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「Hide-and-seek(直×大)」
3:決戦の日

Hide-and-seek 3-2

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大河は、荷物をまとめながら、ひたすら無言だった。
昨日からずっと考えていたのは、この誤解をどう解くか、ということ。もちろんそんなことをしたってもう遅いのかもしれないが、それでも身の潔白だけは晴らしたかった。
それは、直希を取り戻したいというよりは、自分自身を取り戻すためだ。
フられた鬱憤晴らしに酒の勢いで深雪に体を許したなんて、そんなこと絶対に信じたくなかった。
自分のプライドにかけても、深雪と間違いを犯したなんてことはありえない。恋愛をゲームのように楽しむ彼のことは、絶対に自分はゴメンだと思ったのだから。これまでの自分はどの恋愛も長続きしなかったとはいえ、それでも自分なりに真剣に恋をしてきたつもりだ。これまでのどの彼女とも、ゲームを演じたつもりはない。

―――ごめんな、直希

昨日、否定してやれなかったことだけが悔やまれる。彼に疑われたと感じた瞬間、全ての自信を失ってしまったことが。
あんなに怒りを露にした彼を見たのは、初めてかもしれない。
ましてや、あんな風に拒絶されるなんて、締め出されるなんて、一度だってなかった。

許してもらおうなんて、欲を出すつもりは無い。自信を失った時点で自分が悪い。だから彼が、こんな自分に愛想が尽きてしまったのなら、それは受け入れるべきだと思う。
それでもここで自分の無罪を晴らさなければ、彼のプライドすら傷つけることになるから。自分はこんな男を好きになってしまったのかと、彼はきっとそう思っているはずだから。
自分とのことを、後悔してほしくない。みっともない姿を晒してまで自分に一生懸命恋してくれたことを、無駄だと思ってほしくない。

大河はそう自分に言い聞かせながら、控室を出る。
すると、

「大河、ちょっとええか」

バスへと向かう途中、大河を再び陸が呼び止めた。

「何?」

大河が振り返ると、少し気まずそうに陸が髪を掻いて。

「ハルから、聞いたで」

昨日の話、と。
大河は思わず溜め息を吐いた。
兄にまで知られるなんて…

「口が軽い奴やな…」

思わず本音を漏らせば、

「いや、俺が問い詰めただけや。アイツは悪くない」

渋る春海から自分が強引に聞き出したことを、陸が告げた。

「それで、ホテル帰ったら、お前に詳しく聞きたいんやけど…」

あんな内容の話を聞いてしまえば当然の提案が来る。
しかし大河は、首を横に振った。

「ゴメン兄貴。まだ話せない」
「え?」
「もう少しだけ待って」

まずは深雪と話をつけるべきで、それからでないと何も話せない。

「明日、話すから」

深雪とも、そして陸にも。そんな意味を自分だけに込めて、大河はそれだけ答えた。
深雪と話すことは、今はまだ言わないほうが良いだろうと。そんなことを告げれば、心配性の兄は猛反対するだろうし、自分まで残ると言い出しかねない。ギリギリになって言うべきだ。それに、1対1じゃなければ、深雪だって本心を言わないはずだから。

「ホンマにゴメンな」

もう一度謝り、しかしその言葉には"何を言っても無駄だ"という意味も込めて、大河は陸から離れた。
陸も、何故か追えずにその背中を見つめるだけだった。
すると、

「すいません」

不意に、背後から声をかけられて。
振り返れば、

「直希?」

バッグを肩にかけた直希が立っていた。

「そこ、いいすか?」

通してください、と、通路を塞いでいる状態の陸に首を傾げる。
慌てて陸はそこを避けるが、

「ちょ、直希、待って」

通り過ぎようとする直希を呼び止めて。
すんなりと足を止めて振り向く彼に、

「大河と…何かあったか?」

訊かなくても分かることを、思わず訊いてしまった。
すると直希はしばらく無表情のまま黙り込んで……

「ありましたよ」

分かってるでしょ、と言うように、あっさりと返してくる。

「何が、あった?」

だから陸も重ねてそう訊ねたのだが、

「言いたくありません」

間髪入れずにそう答えて、直希はまたバスへと向かってしまった。


バスに乗り込んだ直希は、後方に大河が座っているのを確認すると、自分は前方の席に座った。
昨日あれからずっと考えたことは、自分が大河の過去をどう受け止めてやるかということで。
大河と付き合っていれば、この先こんな問題が何度も沸き起こるかもしれない。深雪が言っていることが真実であれば、大河は過去にも同じことを繰り返した可能性があるから。
その度にこんな思いをするのは、正直耐えられないと思う。
過去を怒るのは心の狭い人間だと言われるかもしれないし実際そうなのかもしれないが、それでも耐えられないものは仕方ない。昨日だって、寸でのところで思いとどまったものの、あのときの自分は自制心を失っていた。本気で、大河を無理矢理どうにかしようとしていた。

『正直俺……憶えてへん』

自分から、大河を信じる自信を一気に失わせた、あの言葉。
あんなにはっきりと『無い』と言ってくれていた彼が、何故急にあんな言葉を吐いたかは分からない。しかし、何度質問しても、同じ強さで否定してほしかったのに。否定しないどころか彼は、そんな言葉を……
彼が憶えていない記憶が、どれだけあるかは分からない。しかしたとえ2つ3つだったとして、そこにはそんな過去があるかと思えば、もう、平常心でなんていられない。
ならば彼と別れるのかと問われれば、その勇気も無くて。

―――ごめん、大河

せめて、もう少し時間が欲しい。
もう少し彼と冷静に向き合う勇気がつかないと、今の自分は何をするか分からない。そこまで最低な男にはなれない。

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