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「一時停止(直×大)」
後編:再生

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【後編:再生】

天野に送ってもらった直希がスタジオに到着すると、目的の大河が居なくてキョロキョロと辺りを見回した。
拓郎と実はその場に居るのだが、大河が見当たらない。冴島に関してはもう帰ったのか、既に居ないようだ。

「ねえ、大河は?」

スタッフに挨拶を交わしながら中に入った直希は、拓郎と実の傍に近づきながらそう訊ねた。みんながのんびり雑談を交わしているということは今は休憩中なのだろうから、大河は飲み物でも買いに行ったのだろうか、なんて思っていると。

「悪いな、直希」

不意に実が、謝ってくる。

「ちょっと目ぇ離した隙に…」
「何が?」
「いや、大丈夫やろうけど」
「だから何が?」

実の言っている意味が分からず、しかし何かしら不穏な空気を感じて直希が追及すると、

「大河なら、ミキを見送りに行ったけど?」

隣の拓郎が、冴島の危険性を疑いもしないのか、笑顔であっさりと告げてきた。

「は?」
「あれ?直希、すれ違わなかった?」
「見てないけど。え、何?見送り??」
「うん。ミキの奴さ、せっかくだからってギリギリまで直希待っててくれたけど、さすがに仕事に間に合わなくなるからって帰ることになって。ほんとさ、10分も前じゃないぐらいに。んで、ちょうど休憩入ってたから、大河が見送りに…」
「何で一人だけで行かせんの?」
「知るかよ。俺と実がちょっと打ち合わせしてる間に居なくなってたんだってば」

直希の迫力に戸惑いながら、拓郎が詳しく説明してくれる。実がその説明に軽く頷いて同意しながら、また「悪かったな」と苦笑いをした。

「ああ、お前もしかして、裏口から入ったんか?あいつらは普通に正面口から出たと思うで。そのうち戻ってくるやろ。ミキやって、仕事あるんやし」

特に心配はないはずだと、そもそも相手は隙を逃してばかりの冴島なのだから大丈夫だと、実は直希を宥めるが、

「ちょっと行ってくる」

念には念をだ、と直希は部屋を後にした。





実の予想通り、大河と冴島は正面口に来ていた。
マネージャーを待つ冴島に大河も付き合い、そのまま2人で立ち話をしていたのだ。

「もうすぐ来るから、大河さんも戻ってええよ?」
「ああ、大丈夫。直希来るまで中断やし。アイツが来れば実から呼び出し来るやろ」

せっかく久しぶりに会った仲良しの後輩だけに、大河もギリギリまで話していたくてそう答えれば、冴島が彼特有の癒し系笑顔で笑った。それだけで大河もまた、彼と離れがたい気持ちになってくる。

「なぁミキ、またメシ行こうな?お前、ぜんぜん誘ってくれる気配ないし」

共演したドラマが6月にクランクアップした途端に連絡が途切れがちになってしまった冴島に、淋しさを訴えるように大河が口を尖らせれば、

「気配って何ですか。誘ってるでしょ、俺。タイミングが合わなかっただけやんか」

時には仕事、時には風邪引いただので大河とはいつもすれ違ってしまうことを、冴島が指摘しながら笑う。言われてみれば確かにそうだと、大河も笑った。だいたい、連絡が途切れがちといったって3か月程度だ。
すると冴島は、いちいち楽しそうな大河に思わず目を細めて、ジッと見つめた。

「ホンマ、残念やなぁ」

分かってはいるけれど…と呟けば、当然意味が分かるわけもない大河が、首を傾げて「ん?」と真っ直ぐに視線を返してくる。
今日の大河には、冴島は内心ドキドキさせられっぱなしだった。しかし、彼は直希という自分にとっても大事な友人の恋人だからと、自分のときめきは何とか別の方向へと向かわせるようにしてやり過ごしてきたのだが。
こうして2人きりになれば、自分が引き下がるのがやっぱり勿体ない気がしてしまう。

「まぁでも、お似合いやしな」

幸せそうな2人の姿は、SNSでもテレビでもラジオでも目の当たりにしているし、何よりあの直希をあそこまで変えた男が大河であることを知っている以上、直希の想いの強さは自分たちの淡い気持ちなんて足元にも及ばないと冴島は思う。
だから応援してやるべきなのだろうと、目の前の可愛くて男前な先輩にまた微笑みかけたところで―――

「あ、」

足音に気付いた大河が顔を向けて、声を漏らす。冴島も顔を向ければ、

「ちょっと、いつまで帰ってこないつもりだよ」

今まさに話題の男(冴島の中でだけだが)、直希が不機嫌そうな表情で足早に近づいてきた。
とはいえ、直希だって最初から不機嫌な顔をしていたわけではなくて。ロビーに出て、見つめ合う2人の姿が目に入った瞬間に、自然とそうなってしまったのだ。

「ったく、油断も隙もない…」

ボソリと呟きながら、大河の腕を軽く引いた直希だが、

「あ、直希~、ギリギリ間に合ったやんかぁ」

冴島が待っていてくれたと知って直希が追いかけてきたのだと受け止めたらしき大河が、パッと顔を輝かせたことで、

「え?あ、うん…」

思わず、勢いが引いて。
更には、

「直希~、良かった会えたわぁ。久しぶりやなぁ」

冴島まで、持ち前の天然を発揮して純粋に喜ぶものだから、

「そ、そうだな。仕事でも、ぜんぜん一緒にならなかったもんな?」

またもや直希は、自分が悪い奴に思えて、申し訳なくなってしまう。

「ケーキな、たぶんガトーショコラ残ってるで。好きなんやろ?」

大河さんから聞いたで、なんて。
そんな追い込みまでされれば、罪悪感でいたたまれない。
だから直希も、すぐに表情を笑顔に変えると、

「お、おお、サンキュ。今度ラジオとかにも遊びに来いよ」

冴島の肩に手をポンと置いて、素直な気持ちで友人に言葉を返した。

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