「Engagement(直×大)」
中編:夏休みの課題
Engagement 中編-3
直希のマンション。
「接待?快気祝い?」
直希からのメッセージに、大河は首を傾げた。
心配してくれていた仲間たちにはこれから連絡を入れようと思っていたのに、いつの間にそんな話になったのかと。
すると、すぐに拓郎からメッセージが届いて。
『直希のイ●スタ見たよ。ずいぶん元気そうだな。
土曜日の花火大会、お前の快気祝いがてらPOLYGON御一行様で鑑賞会するから。今から団体席取れるか微妙だけど、アキと一緒に、芸能人の顔を生かして頑張ってみる!とにかく開催は決定だから。みんなもけっこう来れそうだし、途中参加でも来るって言ってる奴もいるし、お前も直希と一緒に来いよっ』
その内容で、すぐに理解できた。
相変わらず行動の早い拓郎と幸田に、そこに同調してくれた仲間に、笑みが漏れる。
そして直希からのメッセージは、きっと2人で見に行く予定が崩れたことを謝ろうとしたものにも思えたので、直希には、
『楽しみやな。団体席取るらしいで』
と送り、拓郎には、
『後ろの方とらんと、"見えない"ってクレームくるから気をつけろよ?デカい奴多いんやから。ま、楽しみにしてるで』
そう送ってスマホを閉じた。
それからソファに寝転がり、そういえば何か大事なことを考えた気がして頭を巡らせ、
「あ……」
すぐに思い出した。
長い休暇も気が付けば1週間が過ぎ、残りはあと4日。貴重な休みの大半を眠って過ごしてしまったとはいえ、仕事に影響なく済むことは嬉しい限り。
しかし、体が回復したことで出てきたのは、新たな課題。その件で、悩み中なのだ。
「ん~~……」
眉を寄せて、天井と睨めっこをする。
大河を悩ませる課題とは、
"直希にどう切り出してやるか"
というもの。
つまり、
―――俺から、誘ってやらんとアカンのやろな……
そういうことである。
おそらく直希は、大河の体を気遣って、誘えないだろうから。
大河がオフ前夜にこのマンションに来た時から直希は、食うだけ食って眠ってしまう大河を咎めることもなく、よっぽど疲れているのだろうと察して一切手を出してこなかった。間もなく熱を出して寝込んでからも、何も気にしていないという顔で傍に居てくれた。
直希はそういう奴なのだ。年がら年中構わず盛っているような、そこら辺の節操無しとは違う。脆く崩れやすい理性の持ち主とはいえ、それはあくまで、大河の健康ありきなのだ。
とはいえ、である。
直希が相当我慢してくれていることは、大河は十分すぎるほど分かっている。
自分たちが最後に夜を共にしたのは、もうけっこう前だ。10日とか2週間とかそういうレベルじゃないかもしれない。その状況下で、同じ空間で過ごし同じベッドで眠っていれば、彼がどう感じているかなんて、大河にだって容易に想像がつく。
それを物語るように直希は、キスだって、あんまり深いものをすれば我慢がきかなくなるのか、軽いものしかしかけてこない。大河が、もう少しだけしてほしくて無意識に強請るような素振りをすれば、
『襲うわけにいかないからカンベンして』
と、余裕のない顔で苦笑いされたこともあったのだから。
そうやって必死で、理性と闘ってくれている。
もちろん、このまま休みが終わって自分が仕事に戻れば、元気な証拠だとすぐに分かる。直希だって気兼ねなく誘ってくるだろう。
でも、直希が楽しみにしていた"10日間の同棲生活"が、ずっと大河の世話で終わるとなれば、やっぱりこの休暇中に一度ぐらいは恋人らしい時間を過ごしたいとも思う。
直希がロケから帰ってきても、この生活は1日だけ残る。だからどう考えてもここで自分が誘うべきだが、
「できるわけないやんかっ」
ボスッとソファのクッションに顔をうずめて、大河はもがいた。
誘うなんて、そんなことできるわけがない。したことも、たぶん、無い。自分が意識している限りの行動では、無い(←無意識では自信なし)。
そもそも今までは、自分から誘う必要もないほど、直希からの誘いの方が早かったのだから。
そんな彼が、ちゃんと我慢してくれた。ならば解禁は、やっぱり自分から報告してやるべきだろう。
「でもなぁ……」
考えるだけで顔が真っ赤になりそうなことに、自分自身でも戸惑って。
彼女が居た頃は自分がお誘いすることなんて普通にあったのに、直希にはそれができない。
―――女から誘うって、こんな感じなんか……
呑気にもそんなことを考えてしまう。
だからこそ、"据え膳食わぬは男の恥"なんていう格言があるのだろう。満を持して誘ってくれた相手への敬意というやつだろうか。
でも自分は男だし、そんな貴重なものではない。どちらかといえば、自分を想って我慢してくれた直希に対して、男として、はっきりと言ってやるべきだと思う。
「男として、やな」
男気なら誰にも負けない大河は、そんな言葉を呟くと少しだけ勇気が出て。
よし、誘ってやろうと。
ならばどうすれば自然だろうかと。
直希が沖縄ロケへ行っている間に、いろいろ考えてはいたのだが……
8月19日。金曜日。夜。
「大河ただいま~~」
「お、お帰り~~」
―――か、帰ってきてしまった……_| ̄|〇
無駄な3日間を過ごしただけの大河だった。
