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「Hide-and-seek(直×大)」
6:氷点下の恋

Hide-and-seek 6-1

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【6:氷点下の恋】

深夜1時45分。

『直希!』

部屋の扉を勢いよく叩かれて、直希は駆け寄った。
望みを胸に扉を開くと、そこには陸が居た。

「桜井さんが、車で迎えに来てくれるそうや」
「え?」
「可能性は低いけど、会場開けてくれるって」

陸が深夜の迷惑を承知で念の為もう一度電話をかけてみたことで、深雪も大河がまだ戻らないことを知り、さすがにただ事ではないと感じたようだ。

「全部の空間にセキュリティかかるわけではないし、もし大河がどっかの部屋に居ったなら、警報機は鳴らないって」

もちろん、廊下に出た瞬間に一発で鳴ってしまうようではあるが。

「アイツが会場に居らんことを確認するためにも、まずは入れてくれるそうや。もし居らんかったら、周辺を車で回ってくれるって」
「桜井さんが?」
「ああ。企画責任者としても会場関係者としても、もし大河が会場に残ってたら、スタッフの確認ミスってことになるし、大変なことやって。もしそうじゃなかったとしても、それぐらいは協力するってさ」

深雪なりに責任を感じたのか、そう言ってくれたと。大河の言う通り、彼は恋愛ごとに関する往生際や根性は悪いが、人としての常識は知っているようだと陸も直希も思った。

「もうすぐホテルに着くはずや。お前、来るか?」

本来ならば直希は待機させるべきだが、陸には何故か、大河が彼を呼んでいる気がしていた。
タレント1人を連れ回したとなれば後々問い詰められるのは分かっているが、そんなものは何とでも弁解できる。だからそう提案してやれば、

「もちろんです」

間髪入れずに直希は即答し、

「すぐ着替えます」

バタンとドアを閉めた。

スーツケースから明日着るはずだったジーパンを穿き、上のシャツはそのままにパーカーだけ羽織って。コートを手に取ると、スマホと財布だけポケットに入れて、また部屋を飛び出す。
そして、その場で待っていてくれた陸と共に、ロビーへ向かった。



2人がロビーへ降りると、深雪がすでに到着していた。
陸はマネージャー陣はホテル待機にさせたようで、ロビーには誰も居ない。深雪の車に乗るのは、陸と直希だけだった。

「マネージャーやスタッフには、大河が会場をゆっくり見たがってたってことにしてある」

気に入った会場があると、次回のためにもと大河が会場全体をチェックしたがることはよくある。しかしその場合、ほとんどがメンバー全員で回るので、今回のように1人ということはあまりないのだが。今回は会場側に深雪という知り合いが居たことからも、雑談の流れで急遽大河だけ案内してもらえることになったということもじゅうぶんあり得ると、マネージャーもスタッフもそれなりに信じてくれているらしい。

「桜井さんにも、それで口裏は合わせてもらえるそうや」

深雪からしても、大河と話をしていた内容を正直に話すのは、自分の立場的にもまずくて。だから、そこも協力はせざるを得なかった。

「とにかく、大河が見つからない限りは、俺としても後味が悪いから」

深雪はそう言って、困ったように頭を掻いた。
縁を切った友人とはいえ、行方不明になどなられては、そのまま平気な顔をして暮らせるほど自分は冷酷ではない。

「俺だって、それなりに情は残ってる」

青春時代を共に過ごした同士として、それすら苦い思い出にだけは変えたくない。あの時確かに自分たちは、友人だったのだと。

「行きましょう」

とにかく今は急ぐべきだと、深雪は直希と陸を車へ促した。


深夜2時を回れば、渋滞の多い道路もガラガラで、車はほぼノンストップで走り続ける。
そんな中、車内は重い沈黙と張り詰めたような緊張感が漂っていた。

「3時半までに…」

ポツリと、陸が口を開く。
直希が顔を向けると、

「見つからんかったら、警察に頼むことにする」

陸は窓から視線は離さずにそう言った。
深雪もミラー越しに陸を見遣る。

「会場に残ってない場合、大河は自分の意思で帰らなかったことになる。
でもその場合、携帯が繋がらないのはおかしい。アイツが自ら切ったか、他の力が働いたか、どっちかや」

そして大河の性格的に、直希と約束があるのに逃げるような行動は考えにくい。だから、後者だと考えるのが自然で。

「それがどんな事情にせよ、ここまで帰れないのは普通じゃないやろ。あんまり時間はかけるべきやない」

タイムリミットは1時間半後。
岡本からも、そう言われている。

「だから直希、それまでに必ず俺たちが見つけよう」

そこで初めて、陸は直希に顔を向けた。それは決して、事を大きくしたくないとか、そういうことではなく。

「今、大河が会いたいのは、きっとお前や」

そういうことなのだと。

「このままじゃお前に合わせる顔がないって、アイツ言うてたから」
「え?」
「合わせる顔がないってことは、会いたいってことや。
だから、桜井さんとケリつけたら、真っ先に会いたいって思ったはずやで」
「…………」
「お前に会いたいから、桜井さんと会ってたんや」
「…………」
「だからアイツは絶対に自分からどこか行ったわけじゃない。恐らく、十中八九、何かに巻き込まれた。帰れない事情が出来た。
だからお前から会いに行ってやってくれ。アイツきっと待ってるから」

直希は何も言えず、陸を見つめていた。
大河に似ているせいか、まるで目の前に彼が居るようで。

『直希、早く見つけて』

大河が、陸の口を借りて、そう言ってくれているような気がして……

そして深雪は、そんな彼らの会話を黙って聞いていた。
大河が巻き込まれたであろう、何かしらの事態。連絡もできず帰れないとなれば、それは事件性が高くて。
こんなはずじゃなかった。
幸せそうな2人が腹立たしくて、彼らを少しだけかき混ぜて困らせてやろう、それだけだったのに。
人の人生まで狂わせるつもりなんて……
しかもそれは1人だけじゃなく、複数の人間の人生で。少なくともここに居る2人と、もしかしたら彼を待つ仲間たちと。

―――俺のせいだ…

もしかしたら生まれて初めて、深雪はそんなことを心から思った。
やがて車は、会場の駐車場へと乗り込んでいった。

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