FC2ブログ

「直感(春×歩)」
2:予定変更

直感 2-1

 ←直感 1-2 →直感 2-2
【2:予定変更】

『じゃあ、明日はドライブやで~』
『うん。お疲れ様』

そう言葉を交わして電話を切ったのは、8時間前。
朝起きて、2人がそれぞれ見たものは―――


ザー―――……

見事に、雨である。


「こりゃまた、すごいな」

土砂降りの外を見ながら、栗原は苦笑いをした。
これでは車を出したところで、どこに行っても見えるのはワイパーと雨だれだけだろう。そもそも、運転自体が危険なレベルだ。

―――今日はキャンセルかな…

昨日、車で迎えに行くと言っていた春海だが、この雨の中を来させるわけにはいかない。
約束の時間は30分後だし、今のうちに電話をかけた方が良さそうだ。
スマホを片手に溜め息をつきながら栗原は、その名前を表示させた。
すると、

Prrrrrr

まるで示し合わせたように着信が入る。
相手は春海だ。

「…もしもし?」

恐らく彼も、今日はキャンセルにしようと電話してきたのだろうと、栗原は電話に出た。

『あ、栗ちゃん?おはよ~』
「おはよう。あ、今日…」
『なあなあ、栗ちゃんの車の横、空いてるけど停めてもええの?』
「……は?」
『いつものコインパーキングでもええけど、この雨やし、そっちの駐車場に停められたらええかなぁって』

そう話す春海の電話の向こうでは、微かなエンジン音が聞こえる。
もしかして……

「…ハルさん、今、どこ?」
『ん?栗ちゃんの車の横』
「すぐ行く!」

栗原はそれだけ告げると、傘を持って慌てて部屋を出た。




「ちょっとっ!何してんだよっ」

栗原の姿を確認して車を降りてきた春海に駆け寄る。
すると春海も、慌てたように栗原の傘を差しなおしてやった。

「ほら、ちゃんと差さないと濡れるで栗ちゃん」
「そうじゃなくて。危ないでしょ、この雨の中」
「え~大丈夫やって」
「何してんの、まったく…。とにかく入って」

立ってる傍から濡れていく肩や足元を見て、栗原は春海の手を引きながら慌てて建物内へと走った。


部屋に戻ると、栗原は春海を玄関にあげた状態でバスルームへ向かった。
そしてタオルを取ると、春海の肩を拭いてやろうとしたが、

「あ、栗ちゃん先に拭きな」

あっさりとタオルを奪われ、顔やら肩やらを拭かれる。
それから自分の服をさっと拭いて、春海はタオルを返した。

「この柔軟剤、ええ匂いよね。俺これ好き」
「そんなことより、どうしたの、今日」
「え?ああ、この雨やし、これからもっと雨強くなるっていうし、余裕持って出ようかと思って」
「いやいや、そうじゃなくて」
「??」
「この雨で車出しちゃダメだって」

いまいち危機感が足りなくて、栗原は春海を嗜めるように見つめる。
事故ったりでもしたら、どうするつもりなのだろう。心配する人間の気持ちもわかってほしい。
それなのに、

「でも、会いたかったし」

サラリと。春海はまた、ストレートに返してきた。

「栗ちゃんは?会いたくなかった?」

そんな質問は卑怯だ、と栗原は思う。
だって……

「そ、それは……」
「ん?迷惑やった?」
「そ、そんなわけないけどっ!ずるいよ、そういう訊き方っ」

どうしてこうもずるいのだろうと睨みつければ、その赤い顔を見て春海が嬉しそうに笑った。

「えへへ。その顔見るためなら何でもするよ~」

チュッと、軽いキスがくる。
そして唇を離すと、今度は改めて、少し長いキスがきた。
パサリと、栗原の手元からタオルが落ちて…
春海の手が、自然に栗原を抱きしめる。

「……んっ…ちょ…ハルさ…」

玄関だろ、と言いたくて春海のシャツを掴みながら小さくみじろぎした栗原が漏らした声に、春海は思わずギクリとした。

―――ヤバイ…

頭の中から危険信号が発せられ、努めて冷静を装いつつも内心慌てて離れる。
肩を掴んだまま何となく栗原を見つめながら……ふと気付く、いつもと違う雰囲気。

「そういえば栗ちゃん、髪、今日は何もしてないんやね?」

そっと触れると、栗原は子犬のようにチョコンと肩を竦めた。

「あぁ、これからセットしようかと思ってた矢先だったから」
「ええやん、このままで」

ハードタイプのワックスでセットされた普段のスタイルではなく、何もつけていない、サラサラな髪。元々春海は栗原のこのヘアスタイルが気に入っていたが、子供っぽく見えるのが嫌なのか、最近はめっきり見なくなっていた。

「どっちも似合うけど、やっぱこれ、好きやな」

整髪料ではなくシャンプーの匂いがふわりと香る髪を撫でながら目を細めれば、栗原も春海の雰囲気の違いに気付いたようで、

「ハルさんは、メガネなんだね」

まるで子供のようなしぐさで、覗き込んでくる。

―――ああ、かわいい…

毎度の事を、でもしみじみ感じて。
それだけでも、この雨の中車を走らせてきた甲斐がある。

「なあ栗ちゃん、今日どうする?ていうか、とりあえず中、入っていい?」
「え?ああ!どーぞどーぞ」

薄ら寒い廊下で何やってるんだとばかりに、栗原もハッとして、タオルを拾いながら春海をリビングへ通した。

関連記事
スポンサーサイト
↓ランキングに参加しています。
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL恋愛小説へ

総もくじ 3kaku_s_L.png 短編作品
総もくじ 3kaku_s_L.png ★パンドラの箱(三角関係)【連載中】
総もくじ 3kaku_s_L.png Hide-and-seek(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 直感(春×歩)
総もくじ 3kaku_s_L.png Assist(春&歩)
総もくじ 3kaku_s_L.png 一時停止(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png Engagement(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png アゲイン(陸×千)
総もくじ 3kaku_s_L.png Beyond Silence(W大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 恋愛プロセス(拓×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 満月の夜(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 痴話喧嘩(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 白い恋人(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png reward(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 君と見る空(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 極夜(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png シンクロニシティ(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png Stranger(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png その先へ(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 優しい嘘(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 短編作品
総もくじ  3kaku_s_L.png ★パンドラの箱(三角関係)【連載中】
総もくじ  3kaku_s_L.png Hide-and-seek(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 直感(春×歩)
総もくじ  3kaku_s_L.png Assist(春&歩)
総もくじ  3kaku_s_L.png 一時停止(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png Engagement(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png アゲイン(陸×千)
総もくじ  3kaku_s_L.png Beyond Silence(W大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 恋愛プロセス(拓×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 満月の夜(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 痴話喧嘩(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 白い恋人(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png reward(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 君と見る空(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 極夜(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png シンクロニシティ(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png Stranger(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png その先へ(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 優しい嘘(直×大)
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  • 【直感 1-2】へ
  • 【直感 2-2】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【直感 1-2】へ
  • 【直感 2-2】へ