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「Engagement(直×大)」
中編:夏休みの課題

Engagement 中編-4

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8月20日。土曜日。
都内某所、某河川敷。花火大会会場。

「いやぁ、完売直前だったわ」

団体席に向かって歩きながら、幸田が得意げにそう笑ってチケットをちらつかせた。

「あ~幸樹、俺カキ氷食いたいっ」

幸樹の隣を歩いていた大河が、シャツを引っ張りながら屋台を指差す。

「だそうです、誠さん」
「俺かよ」
「俺、抹茶で。練乳抜きでいい」
「お前も食うのかよ」

誠に振ったついでに自分までタカってきた幸樹に、誠は苦笑いをしながら財布を出して。そうすれば他の人間も、「俺も~」と言い出した。

「はいはい」

自分がいちばん年上とはいえ大して変わらないだろうと思いつつも、カキ氷ぐらいでみみっちいことは言いたくない。だから誠は一切の反論を諦め、屋台に並んだ。

拓郎と幸田が急遽開催した、POLYGONの花火鑑賞会。
主役の大河、そして直希、幸田、拓郎に加え、誠、幸樹、千田の総勢7人。実、今野、鹿野については仕事の都合が合わず不参加となったものの、急であるにも関わらず、それぞれそれなりに人気者で忙しいにもかかわらず、意外にも2/3以上のメンバーが集まった。
それを、意外とヒマ人グループと呼ぶべきかグループ愛ゆえの奇跡と呼ぶべきかは分からないが。彼らは間違いなく、現在人気上昇中の若手芸能人ばかりだということは、彼らの名誉のためにも言っておこう。

「大河、今日は主役だから何でも買ってやるよ」

誠からカキ氷を買ってもらったくせにそんなことを言いながら、幸田が肩を組んできた。

「あ、あの光るヨーヨー要るか?」
「要らんわ、アホ」
「なら、あのライトセーバーみたいなやつは?」
「俺をいくつやと思ってるんや」

そんなやりとりを交わしていれば、同じノリの直希も楽しげに入ってきて。

「あ~大河、わたあめあるよ。ポ●モンの袋に入れてもらう?」
「要らんっ。俺それよう知らんしっ」

いちいち子供扱いをされて丁寧にツッコミを入れれば、誠や幸樹も参加してくるのだが。
それをまたひとつひとつ返していた大河が、あ、と目を輝かせた。

「あれ欲しい」

幸田のシャツを掴んで指をさしたのは、キャラクターお面の屋台。
そこに居る全員がキョトンとして、その後には、

―――どれよりもガキくせぇじゃねーか

と同時に思ったのだが。

「……直希、買ってやれ」
「……うっす」

お子チャマモードの大河にツッコミを入れていたらキリがないので、通り道のその屋台へとゾロゾロと歩いていった。

完全な悪ノリで4つお面を買い(直希の自腹)、どこのキャラクターだという不可思議なお面をつけられた大河は、同じように様々なキャラクターのお面を与えられた幸樹、千田、直希と4人並べられて幸田に写真を撮られて。そんな風に盛り上がっていたおかげで一般客にいろいろバレたので、慌てて団体席へと向かった。ひょっとこのお面をつけた直希の姿に戸惑うファンたちの声には、聞こえないフリをして。
それからは団体では動かず、買物係となった幸樹・千田・直希の年下トリオが全員分の焼きそばやたこ焼きなど食料を調達してきてくれているうちに、花火大会はスタートした。

都内でも比較的規模の大きい部類に入るこの花火大会は、毎年大勢の客でもみくちゃになる。河川敷で打ち上げることで、水面への反射なども美しい。しかしここ最近知名度が上がってきたPOLYGONメンバーは、たとえ恋人がいたとしてもあまりこんなところには来ない。顔がバレるリスクの高い人ごみにわざわざ来てまで観るほどのものじゃない、と思っていたのだ。
だが実際にこうして来てみると、やっぱり感動してしまうもので。

「花火もいいもんだな」

イベント事と人ごみに一切興味の無い幸樹ですら、思わずそんなことを呟いてしまった。他の面々も、頷きながらジッと見入っている。
もちろんそれは、大河と直希も同じだった。

「うわぁ、すごいなぁ~~」

目を輝かせてポカンと見上げる大河は、子供のように無邪気な笑顔を見せている。

「すごいね」

直希も、それしか言葉が出ない。
子供はその豪華さに喜ぶだけだが、大人になってから見る花火というのは、また違う気がする。これが、和の情緒というやつだろうか、と。海外にも花火はあるが、日本はどこか情緒があるように思えるのだ。

やがて花火は、メインの大物の打ち上げへと差し掛かって。
豪快な大玉の連発に、会場は一気に盛り上がりを見せ、POLYGON御一行席も幸田や拓郎あたりを中心に大盛り上がりだ。
しかし大河は、相変わらず空を見上げているだけ。

「大河、すっかり心奪われちゃってるね」

その姿に気付いた幸樹が、隣の誠をつついて笑う。
すると誠も視線を移して。

「そんでその隣の奴は、そんな大河に心奪われてるっぽいな」

的確な感想を述べ、幸樹と笑い合った。
もちろんその"隣の奴"とは、直希のことだ。
大河と一緒に空を見上げながらも、チラチラと彼の横顔を伺っている。
そして幸樹と誠の視線に気付いた他の仲間たちも、直希と大河に目を遣った。
そんなことも気付かずに、直希は大河の横顔をそのままジッと見つめて、

『大河、今度は本物見に行こうね』

花火大会をスマホの画面から見たあの日、眠る大河に"秘密の約束"をしたことをふと思い出していた。
この約束もしっかりと果たされたことを、しみじみとかみ締める。
大河と、約束通りこうして本物の花火を一緒に見上げている。それだけなのに、何とも言えない幸せを感じて。花火以上に目をキラキラさせて見上げている大河の綺麗な横顔が、たまらなく愛おしくなって。
無意識に、その肩に手を回していた。

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