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「Hide-and-seek(直×大)」
4:守りたいもの

Hide-and-seek 4-5

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「俺のアパートは、もしかしたらホンマにユキが来たのかもしれん。それはさすがに憶えてへんわ。でもな、俺はそれでもお前とはしなかったって断言できる」
「どうして?」

震える声で、深雪が訊ねる。
大河は視線を外さない。

「俺は、恋愛をゲームやと思ってる奴なんて、絶対に認めんからや」

意識なんてものが無くたって、自分の信念だけは曲げない強さは持っているはずだから。

「人の心をゲームの駒みたいに操る奴の手には、俺は乗らない。そんな奴興味ないから相手にもせん。女やろうが男やろうがな。
俺が何度告白されても断ったのは、お前は論外だったからや。お前の恋愛感ではな、俺にとっては箸にも棒にも掛からん。考えてやる必要なんてない。だから即答で断ったんや。食い気味に断ってもよかったけど、さすがにそれは失礼だから聞くだけは聞いただけや」

きっとこの言葉は深雪にとって凶器となっているかもしれないと大河は思ったが、それでもしっかり伝えるべきだと思った。
気付かずたくさんの人を傷つけるのは、もうやめてほしい。人の心は、彼の暇つぶしではないのだから。

「なあ、ユキ。お前はダチとしては、頭もええしノリもええし優しいし好きやったよ。お前はいつも楽しんでたし、いつもポジティブやし、そういうとこ見習いたかった。ついでに顔も良くて、育ちもええ。マジでお前には敵わんて、本気で思ってた。自慢やったで。
……でもな。
恋愛感だけは、俺はお前よりマシやと思うわ」

更に歪んだ深雪の顔に、大河も思わず眉を寄せた。
それは怒りではなく、悲しみで。

「ユキは、俺のことホンマに好きなわけじゃない。俺にフられたから、意地になっただけや。お前の告白は、いつも空気みたいに軽かった」

自分の何を気に入ってくれたかは知らないが、自分の何かが深雪の恋愛ゲームの対象になって。もしくは、最初こそ純粋に好きになってくれたのかもしれないが、断られた瞬間に、深雪の中でそれはゲームに変わってしまったのだろうと大河は思う。

「そこが、お前とアイツの違いや」

名前なんて出さなくても分かるだろうと、大河は少しだけ表情を緩めながら言った。自分に真っ直ぐに気持ちをぶつけてくれた直希のことを思い浮かべるだけで、自然と笑顔になれる。

「男やろうが女やろうが、俺は、自分を本気で好きになってくれる人なら、ちゃんと敬意を持って向き合う。もちろん、女に比べて男はちょっとハードル高いけど、でも、恋愛に垣根は必要ないと思ってるから、ちゃんと考える。そんでそのポリシーは、お前と一緒に居った頃から変わらん。
だからアイツのことは、俺は真剣に考えたんや。損得とかどっちが有利やとかそういうの一切考えずに人を好きになって伝えることができる奴やから、俺もアイツとは素直に向き合えた。アイツの言葉は、いつだってちゃんと気持ちが入ってる。呆れるぐらい何度も告白してくる奴やけど、その全部に、気持ちを込めてくれる。見た目チャラいけど、誰よりも誠実に真剣に、俺にぶつかってくるし受け止めてくれる。その結果、俺もアイツに惚れただけや」

人を好きになることに理屈なんてない。
だから深雪が、もしも自分を純粋に想ってくれていれば、少なくとも彼を尊敬し友人だと思える気持ちは残ったのではないかと大河は思う。
本当に、大切な友達だったのだ。
春海と2人で田舎から出てきて心細かった中、最初にできた友達が、深雪だったのだから。

深雪は、そんな大河を黙って見つめるしかできなかった。
一昨日のように自信を喪失した彼ではなく、はっきりと意思を持って伝えてくる大河は、とても綺麗で。
自分だってお前に本気で惚れたのだと言い返してやりたいが……言い返せないのは、大河の言い分に思い当たる節がありすぎるから。

