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「直感(春×歩)」
1:お誘い

直感 1-1

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【1:お誘い】

『栗ちゃ~~ん、聴いてるかな?愛してるよ~~~』

「ブッ…っ」

爽やかな朝。ラジオから聞こえたその声に、栗原は思わず水を噴いた。

『なぁ、聴いとるか?俺のかわいい相方の栗ちゃ~~ん』
『ほらほら、ハルさん、それぐらいにしとき』
『俺の愛が伝わったかな?おはよ~~。俺もこの後スタジオ行くからねv』
『僕はOFAのみんなを愛してますよ~~』

一緒に出演している冴島がご機嫌な春海に完全に呆れながらも、とりあえずノってくれている。

『アハハ、それでは今日は、当番組のスポンサー○○のCMにご出演中の冴島幹彦さんと北山春海さんにお越しいただきました。ありがとうございました』

苦笑いのMCがそう締めて、番組は終了した。

「事故るだろ、まったく…」

栗原は顔を真っ赤にしながら、ハンドルに飛んだ水を拭った。

今朝のラジオに春海と冴島が出演すると聞いたのは先週のこと。
事務所設立当初から所属する2人だけに、5周年を迎えた事務所への想いとか自分たちの今後とか、そんなものも聞けるということで。できるだけ聴いてあげてくれと、社長の大野も事務所内のタレントにメールを送っていた。
放送はちょうどスタジオへ向かう時間だし、春海が真面目に話すところを聴いてみたいもんだと(←何気に失礼)、ラジオをかけたのが30分前。
最初は確かに真面目な話が多かった。大野を慕ってこの事務所に移籍した春海は、所属タレントという立場とはいえ事務所に対する想いも強く、栗原は聴いていて感心もした。
最後に芸能界で仲の良いタレントの話になると、春海は真っ先に大河と栗原の名前を挙げた。それもそのときはまだ、栗原は照れ臭いながらも笑顔で聞いていたのだが。

『では最後に、お2人から何か一言』

と言われると、冴島に続いて口を開いた春海の発言が、冒頭のそれである。

春海と恋人同士になって早くも1ヶ月。
春海はストレートに、しかもところ構わず平気でこんなことを口にする。
しかしもともと栗原に対して距離が近くてスキンシップも"大好き"発言も多かった春海は、傍から見れば"いつもどおり"で。受け止め方が変わったのは、栗原だけ。
唯一変わったことといえば―――



「おはよう歩」
「あ、おはようっす」
「今日も熱烈な告白受けてたなぁ」
「アハハ。聴いてたんすか?」
「バカだよなぁ?アイツ」

サポートスタッフとそんな会話をしながら入ったレコーディングスタジオで、不意にスマホから着信。春海からのメッセージだ。

『昼前にはそっち行けそう。一緒に昼メシ行こ』

今は10時前なのに、ずいぶんと時間がかかるんだなと思っていると、

『なんか、"ついでに"とかいって取材につかまった』

んだそうで。
多忙な人気タレントを"ついで"によくも引き止めたもんだと、栗原は相手の強引さに苦笑いが漏れた。

『運が悪かったね。がんばれ』

それだけを打って返す。
するとすぐに着信。

『ご褒美期待してる』

は?
意味が分かんないんだけど、と打ち返す間もなく。

『ご・ほ・う・び( * ̄ 3 ̄*)』

瞬間、栗原は顔がボッと熱くなるのを感じた。

「あれ?歩、顔赤くない?熱でもあるのか?」

いつの間にコーヒーを淹れてくれていたマネージャーが、覗き込んでくる。栗原は慌ててスマホの画面を隠すと、「大丈夫です」と笑顔で返した。

そう。
唯一変わったのは、こうして春海が自分をさりげなく"誘う"ようになったということ。
しかしそれは春海お得意の直接的な表現ではなく、どちらかといえば遠まわしに。
そしてそれは決して強制的であったり強引なものでもなく、たとえば栗原が断れば、春海はあっさり引き下がる。

「ごほうび、って……」

それがどこまで本気かは分からないが、訊いてもしストレートに誘われたりでもしたら、さすがにこれ以上拒否できない気もする。自分も男である以上、誘って拒否されるのはそれなりに堪えることを理解しているから。
だからどう返していいかわからず、栗原は結局返信できなかった。





春海が戻ってきたのは、それから2時間後だった。
ちょうど昼時だということでそのまま休憩になり、栗原は春海と一緒に近所の定食屋に入った。

「なぁなぁ、ラジオ聴いた?」

注文した後、メニューをしまいながら嬉しそうな春海に、

「いや」

栗原は水を飲みながら目を逸らす。

「え~、嘘やぁ。聴いたやろ~?栗ちゃんならちゃんと聴いてくれとるやろな~と思って言ったんやし」
「せっかく真面目な話でいい内容だったのに、勿体無い」
「やっぱ聴いてくれてたんや」
「…………」
「フフ、公共の電波使ってやったで」

それの何が嬉しいのかは分からないが満足げな春海に、栗原は思わず笑みが漏れた。
そんな栗原の笑顔に、春海は更に笑顔になって。
掘りごたつの死角を利用して、テーブルの下でチョコンと足に触れながら、

「来週、オフかぶるよな、確か。ドライブでも行こうか?」

秋やね~と外を眺めながら、春海が次のデートをとりつけてける。
太陽の光に当てられた春海の、色素の薄いサラサラの髪と白い肌に、思わず栗原は目を奪われた。

「そうだね」

相変わらず綺麗な人だと思いながら答える。確かに自然溢れる景色が似合いそうだな…と。

「サービスエリアとかも寄りたいな」
「ああ、いいね」
「チョコバナナクレープあるかなぁ」
「アハハ。どうだろうね」
「栗ちゃん、サービスエリアの食いモンで何が好き?」
「ん~、ついつい買いそうになるのはミニカステラかな。ほら、グラムで売ってるやつ。甘い匂いに釣られちゃうんだよね」
「クマさんの?」
「クマさんて…ああ、まあ、そうだけど」
「アハハ、栗ちゃん超カワイイ~~」

クマカステラかぁぁと、春海は笑いながら足をチョンチョンつついてくる。
栗原は合わせて笑いながらも、"チョコバナナクレープのお前に言われたくねーよ"と心の中で突っ込んだ。
すると、

Prrrrr

不意に、春海のスマホが着信を告げる。
音を切っていなかったのか大きな音を響かせたそれに、画面も見ずに慌てて通話をタップした春海は、

『お前アホか!!』

と、栗原にまで聞こえる大きな声を耳に受けた。

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