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「Hide-and-seek(直×大)」
4:守りたいもの

Hide-and-seek 4-4

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20時38分。
大河は、深雪と共に一昨日の喫茶スペースに居た。
上階に位置するこの場所は開放的な空間ではあるが、ライブが終わって客が帰り、本格的な片付けは明日なのかスタッフも帰った今、こんなところにわざわざ上がってくる人間など居ない。

「何飲む?」

遅れてきたことを詫びるように深雪が自販機にコインを入れたが、

「こっちがええ」

大河はもう1つの自販機にコインを入れ、ブラックコーヒーのボタンを押した。
仕方なく深雪は、自分の分だけを買って、大河の隣に座った。

「話って、何?」

ひんやりしてきた館内で温かい缶コーヒーを頬に当てた深雪は、自分よりも白い肌を見るのは久しぶりだなと思いながらその横顔を覗き込む。
肌の白さも髪の黒さもヘアスタイルも背格好も、よく似た自分たちは、後ろ姿だと分からないと笑われたこともあった。あれはもう10年も前の話なのかと思う。
あのとき大河は、『正面から見たらガッカリやろな?』と、自分だって十分可愛らしい顔立ちをしているにも関わらず、深雪の整った顔立ちを褒めて。
大河に、『ユキはカッコええもんな』と言われるのが、あの頃の深雪は何よりも嬉しかった。ノリの良さや頭の良さも、よく褒めてくれた。
でも……

「大河は、俺に何を言いたいのかな」

そういえば大河は、自分の恋愛感だけは褒めてくれたことがなかった、と。……ふと、そんなことを深雪は思い出す。

「大河?」
「お前は、」

何度目かの呼びかけで、ようやく大河が口を開いた。そして、ゆっくりと顔を上げて隣を向き、視線を合わせてくる。

「俺を、恨んでるんやな?」

強い視線もやっぱり、深雪が好きになった大河のそれで。
だから深雪も、

「そうだよ」

その目を真っ直ぐ見つめて答えてやった。

「厳密に言えば、再会してすぐそう思ったわけじゃない。最初は、本気で懐かしく思っただけだよ」

自分にとって、ほろ苦い思い出の相手。
卒業後もしばらくはパッとしなかった大河だが、着実に力をつけていたのは、敢えて彼の活動を追っていたわけではないが知っていた。バンドでもユニットでも名が売れていけば、彼らの名前を目にしないようにすることの方が困難なほど。
今回の合同ライブの企画がきたときも、運命だとかなんだとか、そんな風に浮かれたりはしなかった。大河と再会したところで、彼とは友達にも戻れないことだって分かっていたから。それでも、5年という時間が、楽しく思い出話するぐらいの空気を作ってはくれるだろうと、そう思っていたのだ。

「俺は決して、お前の行動をチェックしてきたわけじゃない。ネットやSNSチェックなんてのもしないし、お前のバンドがどうとかユニットがどうとか、あくまで一般的な知識としてしか知らなかった。誰と誰が仲が良いとか、ましてや色恋沙汰なんて、そんなことまではファンでもゴシップ好きでもあるまいし知らなかった」

拘ってはいけないと、自分だって分かっていた。
だからこそ、再会したあのときの衝撃は強くて。

「お前がまさか、男の恋人作ってるなんて……」

あの、鈴野直希という男。彼のことだってもちろん知っているが、興味が無いから大して気にしていなかった。寧ろ、バラエティで見せるノリの良さは好感すら持っていた。
しかし今回、バンドのパフォーマンス以外で大河と並ぶ姿を初めて見て、一変したのだ。
呑気に大河とじゃれ合いながら控室に現れて、しかも、自分と大河の間に割って入ってきた直希。それが大河に対するどんな感情からくるものかだなんて、深雪にはすぐ分かった。
そして直希のそんな行動を、咎めるどころか寧ろホッとした顔をみせていた大河。直希に連れられて自分の元を離れ、肩を抱かれ、ストレッチしながら何度も視線を合わせては微笑み合っていた大河。

「俺は男も女も付き合ったことあるから、空気ですぐ分かる。特にアイツは、ずいぶんとお前に夢中でさ。お前も、嬉しそうに笑って」

その瞬間、微笑ましい再会なんてものは、砕け散った。

「だから、お前を恨んでる」

悔しさだけが、あのときの深雪を支配したのだ。
その意味が分からない大河は、眉をしかめて睨みつけてくるだけだ。
だから深雪は、同じように睨みつけながら、理由を教えてやった。

「お前は、俺の告白、3秒で断ったよな。毎回毎回。こっちは本気で言ってるのに、お前はいつも間髪入れずに断ってきた。考える素振りすら見せてくれずに。
その度にお前、何て言った?"男は無理だ"って。そう言ったんだよ。
でも今のお前は何だよ?男と付き合ってるじゃん。お前は男でもよかったんじゃないか」

要は、そういうことだった。
自分のことは、"男だから無理"と断ったのに、と。
しかし大河は、目をキュッと細めると、

「都合のええ聞き取り方やな」

鼻で笑った。
思わず深雪は目を見開いて怒りの表情を見せたが、あまりに冷たい大河のそれは、何だか恐ろしくて。背筋に、冷や汗が伝うような気がした。
そんな深雪に、大河はまた口元だけで笑うと、

「俺は、男は無理なんて言った覚えはない。
"お前みたいな"男は無理やって、そう言ったんや」

静かだが威力のある声で、そう告げて、

「だから俺は、お前とは寝てへん」

今度こそはっきりと、断言した。
そうすれば深雪の顔が、今度ははっきりと歪んで。

「でも俺は、お前の秘密を知ってる」

搾り出すように、その一手を出してくる。そういう行為をしなければ知らないような体の秘密を、知っているのだと。
でもそれすら大河は、冷静に聞き取って。

「俺の、当時のオンナにでも聞いたんやろ」

大河は同じ高校の同級生と付き合っていたことがある。春海の女友達だったが、それはイコール、深雪の友人でもあったことになる。それを思い出したのだ。
名前を思い出せないが、確かあのコは、あの後……

「俺にフられた腹いせか何か知らんけど、あのコに手ぇ出したよな、お前。横取りしたつもりかもしれへんけど、俺らはとっくに別れてたで」
「………」
「そのときに、聞いたんやろ、きっと。それで、そこを上手く今回利用したんやな」
「……違う」
「そんな顔して"違う"言うても無理やろ。ユキは頭ええからな。俺も騙されたわ」

一昨日はつい、突然の深雪の告白に動揺して意識が回らなかった。それが悔やまれて仕方ないが、今さら何を言っても遅い。
でも、遅くても、やはり汚された名誉は挽回したい。

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