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「Assist(春&歩)」
春海の言い分

Assist 春海の言い分-2

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キッチンでコーヒーを入れてる間に、ふと、リビングが静かになったことに気付いた。

「……ん?」

足元にふんわりとした感触がして、下を見るとボブ。
さっきまで栗ちゃんに遊んでもらってたはずなのに、と顔を向けたら……

「あらら」

思わずそう呟いて、そして笑ってしまった。
ソファにもたれた栗ちゃんは、いつの間にか眠ってしまっていた。


俺はコーヒーを2つ持って、リビングへ戻る。
栗ちゃんの分はテーブルに置いて、俺は自分のカップを手に、隣に座った。
よく眠っている栗ちゃんは、無防備な寝顔を晒していて。

「疲れてんねやないか」

だったら家で寝ればええのに。
わざわざ俺んとこ来るって……

「期待するで?」

俺にしか見せない顔、そんなにたくさん出されたら……
なんて苦笑いしながら、前髪をよけてやれば、

「へっくしょいっ」

不意に栗ちゃんがくしゃみをして。

「カトちゃんかよ」

何だかホンマに小動物みたいで、またもや笑みが漏れた。……かわいいなぁ、おい。
こんな時期に風邪引かれたら大変やし、俺はカップを置いて立ち上がり、寝室に毛布を取りに行った。

毛布を持って戻り、そっとかけてやろうとしたが。
大分斜めに傾いている体勢に若干無理がありそうやと気付き、このままじゃ絶対に明日体痛くなるなと思って、ソファに横にしてやろうと肩に手をかけたら、

「……んっ」

小さい声が漏れて。
その小柄な体が、ソファに沈む。
瞬間、ボブが俺の足元を横切って―――

「おわっ」

くすぐったさに足を動かした瞬間、俺はバランスを崩して、栗ちゃんの上に覆いかぶさるかたちとなってしまった。
突然目の前に現れた、栗ちゃんのドアップ。
早くどかなきゃいけないのに、その寝顔に、体が動かなくなって……

―――ああ、好きやな…

やっぱり、そう思う。
程よく焼けた浅黒い肌も、大きめの口も、長い睫毛も、スッと通った鼻も。触れたいって、純粋にそう思う。
引き寄せられるように、その頬に触れれば……もう止められなかった。

―――起きるなよ?

そう願って、徐々に顔を近づけていく。
唇が、触れるか触れないかの瞬間。

「……っ?」

俺のパーカーの紐が、栗ちゃんの首筋に当たって。
パチッと、音がしそうなほどの勢いで栗ちゃんが目を覚ました。

「…………」
「…………」

一瞬、2人で見詰め合って。

「ちょちょちょ……ちょっと!!」

俺を思い切り押した栗ちゃんが、勢いよく体を離して、ソファの端っこに逃げてしまった。

「な、何してんだよ!?」

ソファの上で、小さな体をさらに縮こませて、栗ちゃんが目を丸くしている。

……ヤバい。
これはマズイ状況や。

内心かなり焦ったが、俺は、すぐにいつもの表情を作った。

「何って、ちゅう?」
「は、はあ?!」
「栗ちゃんよう寝てたから、ちゅうしちゃおっかなって…」
「ちゅ…ちゅうって…可愛く言ったって、やってること全然可愛くないっての!」

俺の思惑通り、この行動をいつもの意味不明なものと捉えてくれたのか、"信じられない"という顔で見つめてくる。
俺はこの流れを、チャンスと捉えた。

「な、しよっか。キス」

努めてトーンを変えず、ニッコリと提案。
そう。
キスのひとつぐらい、してもらったって罰は当たらんはずや。
勝ち目の少ない恋なんやから。

「別にええやんか、減るもんやないんやし。したことぐらいあるやろ?」
「そういう問題じゃ…」
「俺最近してないんやもん、キス。栗ちゃん、最後いつした?」
「し、知らない…」
「あ~~、最近したんや~~」
「し、してねぇしっ!!」

結局正直に言っちゃうところがまた、かわいい。
こんなかわいい奴に懐かれて、無防備に寝られて、でも手に入らないなんて地獄やで。
それを耐えようっていうんやから、キスぐらいさぁ。

「なぁ、兄貴孝行やと思ってしてくれやぁ」

ソファに乗り上げて、栗ちゃんに迫る。
もうソファには逃げ場なんてないのに、めいっぱい後ろに下がろうとしてる栗ちゃんは、

「お、俺じゃなくて他の人でもいいでしょ…」

拒否しつつも、何故か逃げようとはしない。立ち上がって逃げればそれまでなのに、ただジッと、俺を凝視するだけ。
あっという間に、俺は栗ちゃんの両脇に手をつく距離まで近づいた。

「他の人って、例えば?」
「えっと…それは……」
「今ここに居るのは俺と栗ちゃんだけやんか」
「ボ、ボブ…」
「いつもしてるもん」

そう言って、頬に触れる。
やっぱり栗ちゃんは、逃げない。俺の手を振り払うこともない。

「あれ、ええの?」
「…………」
「しちゃうよ?このまま」
「……ダメだよ」

それなのに、一切動く気配はなく。
俺を、ただただ見つめているから。

「却下」

俺は顔を近づけていく。

「…目、瞑って?」

唇が触れ合う直前、そう言ったら。
その綺麗な目が、閉じられた。

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