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「接待?快気祝い?」
直希からのメッセージに、大河は首を傾げた。
心配してくれていた仲間たちにはこれから連絡を入れようと思っていたのに、いつの間にそんな話になったのかと。
すると、すぐに拓郎からメッセージが届いて。
『直希のイ●スタ見たよ。ずいぶん元気そうだな。
土曜日の花火大会、お前の快気祝いがてらPOLYGON御一行様で鑑賞会するから。今から団体席取れるか微妙だけど、アキと一緒に、芸能人の顔を生かして頑張ってみる!とにかく開催は決定だから。みんなもけっこう来れそうだし、途中参加でも来るって言ってる奴もいるし、お前も直希と一緒に来いよっ』
その内容で、すぐに理解できた。
相変わらず行動の早い拓郎と幸田に、そこに同調してくれた仲間に、笑みが漏れる。
そして直希からのメッセージは、きっと2人で見に行く予定が崩れたことを謝ろうとしたものにも思えたので、直希には、
『楽しみやな。団体席取るらしいで』
と送り、拓郎には、
『後ろの方とらんと、"見えない"ってクレームくるから気をつけろよ?デカい奴多いんやから。ま、楽しみにしてるで』
そう送ってスマホを閉じた。
それからソファに寝転がり、そういえば何か大事なことを考えた気がして頭を巡らせ、
「あ……」
すぐに思い出した。
長い休暇も気が付けば1週間が過ぎ、残りはあと4日。貴重な休みの大半を眠って過ごしてしまったとはいえ、仕事に影響なく済むことは嬉しい限り。
しかし、体が回復したことで出てきたのは、新たな課題。その件で、悩み中なのだ。
「ん~~……」
眉を寄せて、天井と睨めっこをする。
大河を悩ませる課題とは、
"直希にどう切り出してやるか"
というもの。
つまり、
―――俺から、誘ってやらんとアカンのやろな……
そういうことである。
おそらく直希は、大河の体を気遣って、誘えないだろうから。
大河がオフ前夜にこのマンションに来た時から直希は、食うだけ食って眠ってしまう大河を咎めることもなく、よっぽど疲れているのだろうと察して一切手を出してこなかった。間もなく熱を出して寝込んでからも、何も気にしていないという顔で傍に居てくれた。
直希はそういう奴なのだ。年がら年中構わず盛っているような、そこら辺の節操無しとは違う。脆く崩れやすい理性の持ち主とはいえ、それはあくまで、大河の健康ありきなのだ。
とはいえ、である。
直希が相当我慢してくれていることは、大河は十分すぎるほど分かっている。
自分たちが最後に夜を共にしたのは、もうけっこう前だ。10日とか2週間とかそういうレベルじゃないかもしれない。その状況下で、同じ空間で過ごし同じベッドで眠っていれば、彼がどう感じているかなんて、大河にだって容易に想像がつく。
それを物語るように直希は、キスだって、あんまり深いものをすれば我慢がきかなくなるのか、軽いものしかしかけてこない。大河が、もう少しだけしてほしくて無意識に強請るような素振りをすれば、
『襲うわけにいかないからカンベンして』
と、余裕のない顔で苦笑いされたこともあったのだから。
そうやって必死で、理性と闘ってくれている。
もちろん、このまま休みが終わって自分が仕事に戻れば、元気な証拠だとすぐに分かる。直希だって気兼ねなく誘ってくるだろう。
でも、直希が楽しみにしていた"10日間の同棲生活"が、ずっと大河の世話で終わるとなれば、やっぱりこの休暇中に一度ぐらいは恋人らしい時間を過ごしたいとも思う。
直希がロケから帰ってきても、この生活は1日だけ残る。だからどう考えてもここで自分が誘うべきだが、
「できるわけないやんかっ」
ボスッとソファのクッションに顔をうずめて、大河はもがいた。
誘うなんて、そんなことできるわけがない。したことも、たぶん、無い。自分が意識している限りの行動では、無い(←無意識では自信なし)。
そもそも今までは、自分から誘う必要もないほど、直希からの誘いの方が早かったのだから。
そんな彼が、ちゃんと我慢してくれた。ならば解禁は、やっぱり自分から報告してやるべきだろう。
「でもなぁ……」
考えるだけで顔が真っ赤になりそうなことに、自分自身でも戸惑って。
彼女が居た頃は自分がお誘いすることなんて普通にあったのに、直希にはそれができない。
―――女から誘うって、こんな感じなんか……
呑気にもそんなことを考えてしまう。
だからこそ、"据え膳食わぬは男の恥"なんていう格言があるのだろう。満を持して誘ってくれた相手への敬意というやつだろうか。
でも自分は男だし、そんな貴重なものではない。どちらかといえば、自分を想って我慢してくれた直希に対して、男として、はっきりと言ってやるべきだと思う。
「男として、やな」
男気なら誰にも負けない大河は、そんな言葉を呟くと少しだけ勇気が出て。
よし、誘ってやろうと。
ならばどうすれば自然だろうかと。
直希が沖縄ロケへ行っている間に、いろいろ考えてはいたのだが……
8月19日。金曜日。夜。
「大河ただいま~~」
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総もくじ
★女は災い(陸×千)【連載中】

