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「一時停止(直×大)」
中編:停止中

一時停止 中編-2

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「ごめん天野さん、助かった」

立ち去りながら、直希が小声で礼を告げる。彼女に声を掛けられてからずっと、番組関係者と話をしていた天野がチラチラとこちらを気にしてくれていたのを、直希はしっかり気づいていたのだ。
そして天野も、笑顔の裏で困り果てた表情を見せている直希を救い出すタイミングを、ずっと伺い続けていた。

「あの人な、ウチの事務所タレントにばっか声かけてるって、俺らの間で最近警戒してたとこなんだよ」
「そうなの?」
「ああ。自分の所属事務所よりは地位が低くて、でもクオリティの高い男が揃ってる事務所ってのが、要はウチなわけ。たとえスキャンダルを起こしても、ウチは何も言えないってわかってるから、数打ちゃ当たるって感じで」
「それで陸さんに始まり、実とか俺に声かけてるってわけか」
「他にもタクも幸樹も、共演した奴ら全員餌食だよ」

あんまり酷いようならアイプロは彼女との共演をNGにすると、そんな話まで出ていたと天野が小声で打ち明ける。

「でもまあ、直希の言った理由は良いよね。みんな同じ理由を言わせて断らせれば、あちらさんも諦めるかも」

あれを社内で共有しておくよと天野が笑えば、直希も大きく頷いた。
事務所全体で警戒対象としておけば、大河も彼女には隙を見せないよう気を付けるだろうと。自分への好意に疎い大河が、魔女の手にかかる前に。

―――美人なのに勿体ねぇよなぁ…

離れた場所から彼女を一瞥しながら、直希はつくづくとそう思う。あれで彼女が上品だったら、いくらでも男なんて紹介してやるのに、と。
いっそのこと、大河に色目を使う奴らでも数人放り込んでやるかと、相変わらず腹黒いことを考えていれば、

ブブブブ…

ポケットに入れていたスマホが震えて。
表示された名前を見た瞬間、

―――たとえばコイツとか

直希は更に"悪い顔"になった。
しかし彼だって大事な友人だし、特に何か害を受けているわけではない。だからまあ勘弁してやるか、とすぐに表の顔に戻しながら、メッセージを開く。

『スタジオ遊びに来てみたら大河さんと実さんしか居らんけど、直希は何時頃来んの?』

「は?遊びに?」
「直希?どした?」

急に声を出した直希に天野が顔を向けた。
そんな天野に「何でもない」と首を横に振りながらも、直希は想定外のその人物に『17時頃』とだけ返してみる。
すると相手は暇なのか、すぐに返信がきて。

『17時かぁ、ギリで入れ違いかもな。差し入れにケーキ買ってきたから、お前とタクさんの分は冷蔵庫入れといてもらっとくよ』

手ぶらでは絶対に来ない彼らしさが滲み出る、そんなメッセージ内容。
だから直希も、素直に嬉しいと思った。こんな友人に、いくら大河に関しては多少警戒しているとはいえ、あんな下品な女を宛がおうと企むなんて申し訳ない、と。悪いことをしたなと思いながら、彼に『ありがとう』と返そうとしたのだが、

『それより大河さん、今日は自棄にセクシーやで』

間髪入れずに入ったそのメッセージに、直希はすぐに手が止まった。

『俺のイン●タ必見(笑)』

そう促されているがままに、彼の投稿を見てみれば。
最新の投稿としてあがっていたのは、スタジオを映した十数秒の動画。
それを観た瞬間、

「……あの野郎…」

直希はまた、悪い顔になった。
もちろんこれを、彼は何の悪気もなく投稿したのだろうことは、彼の性格的に分かってはいる。単純に、スタジオに遊びに来て楽しいあまりに動画を載せたくなったのだろうことは、映像の雰囲気からもわかる。
しかし、この大河をアップで映すのが気に食わない。様子が少し違うと気づきながら、面白いからみんなに見せてしまおうとする、その天然さが腹立たしい。確信犯じゃないから、怒る方が大人げなく見られてしまうから、余計に。

―――魔女の餌食にしてやるぞバカ!

とりあえず彼の投稿には何もリアクションを入れてやらず、メッセージには『バーカ』とだけ返した直希は、すがるように天野の腕を掴んだ。

「天野さんっ、収録、すぐ終わりにならない?」
「は?無理に決まってるだろ」





「なぁなぁ、ミキもう帰っちゃった?」

スタジオのドアを開けるなり室内を見回した拓郎は、その場にいる目的の人物に目を止めて笑顔を見せた。

「あ。よかったよかった。まだ居てくれてた~」

久しぶりだなぁ~と、半年ぶりになる冴島に近づき、手荒くグリグリと頭を撫でる。そんな拓郎に、来訪者の冴島も嬉しそうに相変わらずのほんわかした笑顔を見せた。
スタジオに遊びに来ていたのは、冴島だった。ちょうど近くで撮影をしていて、急な仕事変更で夜まで時間が空いてしまったからと、ケーキを手に陣中見舞いに来てくれたのだ。

「お前の動画見たぞ。エロエロ大河クンはどこ行った?」

冴島の肩を抱きながら拓郎が室内を見回せば、

「誰がや」

パコン、と、真後ろから頭をはたかれて。

「俺のどこがエロエロじゃアホ。ミキがせっかく楽しい光景をアップしてくれたんに」

純粋に楽しい光景を投稿してくれただけと信じて疑わない大河が、それを邪な目で見る拓郎に睨みを利かせる。しかしもちろん、拓郎の感想はほかの人間も同様だし、投稿した本人の冴島ですら同じ気持ちなので、

「何を楽しいと思うかは、人それぞれなんやで、大河」

実がさりげなく助け舟を出し、周りと視線を交わして笑った。
大河は実の言葉の意味が理解できずに眉を寄せて首を傾げたが、それすら今日の大河は妙に雰囲気がある。
やれやれと実は頭を掻くと、

「タク、ミキがケーキ買ってきてくれとるで。お前の好きなミルクレープ、残してあるよ」

大河を隠すように一歩前に出て、自分も冴島の肩を抱きながら拓郎に笑顔を見せる。

「え~マジ?ちょうど甘いモン食いたかったんだよね~」

顔を輝かせた拓郎が冴島の腕を引いて、「どこどこ?」とミルクレープにつられてミニ冷蔵庫へと向かっていく。
それを笑顔でほのぼのと見守る大河の腕を、実が引いた。

「大河、自販機付き合えや」

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