ただただ、悔しかった。
大河だけは、何をもってしても手に入れられないことが。
その大河を、あの直希という年下の男が手に入れたということが。
その直希に、大河が本気だということが。
自分は敵わないということが。
お前は論外だと、断言されたことが。
意地で告白してきたんだと、正論を突きつけられたことが。
だから深雪は、

「でも、フられたんだろ?」

負け惜しみとしては破壊力があるであろう事実を、つけつけてやった。
そうすれば、大河は分かりやすく黙り込んで。それでも視線を外さないことが、深雪には腹が立った。
しかし大河の瞳が、少しだけ揺らいだことだけは見逃さなかったから、

「だったら、俺が慰めてやるから。俺のとこ来なよ」

そっと、頬に触れる。
それを大河が、思い切り振り払う。
しかし深雪だって負けてはいられず、振り払ってきた彼の手首を強く掴み上げた。

「離せ…っ」

今日初めて冷静さを欠いた大河の声が、深雪が得意な"最後のひと押し"へと突き進ませて。

「そうだよ大河。確かに俺たちは、何もしてない。お前の言った通りだよ。アパートには行ったけど、お前はドアを開けてさえくれなかった。
でもね、一昨日お前は、俺のでっちあげに言い返せなかったんだよ。
それはお前が、そういうことをしないっていう自信がないからだ。少なくともあの頃のお前には」
「……それは…」
「直希君、彼は相棒でもあるんだって?でも彼も、お前を疑った目をしてた。思い当たる節があるって、そういう顔してた。相棒にすら、お前は信用されてないってことだ」

そこまで言えば、大河は完全に口ごもってしまった。
そんな、大河の悲しい目が、それすら直希を想ってのことなのだと思えば、深雪のプライドがまた傷ついて。

「大河。俺は彼と違って大人だから、お前がそういう奴でも許してやれるよ?」

どんな言葉を使えば、今の大河の隙に入り込めるだろうかと考える。
もしくは、言葉じゃなく温もりならと、その手を引き寄せて……

「心の狭い男なんてさ、放っておけよ」

抱きしめようとしたのだが―――

「だからそういうとこやねんっ!!」

その言葉とともに、勢いよく突き飛ばされた。
2人分の缶コーヒーが転がって、床に茶色いシミが広がっていく。
しかしそんなこと2人は気付く余裕もなく。
驚きで目を丸くする深雪と、怒りで目を見開く大河。
大河は立ち上がって、

「俺を利用するのは最悪ええわ。けどな、アイツまで駒に使うな」

深雪の胸倉を掴んだ。

「ええか、ユキ。アイツほど心の広い人間なんて居ない。少なくとも俺にとってはな。俺の全部、アイツが受け止めてくれたから俺がここに居られるんや。
アイツが俺に愛想尽かしたのは、アイツの心のキャパの問題やない。俺がアイツの信用を失うような言動したからや。間違ってもお前が原因やないから安心せぇ」

お前が理由でフられたわけじゃないと、冷たく言い放つ。
もちろん深雪のことがきっかけだが、直希が怒ったのは、大河のいい加減さで。それだって誤解ではあるが、否定してやれなかったことが、否定する自信を失った自分が、彼を遠ざけてしまったのだ。

「お前がアイツをけなす権利ない。お前なんか足元にも及ばん。
アイツの名誉は俺が取り戻す。お前には絶対に手出しさせへん。そのために来たんや」

完全に怯んだ深雪は、何も言い返してこない。それでもまだ何か手段や言葉を選ぶように彷徨う視線が、彼のおかしなプライドを表していて。

「お前もええ歳ぶっこいてゲームなんてやめろや」
「…お、お前には関係ない」
「そうか、そうやな。お前の勝手や。
でもな、俺の大事なモンにちょっかい出すっていうなら話は別や」

そして、大河は改めて、掴んだシャツを自分に近づける。

「この期に及んで、そんなことしてみろ。そんときはな―――」

至近距離で見る深雪の怯えた目を、睨みつけて。

「俺の地位も名誉も全てをかけて、お前を否定してやるっ」

自分の何を犠牲にしたって守りたいものがあるのだと、吐き捨てた。


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