総もくじ
That night(実×大河)

総もくじ
パンドラの箱(三角関係)

- ┣ パンドラの箱(三角関係)について
- ┣ Prologue
- ┣ 1:ガラスの絆
- ┣ 2:想定外の温もり
- ┣ 3:パンドラの箱
- ┣ 4:コワレモノ
- ┣ 5:決意と決別
- ┣ 6:強硬手段
- ┣ 7:幸福の選択
- ┣ 8:メビウス・ループ
- ┣ 9:はじめて
- ┣ 10:あるがまま
- ┗ Epilogue~次の強敵~
総もくじ
Hide-and-seek(直×大)

- ┣ Hide-and-seek(直×大)について
- ┣ Prologue
- ┣ 1:迫り来る過去
- ┣ 2:Breakdown
- ┣ 3:決戦の日
- ┣ 4:守りたいもの
- ┣ 5:Hide-and-seek
- ┣ 6:氷点下の恋
- ┣ 7:もう一度君に
- ┣ 8:黎明
- ┗ Epilogue~終息の朝~
総もくじ
Engagement(直×大)

総もくじ
アゲイン(陸×千)

- ┣ アゲイン(陸×千)について
- ┣ Prologue
- ┣ 1:疑惑の男
- ┣ 2:あるがままの自分
- ┣ 3:アゲイン
- ┣ 4:手さぐりの夜
- ┗ Epilogue~メンバーの内緒話~
総もくじ
Beyond Silence(W大)

総もくじ
痴話喧嘩(直×大)

- ┣ 痴話喧嘩(直×大)について
- ┣ Prologue
- ┣ 1:誇りと不安
- ┣ 2:起爆剤と痴話喧嘩
- ┣ 3:溺愛と協力
- ┣ 4:無自覚と×××
- ┣ 5:話し合いと持久戦
- ┗ Epilogue~翌朝の痴話喧嘩(?)
総もくじ
reward(直×大)

- ┣ reward(直×大)について
- ┣ Prologue
- ┣ 1:戻った日常
- ┣ 2:お気に召すまま
- ┣ 3:聖なる夜の思い出
- ┣ 4:reward
- ┗ Epilogue~聖なる朝~
総もくじ
極夜(直×大)

- ┣ 極夜(直×大)について
- ┣ Prologue
- ┣ 1:裏切り
- ┣ 2:決心
- ┣ 3:報い
- ┣ 4:極夜
- ┣ 5:決意
- ┣ 6:親愛
- ┣ 7:誓い
- ┗ Epilogue~訪問者~
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シンクロニシティ(直×大)

- ┣ シンクロニシティ(直×大)について
- ┣ Prologue
- ┣ 1:勘違い
- ┣ 2:恋しい人
- ┣ 3:通り雨
- ┣ 4:シンクロ二シティ
- ┗ Epilogue~敏腕マネージャー?~
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Stranger(直×大)

- ┣ Stranger(直×大)について
- ┣ 1:見知らぬ恋人
- ┣ 2:熱い胸騒ぎ
- ┣ 3:独占欲と自覚
- ┣ 4:恋の浸透圧
- ┗ Epilogue~鉢合わせ、再び~
総もくじ
その先へ(直×大)

- ┣ その先へ(直×大)について
- ┣ Prologue
- ┣ 1:告白
- ┣ 2:拒絶
- ┣ 3:衝突
- ┣ 4:告白2
- ┣ 5:その先へ
- ┗ Epilogue~ある3人の目撃談~
総もくじ
優しい嘘(直×大)

- ┣ 優しい嘘(直×大)について
- ┣ Prologue
- ┣ 1:忠告
- ┣ 2:きっかけ
- ┣ 3:優しい嘘
- ┣ 4:それぞれの言い分
- ┣ 5:熱帯夜
- ┣ 6:陸の言い分
- ┗ Epilogue~はじまりの日~
もくじ
※ごあいさつと注意事項

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※設定・登場人物

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