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「Hide-and-seek(直×大)」
4:守りたいもの

Hide-and-seek 4-3

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20時00分。
バスの出発時間になっても、大河は戻ってこなかった。
やがて予定時間になり、

「全員揃ってるか?」

と、先頭の席に座っていた岡本(RAGINGTHIRSTチーフマネ)が確認して。陸と何やらやりとりを交わすと、運転手に声をかける。
するとバスは、エンジンをふかしはじめてしまったから、

「あ、待って待って。まだ大河が…」

全員揃ったと勘違いされたと思った春海が、立ち上がって前方へと歩いていこうとした。
だが、

「大河は別なんだよね?」

岡本が陸に確認をして。

「うん」

頷いた陸が、

「大河は、ちょっと用があって、別で帰るから」

春海も含めて全員に言うように、背後を振り返った。
高瀬も岡本もメンバーも全員帰るのに大河だけの用事だなんて、そんなことが、地方のライブ会場なんかであるわけがなく。

「ユキ?」

思わず春海は、その名前を口にしてしまった。
もちろんそれは、後方に居た直希には聞こえなかったが。それでも直希は、春海と同じことを考えていた。実も同じだ。

「後でな」

陸は春海に小声でそれだけ答えると、席に戻るように促した。それは、大河の"用のある相手"が深雪であることを物語っている。ここでは話は無理だろうと春海が席に戻れば、今度こそバスは発進してしまった。
動き出したバスの中で、直希は思わず、会場を振り返った。
メジャーどころの会場に比べればひと回りもふた回りも小ぶりなはずのそこが、何だか不気味なほど大きく見えて……
陸すら説き伏せて、大河はそこに残っている。恐らく、十中八九、相手は深雪だ。

―――何で?大河…

頭を抱えて、大きな溜め息を吐いた。

隣の列で落ち着かない様子の直希を横目に、実は昨日の大河の言葉を思い出していた。
強い意思を持って、自分を見上げた大河が言った、あの言葉。

『今度こそ、切ってやろうと思って』

―――そういうことか…

ラストチャンスの今日、話をつけにいったのかと。
大河が残った理由なんて、相手なんて、春海の表情を見ればすぐ分かる。

「大丈夫かよ…」

思わず口に出して、実もまた頭を抱えた。





20時半。

「どうなってんねん、陸兄!」

ホテルに帰ってすぐ、春海は陸を捕まえると詰め寄った。幸い2人の部屋は同じフロアの為、エレベーターで待ち伏せていたのだ。
陸は周囲の目を気にして春海を自分の部屋まで連れて行くと、

「俺だって反対したわ」

ドアを閉めながら、大きな溜め息をついた。陸の顔にも、心配の色が濃く出ている。

「でもな、どうしても話をつけたいって、きかんくて」

それは、大河のあの性格ならば容易に想像できる。
だが、

「でも、一人って…」

深雪の危険さを話したはずなのに、と春海は詰め寄った。

「大丈夫や。密室にはいかないって約束させたし、何よりアイツだって立派な大人の男や。あれでも鍛えてる成果は出てるんか、細っこい割に意外と力もあるし。おかしなことになるはずないやろ」

しかも相手は、大河とそこまで体格の変わらない深雪だ。スポーツをやっていたといったって、今は一般の会社員。反して大河は昔からトレーニングは続けているし、特にここ最近は、ライブに向けてしっかりと体を作っていた。もともと身体能力だって高い。あの華奢な体で、重いスタンドマイクを平気で振り回すぐらいには。

「俺もめっちゃ心配やけど、アイツはもうすぐ26の大人やぞ?それが、"話をつけたい"って言うてるんや。1対1じゃなきゃ出来ない話なんやって、今日じゃなきゃ無理やって、何度もそう言われたら、信じてやらなあかんやろ」

そもそも陸は、深雪がそこまで手強い相手だとは思っていない。挑発しているだけで、実際に彼が大河の心を惑わせているとは到底思えないし、逆上して何かをしそうにも見えない。

「言うとくけどな、お前らの"元オトモダチ"は、大して根性ないで」

よっぽど自分の弟の方がある、と陸は思う。

「気が小さいから、相手を挑発して、そいつが自爆するのを待つしかできん」

大河を手に入れることができなかった理由は、そこにあるのだろう。

「ホンマに強いのは、自分の信念と、大事なものが何か分かってる奴や」

自分のプライドと、それから直希のプライドを取り戻すために話をつけたいと。大河はそう言っていたのだ。
そんな大河の表情は、兄である自分すら、とても美しいと思ったから。誇りに思ったから。

「大河を本気でキレさせたらどんだけおっかないか、この際、分からせてやったらええんちゃうか?」

信じてやろうと、陸が春海の肩に手を置くと。
春海もやっと納得したように、「そうやね」と頷いた。

「あの感じからして、桜井と、恐らく完全に手を切るつもりやろ。だからもう、桜井と遊ぶときもアイツを呼ばないでやってな?」

最後に、冗談交じりにそう言ってやると、春海は盛大に溜め息をついて。

「俺もアイツとは遊ばへんから」

生真面目に答えた言葉に、陸は笑った。

この陸の見解は、決して的外れではなかったが。
それでも彼もまた、大河を一人で残したことを結局後悔することになる。

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