FC2ブログ

「Engagement(直×大)」
中編:夏休みの課題

Engagement 中編-6

 ←Engagement 中編-5 →『Engagement』前編&中編アップ完了
でももちろん、シャワーに入っている間は何も考えられるわけはなく。
シャワーから上がり、タオルを腰に巻いたままドライヤーをかけながら、帰宅時の直希を思い出す。

『直希、先入ってええで。お前、汗だくやろ』
『……え?…あ、ああ、うん。わかった』

自分の提案に、彼が一瞬だけ迷った顔をした理由も、一度気付いてしまえばすぐ分かる。
普段ならこういうとき一緒に入るのが当たり前なのに、彼は迷った後に口をつぐんで。そして自分に合わせてああ言ってくれたのは、やっぱり我慢をしてくれているが故だろう。

―――ど、どうすれば…

いよいよ追い詰められて、でも焦れば焦るほど名案など浮かばず、大河はがっくりと項垂れる。
そんな風にグルグルしていれば、

「……ん??」

リビングで冷たい水を飲んで一息ついていた直希は、急に物音のしなくなった洗面所に気が付いた。
さっきまで風呂場の扉の開閉音やドライヤーの音が聞こえていたのに、シンと静まり返っている。着替えているにしても静かではないかと。

「大河~、大丈夫?」

心配になってそんな声をかけながら、直希は洗面所へと向かった。
しかし聞こえていないのか、特に返事は無く。

「大河、開けるよ?」

直希は軽くノックをしてから、返事がする前にドアを開けた。
するとそこには、タオルをまだ腰に巻いたままの大河が突っ立っていて。

「あっ」

ドアが開いたことでようやく気付いたのか、ビクンと肩を揺らしてこちらを見てくる。

「どうしたの?大丈夫?」

呆然と見てくる大河が心配で、直希はゆっくりと近づいた。
しかし大河は顔色も良いし、特に異常はなさそうで。

「あ、大丈夫。ちょっとボーっとしてただけや」

そう答えた言葉にも笑顔にも、嘘はなさそうだから、

「そっか」

直希も安心して、笑顔が出た。
そんな直希に、大河は大河で、余計に罪悪感が募る。

「風邪ぶり返すから、早く服着なよ?」

この言葉と共に視線をスッと逸らされた理由が分かるから、余計に。
だから、思わず……
去っていこうとする彼に手を伸ばして―――

「大河?」

立ち止まって振り返った直希が、目を丸くした。

「え?……あっ」

直希の視線で、大河は自分が彼のシャツを掴んでいたことに気付いた。
しかし離すにも離せず、シャツを掴んだまま目を泳がせれば、直希も戸惑うようにこちらを見ているのが分かる。

「あの……」

遠慮がちに視線を上げて直希を見れば、まっすぐ視線を返されて。思わず、逸らしてしまう。そんなことを繰り返しながらも、手は離せなくて……

「えっと、その…」

ここで何か言うべきか、それとも……
しかし。
今自分がしようとしていることを改めて考えてしまえば、大河はひたすら恥ずかしくなって、いたたまれなくなって―――

「ご、ごめんっ」

慌てて、手を離す。

「あはっ、何してるんやろ」

取り繕うように笑いながら視線も逸らして、強引に誤魔化した。

「す、すぐ着替えて行く……」

直希に背を向けてそう言いながら、下着を掴もうとしたが。
その手は直希に掬われ、

「え?」

振り返った瞬間、大河は唇を塞がれていた。
そしてすぐに、舌がするりと入り込んでくる。

「ん、んぅぅ~…っ」

久しぶりに口内を動き回るそれに、あまりの突然の事態に、自分が招いた種であるなんていう自覚など一切ない大河は、ただただされるがままで。
両頬を固定されて、呼吸を奪われるように吸い付かれて……

「……ん…なお…」

気が付けば大河も、直希の背中に腕を回し、その舌に応えるように彼を受け入れていた。

ひとしきり貪られて、お互いに息が切れた頃、ようやく唇が解放される。
それでも顔は直希の手に固定されたままだし、大河も彼から視線が離せない。

「ヤバイって大河」

至近距離で、直希が大河を見つめてきて。

「今のはキた」

目を細めて、困ったように笑ってくる。

「俺、自惚れそう」

そう言って今度はぎゅうぎゅう抱きしめながら、首筋や肩に唇を落としてくる。

「大河から誘われたって、勘違いしそうなんですけど」

好きな相手にシャツを掴んで引き止められてあんな目で見上げられたら、普通の男なら舞い上がる。だが無自覚の代表格である大河だけに勘違いパターンは大いにありそうで、直希は半信半疑の状態なのだ。
しかし、大河が直希の的確な"察し"に、音が出るほどの勢いで赤くなって。それを隠すように直希の肩口に顔を埋めれば、

「俺だいぶ前から限界ギリギリだから、そういうのされると暴走するけど」

勘違いパターンではなく自惚れパターンで正解らしき大河の反応に、直希はたまらないとでもいうようにまた抱きしめる。
一方の大河も、自分と同じくらい鼓動が激しい直希の心臓に、自分とキスして触れ合っただけでやっぱり熱くなってくれた直希の中心に、

「…勘違いじゃない」

何だかものすごくホッとして、素直にそう伝えた。

「我慢、もうしなくていいってこと?」

直希が、嬉しそうに笑って真っ直ぐ見つめてくる。
熱くて愛情に満ちたその視線に導かれるように、

「もう、せんといてや」

やっぱり大河が素直に返せば、直希がまたもや目を丸くして。
次の瞬間には、噛み付くように唇を合わせてきた。


後編へ進む

関連記事
スポンサーサイト
↓ランキングに参加しています。
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL恋愛小説へ

総もくじ 3kaku_s_L.png 短編作品
総もくじ 3kaku_s_L.png ★Hide-and-seek(直×大)【連載中】
総もくじ 3kaku_s_L.png 直感(春×歩)
総もくじ 3kaku_s_L.png Assist(春&歩)
総もくじ 3kaku_s_L.png 一時停止(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png Engagement(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png アゲイン(陸×千)
総もくじ 3kaku_s_L.png Beyond Silence(W大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 恋愛プロセス(拓×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 満月の夜(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 痴話喧嘩(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 白い恋人(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png reward(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 君と見る空(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 極夜(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png シンクロニシティ(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png Stranger(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png その先へ(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 優しい嘘(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 短編作品
総もくじ  3kaku_s_L.png ★Hide-and-seek(直×大)【連載中】
総もくじ  3kaku_s_L.png 直感(春×歩)
総もくじ  3kaku_s_L.png Assist(春&歩)
総もくじ  3kaku_s_L.png 一時停止(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png Engagement(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png アゲイン(陸×千)
総もくじ  3kaku_s_L.png Beyond Silence(W大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 恋愛プロセス(拓×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 満月の夜(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 痴話喧嘩(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 白い恋人(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png reward(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 君と見る空(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 極夜(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png シンクロニシティ(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png Stranger(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png その先へ(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 優しい嘘(直×大)
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  • 【Engagement 中編-5】へ
  • 【『Engagement』前編&中編アップ完了】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【Engagement 中編-5】へ
  • 【『Engagement』前編&中編アップ完了】へ