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「Hide-and-seek(直×大)」
5:Hide-and-seek

Hide-and-seek 5-5

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刻々と、過ぎていく時間。
何度も大河に電話をかけても反応は変わらず、ベッドサイドの時計が深夜1時を回ったことを確認する頃には、直希の焦りは恐怖へと変わっていた。
言い知れぬ不安をぶつけるように枕を床に投げ捨て、ベッドの上で膝を抱えて頭を抱える。
思い出すのは、ここに来てからの3日間の大河の姿。

『離せアホっ』

バスを降りて自分からマフラーをかけられて、周りに冷やかされて照れていた彼。

『直希、ガードして』

思わせぶりな深雪の行動が面白くないと訴えた自分に、深雪から守ってくれと笑顔で言ってくれた彼。
あんなに幸せだったのに。

『ちょっと待って直希。頼むから話を…』

深雪との過去の疑惑に激怒した自分に、必死で縋った彼の表情が……

『帰って』

そう自分がドアを閉めた瞬間、

『直……』

一瞬だけ見えた、自分を呼んだ彼の声が、目を背けたはずの彼の表情が、今は鮮明に浮かんで離れない。

「大河……」

明けて昨日、自分から拒絶され続けた大河の表情は、どうしても思い出せなくて。ライブ中は目を合わせても心で拒んだ自分には、彼がきっとしていたであろう傷ついた顔を、すべて見逃してしまった。
もし一度でも見ていれば、もしかしたら昨日のうちに解決できたのだろうか。彼を傷つけたことを目の当たりにすれば、きっと自分はそのままではいられなかったはずだ。
いや、昨日だって話し合うチャンスはあったのだ。春海からせっかく貴重なアドバイスをもらったにも関わらず、部屋で躊躇しているうちにあんな時間になってしまっただけで。

そして今日。
大河が終始見せていた、恐ろしいほどの真剣な眼差しと鬼気迫るオーラ。
ライブ終了後、何も言わずに控室を後にした彼。引きとめた自分に手を振ってくれた彼は、笑顔だった。
去っていく後ろ姿を見送った自分。あのとき彼は、どんな表情をしていたのだろう。あの姿を最後に彼は、まるで神隠しのように姿を消してしまった。

「帰ってこいよ…」

壁に手を当て額を押し付け、その壁の向こうに戻るはずの人を想い、必死で願う。
どうしてあのとき、一人で行かせてしまったのだ。バスが彼を置いて走り去る時点で彼が深雪と会うことを悟ったのに、どうして自分もバスから降りなかったのだ。
唯一の理解者であるはずの自分が突き放したから、また彼に一人で考えさせ覚悟させてしまった。

『大河のすべてを、俺に預けて欲しい』

指輪を贈ったあの日、自分が彼にそう言ったはずなのに。
あの言葉に頷いて指輪を受けとってくれた彼の、幸せそうな笑顔が離れない。
あの笑顔を、自分が奪ってしまうなんて……

彼が自信を失ったのは自分のせいだ。
きっぱり否定してくれた彼を、追い込むようなマネをするべきではなかった。
掴まれた手を振りほどくのではなく、掴みなおすべきだった。

『俺を振り回すのもいい加減にしろよ』

あのとき、彼に言うべき言葉はそんなものではなくて……

「愛してる……」

そんなこと、今言ったところで遅いけれど。
それでも彼に伝えたいのは、謝罪じゃなくて、その言葉で。

「愛してる、愛してる……」

祈るように何度も、繋がらないスマホを握り締めながら直希は呟いた。

もう絶対に惑わされないから。
もう絶対に突き放さないから。
だから、もう出ておいで―――





深夜1時半。
ドアや天井から容赦なく入る隙間風は、大河の体からどんどんと体温を奪っていた。
時間を見るだけで絶望が増す気がして、日付が変わったことを確認して以降はスマホすら手にしていない。

―――今、何時やろ…

あと何時間ここで過ごせば朝になるのだろうと、大河は久しぶりにポケットを探った。
しかし、かじかんだ手はスマホを握る力すら奪われていて、

「……あ…っ」

するりと落ちたそれが、扉の隙間を抜けていく。

「ちょ…待って」

意味の無い呼び止めの声をかけながら手を伸ばしても、時は既に遅く―――スマホだけが、館内へと脱出してしまった。
圏外だから持っていても意味ないとはいえ、大河は唯一外と繋いでくれる望みであるそれへと手を伸ばす。だが、小さな隙間は大河の腕までは通してくれず、指先に当たったスマホを逆に押し込む形となってしまった。

「……あぁ…」

肩を落として、手を引き抜く。扉の隙間風が妙に冷たく感じて、僅かに残った力で、大河は扉の横へと逃れた。
数歩進んだだけでも、一気に奪われる体力。完全に望みを失った今、確実に下がった体温と奪われた体力が、大河から全ての気力を消し去っていく。

―――朝まで寝るかな…

寝るのはまずいと分かってはいるけれど、正常な思考はもう働かなくて。
抱えた膝に顔をうずめると、大河は目を閉じる。
2日間体を酷使した疲れなのか、12時間以上何も食べていないが故の空腹なのか、それとも体温が下がったからなのか、一気に眠くなってきて……

「直希……」

呟いたのは、やはりその名前だった。


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~ Comment ~

はじめまして!

なのに、いきなり、ですが~携帯で想像しちゃいますよね、
 どれだけ膨らませてくれるか楽しみです

Re: はじめまして!

はじめまして!コメントありがとうございます。
直大は愛着あるカップルなんですが、実際近くに居たら鬱陶しいし面倒な奴らですよねw
今回は久々のシリアスもので、しかも長編になりそうな作品ですが、ぜひお付き合いいただければと。
現在まだ大河の遭難状態が続いていますが、見守ってやってください。
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