼が作ってくれる2人きりの約束は、ひとつ果たす度に、絆が深まっていく気さえするから。
それなのに、寝込んだ挙句に、約束を守れず落ち込む自分のフォローまてさせてしまって。本当に、自分はまだまだダメな恋人だなと、大河は思う。
でも、あんな方法をとってでも約束を果たしたことにしてくれた直希を思えば、もうひとつ交わしていた約束はちゃんと自分で守りたくなって。

「帰り、ハトリ寄って帰るか?」
「え?」
「ダイニングテーブル、結局買ってへんやんか」

そういえばそんな約束もしていたと思い出した大河は、ふとそう口を開いた。

「お前の誕生日プレゼントも有耶無耶になっとるし、買うたるで」

直希の肩をポンと叩いて、財布をヒラヒラさせて笑う。

「ハトリならタカが知れとるし」

あのマンションのリビングに入る程度のものなら、大した金額はしない。
大河は直希の誕生日に食事はごちそうしてやっていたのだが、プレゼントというプレゼントはあげていなかったのだ。ラジオでウケ狙いのガラクタをあげた以外は。
とはいえ恋人の誕生日は何かしらやってやりたくて、大河なりに考えてはいたものの、互いに忙しくていつの間にか時間ばかりが経ってしまっていた。

「な?何も無しは、俺も嫌やから」

1ヶ月も遅れてはしまったがちゃんと祝わせてくれと、大河がもちかけると、

「じゃあ、お願いしようかな」

直希も素直に頷いて笑った。

「早く会計呼ばれねぇかなぁ。ハトリハトリ♪」
「お前、あんまそれ連呼するな。心が痛むわ」
「何で?」
「いや、東京イ●テリアとか大●家具なら、俺もエエ顔できるけど」
「ハハハッ、そこ気にするんだ」

そういう高級な家具は大河と一緒に暮らすときでいいと、直希はそう言いかけたものの…彼に変なプレッシャーを与えるわけにはいかないので、控えておいた。
一緒に住むのは、きっとまだ先。今はこうして、お互いに合鍵を持ち合い、短期間の同棲をこっそり楽しむだけで良しとしておくべきだ、と。

「ちなみに社長だったら、大●家具もいけるかな」
「ハハ、どうやろな。あの人も妻子抱えとる身やしな。奥さん専務やし。意外とおこづかい制かもわからんで」
「何だよ、じゃあ時計とかもっと無理じゃん」
「お前、本気で狙っとったんかいな」

バカな話で笑いながら、2人は無意識のうちに肩を寄せ合って座っていた。




会計で清算をした2人は、夏空の下に久々に並んで立つ。
あまりの眩しさに目を細めた大河は、その光に思わず目が眩んで足元がフラついて、

「おっと、大丈夫?」

隣にいた直希に、すかさず支えられた。

「ヤバイな。たったの数日ですっかり病人やなぁ」
「だね。太陽の光で立ち眩みとか、俺、ドラマの世界でしか見たことないよ」
「そやな。しかも女やろ?それ」
「そうそう」

顔を合わせて笑って、さりげなく肩に手を回してきた直希と並んで、駐車場へと向かう。大の男同士がこんな密着具合を見せていたら普通は目を引くが、片方が見るからに病み上がりの人間であれば、何も不自然さはなかった。たとえ自分たちが芸能人であることがバレようが、病み上がりの安藤大河と相棒想いの鈴野直希という、"美しいグループ愛"で終了だろう。

「あち~~、大河ちょっとだけ待ってて」

車のドアを開けた直希が殺人的な暑さと化している真夏の車内に眉を寄せ、大河を止める。直希の行動の意味に気付いた大河も、彼と同じようにドアを開けた。
それからしばらくドア全開でエアコンをフル稼働してから、2人は車に乗り込んだ。

「とりあえず、何か食っていく?そこそこいい時間だよ」
「あ、そうか、昼メシかぁ」
「何食いたい?」
「ん~、あっさり冷やし中華とか」
「お、いいねぇ」

そういえば今年はまだ冷やし中華を食べていないと直希も気付き、それならばさっそくと、以前幸田が教えてくれたラーメン屋に向けて走り出す。

「そういえば俺、水曜日からロケで3日空けるけど、このままウチに泊まってなよ」
「え?何で?」
「ウチなら冷え●タもまだ残ってるし、薬もあるし、飲み物も冷凍品もけっこう残ってるし。大河んチじゃ何もないだろ」
「あ~そうか。そうするかな。でも俺んチもゴミとか洗濯とかそのまんまやし」
「それは昨日、俺が仕事前にやっといたから大丈夫」

真夏に何日も放置になんてしていないとばかりに、直希が笑って。

「フローリングワイパーかけてゴミ処分して洗濯するぐらいはね、しておいたから心配しないで」

空き家状態にはしてないから大丈夫だよと笑えば、大河はしばらく目を丸くしていたが。

「さすがやな」

フッと、優しく笑って。

「エエ嫁やね」

あまりに際どい事を言ってくるものだから、今度は直希が目を丸くした。
しかし、この助手席の男はきっと何の他意も無く、爆弾発言の自覚なんてきっとないだろうことはその横顔で分かるから、

「旦那だろ?」

頭を撫でながら、自分もさらりとそう返すだけにしておいた。

「愛妻家とでも言ってくれない?」
「それ、自分で宣言する言葉ちゃうで」
「ツッコむとこそこ?」

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