FC2ブログ

「一時停止(直×大)」
前編:一時停止

一時停止 前編-2

 ←一時停止 前編-1 →一時停止 前編-3
『あ~おはよう直希。悪いな、急に』
「ホントだよ。今まででいっちばんのバッドタイミングだからな、天野さん」

チラチラとこちらを伺ってくる大河の頭を撫でながら、電話の相手―――天野マネージャーに文句をつける。

『何、朝っぱらからゲームでもしてたのか?それより、今大丈夫?』
「大丈夫じゃないなら切っていい?」
『あ~、待て待て。大丈夫じゃなくても聞いて』
「も~、何だよ。どうしたの」

だいぶ困ったような声を出している天野に、仕方なく直希も態度を軟化させて話を促す。そもそも、さっさと話を終わらせて大河とのお楽しみに戻りたい。
そんな直希の思惑に反して、天野が告げてきたのは――――

『ごめん直希、今日、現場入りの時間が変わってたらしい』
「え?」
『今すぐ行かないと間に合わない』

と、いうもので。

「はぁ!?何それ」

思わず上半身を起こした直希は、若干のキレ口調で声を上げた。
直希の剣幕に大河も慌てて飛び起きて、宥めるように腕を引いてくる。

『昨日急に変わったらしくて、もちろん先方はウチにもメール送ってくれてたみたいなんだけどさ、アドレス間違ったらしくて返ってきてんの気付かなかったらしいんだよ』
「つうかさ、メールだけ?電話はくれなかったの?」
『そうなんだよ。新人の子に連絡任せちゃってたとかなんとか言ってきて、埒が明かなくて。結局、今朝になってメールの誤送信に気付いて慌てて連絡してきたんだよ』
「んだよそれ」
『ホントだよな。まあ"できるだけ早く行きます"とは言っておいたから、開始時間に間に合わせる必要はないけど。でも、向こうが平謝りでさぁ。社運かかってる企画だってのは知ってるし、何とかしてやりたいって気持ちもあるだろ?付き合いの長い会社だし』

開始時間が遅れれば、大物タレントたちの機嫌を損ねる可能性もある。時間が変わったというから早く来たというのに、と怒るのは当然のこと。それで現場の空気が悪くなろうものなら、問題はさらに大きくなってしまう。
幸い直希は前に何か仕事入ってるわけではないから、できるだけ間に合わせたい。それが、天野の考えだったのだ。
そしてそれは、直希だって分からないでもない。自分たちが売れない頃から使ってくれた制作会社だし、時間に間に合う可能性があるのに敢えて遅れるのは違うと思う。だから、

「はあ、わかったよ。で、何時までに行けばいいの?」

心配そうに自分を見てくる大河の肩を抱き寄せて、声のトーンも戻して直希は天野に尋ねた。

『8時入りなんだ。俺近道知ってるから、俺が連れていく。これから迎えに行くから準備だけしといて』
「迎え?待って天野さん、俺、今大河のとこに…」
『何だよ、そっち居んのか』

だからそんなに機嫌損ねてたのかと笑った天野は、

『まあでも、そっちなら15分で着くわ』

逆に好都合だと、明るい声を出すが。

「15分?!シャワーしか入れないじゃん!」
『??シャワー入れりゃ十分だろ』

何ともありがたくない状況に喚く直希を、いったい何を言っているのだと疑問だらけの声で返した天野は、本当に時間が無くなるからとそこで電話を切ってしまった。

「もぉぉ~~~」

通話の切れたスマホを片手に、直希がガックリと項垂れる。
そんな直希を、大河が伺うように覗き込んだ。

「直希?どうした?」

小首を傾げながら訊ねると、直希が顔を向けてくる。

「ごめん大河~。俺、15分で出ないとダメんなった」

そしてガバリと抱きしめてきた。

「15分?なら、早く準備せんと」
「う~~」
「ほら、汗かいてるで。早く風呂入ってこい」

直希を引きはがして、大河がそう諭す。すると直希は名残惜しそうに見つめつつも、確かに時間が無いのでそそくさとシャワーへと向かってしまった。
残された大河はそれを見送ってから、パタリとベッドに沈み込む。タオルケットにくるまって、今さっきまで直希にいじり倒された体のクールダウンを試みた。

―――朝から訪問×××(←朝なので自主規制)なんかしよるからじゃ////

次来たら玄関先で"チェンジ"って言ってやる……と、意味不明な悪態を吐きながら。


さっとシャワーを浴びて戻った直希は、ベッドでミノムシのように丸くなっている大河の姿に、名残惜しさは再燃した。
寸前でお預けだなんて、やっぱり勿体なさすぎる。あそこまで蕩けきった大河を、放り出して行くなんて―――

