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「Hide-and-seek(直×大)」
3:決戦の日

Hide-and-seek 3-3

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「直希、今、ええか?」

夕飯の食事会場で、直希は春海に声をかけられた。
直希の返事を聞くまでもなく、既に彼は隣に座ってしまっている。直希と共に座っていた拓郎が周囲のスタッフと会話を始めるのを、どうやら待っていたようだ。

「何すか?」

特に視線は合わせず直希が答えると、

「アイツのことやけど…」

隣の列で実と向かい合って食事を摂っている大河を顎で示した春海が、

「あんまり、ユキの言うことに乗せられるなよ?」

肩をポンと叩きながら、努めて軽い口調でそう言った。

「確かにあの日、大河を送ってからのことは俺も知らんけどさ、でも、だからこそユキが好き勝手言うとる可能性もあるやろ?あいつ頭ええからさ、良くも悪くも機転が利く奴やねん」

ならば何故、恋人しか知らないようなことまで彼が知っているのか、そこの疑問は残る。それを承知の上で、春海はそう言っていた。きっと何かしらの手段で、深雪はそれを知っただけなのかもしれないと。

「俺は大河を信じてるで。お前も、信じてるよな?」

そしてもし深雪の言う通りだったとしても自分は大河と直希カップルの味方なのだが、それは春海は敢えて言わないでおいた。
そんな春海の言葉に、直希は黙って手元を見つめるばかりで。

「直希?」

いつの間にか、直希と春海の周りには人が居なくなっている。それは、大河と実の周囲も然りだ。

「でも大河は、否定してくれなかった…」

ポツリと、直希は答えた。

「最後の最後で、自信を失くしたんだ」
「自信?」
「何も無かったって、断言する自信ですよ」

そして春海に視線を向ける。
泣き出しそうなその目に、春海は一瞬言葉を失ったものの、

「お前は、ちゃんと信じてやったか?」

確認するように、そう訊ねた。

「アイツを疑う素振りは、お前は見せてないんやな?」

重ねて問えば、直希は、

「そんなの、俺は……」

言いかけて、言葉を止める。
自分は、彼を信じてやっていただろうかと。
何度訊ねても彼が断言してくれれば信じられると思ったことは確かだが、ならばその、訊ねていた過程は?と。

「俺は……」

思い出すのは、彼が『憶えていない』と答えるまでに、自分が彼に言った言葉。

『本当に?』
『大河、正直に答えてよ』

それは、聞き方によっては……

「でも、疑ったわけじゃ…」

慌てて、弁解するように春海を見た。
だが、

「それを、大河がどう捉えたかやろ?」

正論が、彼から返ってきて。

「お前が何を言ったかは知らんけど、俺たちは別々の人間なんやから、相手にどう伝わったかは相手やないと分からん。もしもお前の言葉が大河にとって疑いのものとして伝わったとしたら…」

食事を終えたのか切り上げたのかは分からないが立ち上がる大河と、彼に合わせて並んで会場を出て行く実が見える。そして大河を心配するように目で追いながら、こちらに目を向けて困惑の色を見せる栗原も。

「大河は、自信を失うよな」

一人になってしまった栗原に軽く手を振りながら、春海が直希を見た。

「それでも断言できるほど、アイツ、強くないやろ?」

大河が自分に自信がないことは、誰もが分かっている。彼が誰に何を言われようが強気でいられる場面というのは、あくまでアーティストとしてだけなのだ。
日常生活においては失敗やトラブルの多い彼は、自分という人間への評価が極端に低い。その不器用さが彼の魅力で愛嬌とはいえ、本人はいつだって本気なのだから、他人よりも自分が劣っていると感じてしまう。
気が強いくせに変なところで弱い、それが大河だ。
だからそんな彼にとって、自分を信じてくれる人間のその想いこそが、彼の自信で。

「何を信じて、何を大事にするべきかさ、よく考えろ?」

大河には実が付いているからとりあえず大丈夫そうだ、と思いながら、春海は直希のフォローに専念した。

「そんで、早く仲直りしてくれや。じゃなきゃもう、俺らが調子狂うから」

普段は暑苦しくて仕方ない2人のやり取りも、こうなってみれば愛しくて。

「たぶん大河は、お前にフられたと思ってるで?」

あんまりのんびりはできないことだけは、さりげなく伝えておいた。
それを意外そうに眉を寄せる直希は、やはりまだ大河のことを分かりきっていない気がして。
でもそれは、彼らが個々の人間である以上は、永遠に続くことだ。
逆に言えば、何もかも分かってしまったら、面白くない。分からないから面白いのだ、人間は。

「俺は、お前にそんなつもりは無かったと思っとるけどな」

最後に直希の頭をぐりぐりと撫でて、春海は拓郎の会話に混じりながら食事を再開した。

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