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「直感(春×歩)」
1:お誘い

直感 1-2

 ←直感 1-1 →直感 2-1
「ちょ…大河?」
『おお、俺や。お前の知り合いで他に"安藤大河"おんのかいな。それとも何や、画面見てへんのか。俺やなくてヤクザやったらどうしてたんや』
「ヤクザに知り合いおらんし。お前ぐらいしか」
『ああそっかぁ、ってアホ!』
「…何を怒ってんねん」
『"何を"やと?お前なぁ、歩にああいうこと言うなって言ったやろが』

どうやら今朝のラジオを聴いたらしい大河は(←幼馴染思い)、朝っぱらから純情な弟を口説く春海に怒り心頭のようだった。
春海の本気如何は別として、彼のきわどい言葉で栗原が困った顔をしているのは何度か見かけている大河だけに、忠告を無視した春海の言動が腹立たしかったのだ。
それなのに春海は、

「ええやん、別に。ホンマのことやし」

反省の色が無い。

『だから、そこ。そういうとこやて。お前なぁ、俺はお前のことを思って言ってるんやぞ?』
「え~?」
『何が"え~"や。そんな声だしても俺には通用せんからな。お前がああいうこと言って、歩がドン引きするリスクとか考えへんのか』
「ん~、全然」
『はぁ…どこまでもお気楽なヤツやな』
「ところかまわずなお前に言われたくないわ」
『ど、どこがところかまわずやっ!だあぁぁ~~、もうええ、お前なんかフラれてしまえ』

応援なんかしてやらないからな、と、まだ2人の関係を知らない大河は電話口で大きな溜め息をついている。
春海の片思いが冗談ではないことは気付いていたが、ここまでバカだとは思わなかった、と。

「ああ大河、やっぱ知ってたんや」

大河からはっきりと言われたことはないものの、何となく知られていたんじゃないかとは思っていた春海は、冷静にそう言って笑う。

『幼馴染ナメんなよ』
「あ、俺のセリフとったぁ」
『とるか、アホ』
「まあ、ええやん。大丈夫やから。つーか俺いま栗ちゃんとランチしとるから、邪魔しないでくれへん?」

するとタイミング良く、2人が注文した定食がテーブルに置かれたので、

「冷めてしまうから先食べな」

スマホを少しよけてから、春海は栗原にそう促してやった。しかし栗原は「うん」と言いながらも、待ってくれている。
向かい側で手持ち無沙汰になっている栗原を見ながら、春海はまた彼の足をチョンとつついて"ごめんね?"と笑顔を向けた。

『邪魔ってお前。なら最後に、その"栗ちゃん"は、今日のラジオ、何やて?』
「ん~~、どうやろ。照れとった」
『は?』
「ふふ…。かわいいやろ~~」

うらやましいやろ~~と自慢気な春海に対し、電話の向こうの大河は不意に無言になった。
そして、静かな声でまた口を開く。

『なあ…』
「ん?」
『ちょっと、歩に代わって』
「だから、俺らランチ…」
『ええから。すぐ済むから』
「え~~」

冷めちゃうよ、と口を尖らせた春海は、仕方なく栗原にスマホを差し出した。

「?」
「大河。代われって」
「??あ、うん」

首を傾げながら、栗原はスマホを受け取って耳に当てる。

「大河さん?歩です」
『おお。ごめんな?ちょっとだけ』
「うん、大丈夫だけど…」
『あのさぁ歩、まさかとは思うけど…』
「ん?」
『ハルと、おかしなことになってへんやろな?』
「―――!!」

ギクリと、音がしそうなほどに反応した栗原は、咄嗟に目の前の春海を見た。
しかし春海は当然何も分かっていないため、「ん?」と不思議そうに見てくるだけだ。

「あの…お、おかしな、って……?」
『いや、何もないならええんやけど』
「えっと…」
『その反応やと、確実に何かありそうやね』

動物的な直感が働いたらしき大河からは、ズバリと刺される。
しかしその大河からも、困惑の色が伺えて。

『お前は、それでええの?』
「……え」
『遠慮しなくてええから、嫌なら嫌ってはっきり言えよ?』

春海の強引な押しに栗原が流されたのではないかと、心配するように訊いてくる。

『その、アイツの気持ちは気付いてたけど、お前もって、俺ちょっと…想像つかんかったから。アイツのああいう言動で、普通に、困ってるのかと…』
「そ、それは…ないけど」
『なら、お前の意思なんか?』
「あ、うん、それはもちろん…」
『ならええわ』

それだけ確認したかった、と大河は少しだけホッとした声を出した。

「心配、してくれてたんだ?」
『当たり前やろ~。歩やで?変な虫ついたら俺、泣くわ。ああ、あいつもじゅうぶん変な虫やけど』
「アハ…」

その言葉に、栗原は少し嬉しくなった。
最近はあまり構ってくれなくなった兄貴分に少し寂しい思いがあったが、どうやらこの人はちゃんと自分のことも考えてくれているようだ、と。

『まあハルなら、悔しいけどその辺ちゃんとしとるからとりあえずええわ』
「そうなの?」
『お前と比べたらどうか分からんけど、まあ、大丈夫やろ』
「俺、そんなちゃんとした男じゃないよ?」
「ちょっと…!」

栗原の発言に反応した春海が、足を軽く蹴ってくる。
また口を尖らせている彼に栗原は笑いながら、そろそろ切ろうかと大河に声をかけようとすると…

『まあとりあえずお前がええなら俺はええけど、あんま流されるなよ?もしやっぱアカンてなったら…そうならないことがもちろん一番やけど、もしそうなったら、俺に相談しろよ?引き返せないとこまでくる前に』
「…というと?」
『ていうか、お前らいったい、どこらへん…』
「????」
『その…あ、あれや。えっと…』
「え?何?」
『だああもう、真昼間に話すことやないから切るわ。お前から聞きたくないし。あいつにヨロシク言っといて』

慌てたようにそう告げると、大河は慌しく電話を切ってしまう。
栗原はしばしそのスマホを眺めてポカンといていたが、ゆっくりと春海に差し出した。

「大河…気付いた?」
「…みたいだね」
「鋭いやつやなぁ。まあええか、アイツなら。な?」

寧ろ強力な味方になるかもね、と春海は楽観的に笑う。

「で、最後何やて?」
「それが…いまいち。真昼間に話すことじゃないから切る、って。俺から聞きたくないって」
「何それ」
「さあ…」

首を傾げながら、ようやく食事にありついた栗原は、まだあたたかい味噌汁やご飯を美味しそうにパクついた。
春海も箸を手に食事をはじめるが、

―――真昼間に…ねぇ。

何となく大河の言いたかったことに気付き、内心おかしくて仕方ない。

―――栗ちゃんから聞きたくない…か。そらそうやろ。

幸せそうに生姜焼き定食を頬張る栗原を眺めながら春海は、とりあえずはこの姿を独占できることで満足するべきだと自分に言い聞かせていた。


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