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「Hide-and-seek(直×大)」
1:迫り来る過去

Hide-and-seek 1-1

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【1:迫り来る過去】

それは、何てことない週末のはずだった―――


宮城県仙台市。
RAGING THIRST×StarMine合同ライブin仙台。前日リハーサル。

東京駅から新幹線で2時間。仙台駅から迎えに来たバスで、6人(+マネージャー陣)は会場に降り立った。
不定期であれど時折行われるこの合同ライブは、年々彼らの知名度も上がっているせいか各地から声がかかる中、各々のツアーでもまだ訪れたことのない場所として今回は仙台が選ばれた。
小さな会場だけにチケットは即完売し、追加公演が決まったのは先月のこと。せっかくなら2日間違うことをしようなんて話になり、忙しい合間を縫って打ち合わせを重ねているうちに、時間も過ぎて。遂に明日が本番だ。

「寒いね。大丈夫?」

新幹線もバスも大河の隣を陣取っていた直希が、バスを降りた瞬間に身を竦ませた大河の肩を抱いて覗き込んできた。
寒がりのくせに荷物を極力減らそうとする大河は防寒具を一切持たず、車内で邪魔だからとコートまで荷物スペースに投げ込んでいたのだ。

「仙台の寒さナメとったわ」
「まあ、そりゃあ、東北だからねぇ」
「そんなこと言われても、地理分からんし」
「アハハ、それぐらい分かるだろ。とりあえず、俺のマフラー使いなよ」

と、直希は自分のマフラーをスルリと抜き、大河にかけてやった。

「え、ええよ。もう入るだけやし」
「いいから。中だって寒いかもしれないしさ」

バスの出入口でそんなやりとりを繰り広げていると、

「はいはい。そこだけ真夏のようですね~」

背後から降りてきた春海が、冷やかしながら通り過ぎ、

「ヤケドシチャウネ~」

拓郎が、車内で聴いていた洋楽につられたのかカタコトで嬉しそうに通り過ぎ、

「イチャつくなら車内で済ませてきてくれませんかね~~」

陸(←今回の企画者)が、頭を掻きながら溜め息混じりに通り過ぎ、

「見てない。俺は見てないよ~~」

ニヤついた栗原がわざとらしくそっぽを向いて通り過ぎ、

「ごちそーさん」

最後に実が、ポーカーフェイスで通り過ぎる。
大河は恥ずかしくて、直希を肘でつつきながら歩き出した。
そして直希は一切気にせず、大河の肩をしっかりと抱きながら並んで歩く。

「離せアホっ」
「あったかいでしょ?嬉しいでしょ?」
「お前の脳みそどうなっとんねん」
「奇想天外な大河よりは一般的だよ」
「どういうことやねん」

完全にじゃれ合っているだけの2人は、自然と仲間たちの群れから少し離れてしまっていた。





「どうも今日はありがとうございます」

控室に通されてすぐ、会場の支配人である男性が現れた。
企画担当者である陸や、今日から同行出来ているマネージャー陣も、彼にお辞儀をしながら名刺を交わす。

「いやぁ、人気アーティストさん方がこういった小さな会場を選んで頂けるなんて光栄です。しかも追加公演まで快諾してくださって」

仙台市内といえば大きな会場もあるにもかかわらず、比較的小ぶりな部類に入るこの会場を選んでもらえたことがよほど嬉しかったのか、支配人はしきりに頭を下げてくる。おかげでさすがに陸ですら恐縮してしまい、

「じつは以前、舞台公演でここに訪れたことがありまして。音響も設備もしっかりしてるっていう印象が残ってたんですよ」

と、かつて自分が役者としてステージにあがったときのことを打ち明ける。すると支配人もにっこり笑い、

「ええ、もちろん覚えてますよ、陸さん。私は20年以上ここで働いてますので。あの時も大きな話題になったんです、人気俳優の主演舞台がウチにも来るって。その頃のことを覚えててくださったんですね?ありがとうございます」

と、また深く頭を下げた。

「あ、それから彼なんですが…」

そう言いながら支配人は、さっきまでステージの確認をしていたのかやっと控室の入口に現れた若い男を呼んだ。

「桜井!」

桜井と呼ばれた男は、そのまま中に入ってくる。
一般男性にしてはなかなかの長身で、細身だがそれなりに筋肉はあるのか引き締まった体つきの、どちらかといえば色白で今流行りの塩顔というか優男というか、爽やかな男前。
そのとき、

「桜井……?」

すぐ近くに居た春海がピクリと反応を示した。
この男、どこかで……

「彼は、今回のイベントの会場責任者です」

支配人が、辿り着いた男を紹介すると、

「桜井深雪(みゆき)です」

にっこりと、笑顔まで爽やかな好青年は、期待を裏切らない爽やかな名前を口にしながら、全員に向けて何度かお辞儀をした。
その瞬間、

「ユキ!」

あっと、春海が思い出したように声を出して駆け寄る。
当然、全員が春海に視線を移した。支配人も然りである。
しかし深雪は、

「おお!久しぶり、ハル」

やはり爽やかに挨拶を返した。

「…え、知り合い?」

初めて来る仙台に、しかもこんなイケメンの友達が居るとは俄かに信じがたくて、陸は隣に来た春海を首を傾げながら見る。
しかし答えたのは春海ではなく、

「はい。僕たち、高校の同級生なんです」

深雪だった。

「ハルとは3年間クラスメートで、僕はテニス部だったんですけど、よく試合にも応援に来てくれました」

と、彼は笑って。
やってるスポーツまで爽やかだなと、誰もが思ったのだが。

「そういえば大河、居ないね?」

深雪が、控室の中を見渡したとき。
陸は、見逃さなかった。
春海が、何故か微妙な笑顔に変わったことを。

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