「大河?大丈夫?」

微動だにしない大河に近づき、肩に手を置いて声をかけると、ようやく大河が直希の気配に気づいて顔を向けてきた。

「そろそろ…天野さん、来るんか?」
「うん。たぶんね」

ちょっと心細そうにこちらを見た大河がやっぱり愛しくて、直希は優しく頭を撫でてやった。
確かに、あんなに煽られた結果一人にされるなんて、虚しいだろうと。

「ごめんな大河。車さ、このまま置いていくから、大河俺の車でスタジオに行ってて」

この続きは自分のマンションで、という意味を込めて直希がそう誘うと、その言葉の意味をどこまで理解したかは分からないが大河がコクンと頷いた。
先ほどの余韻がまだそこかしこに残っている大河は、中途半端な状態で止められてしまったせいか、解放できていない熱に支配されているような妙な雰囲気が漂っている。こんな彼を一人にさせてしまうなんて、と考えれば―――

「嫌だぁぁ~(泣)」

往生際の悪い直希は、駄々をこねるように、タオルケットごと大河を抱きしめて出勤拒否をした。
しかしそこへ、

ピンポーン♪

エンドレスな流れを断ち切るかのように、お迎えが到着した。
それでも大河に抱き着いたままの直希を、大河が必死にもがきながら引きはがす。

「ほら直希、天野さん来たで」
「う゛~。大河怒ってる?」
「怒ってへんよ。ほら行って来い。また夕方、スタジオでな?」
「……うん」

大河に宥められてようやく体を離した直希は、もう一度軽くキスをすると、嫌々感まる出しの顔でバッグを手にしてドアへと向かった。

「行ってきます…」
「ほら直希、笑顔笑顔。行ってらっしゃい」

不貞腐れ顔の直希に大河は思わず笑ってしまいながら、手を振って彼を見送った。



「ホンマに、アイツはもう…」

直希が出て行って急に静かになった部屋で、体を起こしながら大河は呟く。
仕事となれば仕方がないと、冷静に大人の対応をしてやっていた大河だが、正直自分だって相当キツイ状態だ。
体は落ち着いてきたとはいえ、直希の指の感覚がリアルに残っているナカの熱が引かないから、疼くような感覚が全身を支配している。

『大河、気持ちいい?』

耳元には、直希の声も吐息もリアルに残っている。
この状態で取り残されたところで、どうしたらいいというのだろう。
吐き出せていない熱は、本来なら一人で適当に出してしまったっていいかもしれないが。完全に直希を受け入れる体勢だった体では、そんなことをしたら逆に虚しくなりそうだ。

「うあぁぁ~~~直希のアホ!!」

再びベッドにダイブして、大河はタオルケットにうずくまる。
しかしここで嘆き続けているわけではないのが大河で。

―――前向きに前向きに…

この状況を何か良い方向に持っていけないかと、思考を変えてみた。

―――ピンチはチャンス…ピンチはチャンス…

「あ、そ、そうや。こういうときの方が曲作りが進むか、も……」

頭がモヤモヤしている方が執筆が進むと、かつて有名な文豪が言っていたことを思い出し、パッと顔を上げたと同時に。

Prrrrr♪

今度は大河のスマホが着信を知らせた。
ベッドサイドでピカピカと光っているそれを手にとった大河は、画面に表示された名前を確認して電話に出る。

「もしもし高ちゃん?おはよ。どしたん?」

関連記事
スポンサーサイト
↓ランキングに参加しています。
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL恋愛小説へ

総もくじ 3kaku_s_L.png 短編作品
総もくじ 3kaku_s_L.png Hide-and-seek(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 直感(春×歩)
総もくじ 3kaku_s_L.png Assist(春&歩)
総もくじ 3kaku_s_L.png 一時停止(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png Engagement(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png アゲイン(陸×千)
総もくじ 3kaku_s_L.png Beyond Silence(W大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 恋愛プロセス(拓×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 満月の夜(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 痴話喧嘩(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 白い恋人(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png reward(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 君と見る空(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 極夜(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png シンクロニシティ(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png Stranger(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png その先へ(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 優しい嘘(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 短編作品
総もくじ  3kaku_s_L.png Hide-and-seek(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 直感(春×歩)
総もくじ  3kaku_s_L.png Assist(春&歩)
総もくじ  3kaku_s_L.png 一時停止(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png Engagement(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png アゲイン(陸×千)
総もくじ  3kaku_s_L.png Beyond Silence(W大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 恋愛プロセス(拓×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 満月の夜(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 痴話喧嘩(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 白い恋人(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png reward(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 君と見る空(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 極夜(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png シンクロニシティ(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png Stranger(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png その先へ(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 優しい嘘(直×大)
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  • 【一時停止 前編-1】へ
  • 【一時停止 前編-3】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【一時停止 前編-1】へ
  • 【一時停止 前編-3】へ