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「Hide-and-seek(直×大)」
6:氷点下の恋

Hide-and-seek 6-2

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2時20分。
深雪は会場裏の社員通用口に入ると、キーロックを解除して中に入った。
そしてセキュリティを素早く解除し、陸と直希も中に招き入れる。

「会場のブレーカーと廊下の明かりは上のコントロールルームで管理しているので、これから行ってきます。数回しか触ったことないので、時間かかるかもしれないけど」

それまではこれを、と、懐中電灯を2人に手渡して。
深雪が向かっている間に、2人はまず、自分たちが使っていた控室へ走った。


非常灯と懐中電灯の明かりを頼りに辿り着いた控室は、当然扉が閉じられていた。
しかし、椅子とテーブルとホワイトボードぐらいしか無いこの部屋は、特に施錠はされていないようで。陸が手をかけると、扉はすんなりと開いた。
真っ暗な部屋の中を、2人分の懐中電灯で照らすと、

「あ…!」

直希が、何かに気づいて陸の腕を引いた。
彼の指差す方向に陸も明かりを照らせば、

「あれって…」

部屋の隅に、見慣れたバッグらしきものが見えて。
駆け寄ってみれば、それは暗闇でも、大河のバッグだと分かった。
無造作に突っ込まれているキャップも、サイドポケットから僅かに飛び出しているイヤホンも、それが彼のものであることを示している。

「やっぱりまだここに…」
「でも、廊下に出たら警報機が作動するはずやって…」

大河は深雪と喫茶スペースに居たはずで、あそこは廊下の一部だ。閉館時間を過ぎてもそこに居れば警報機が鳴るはずで、そもそも電話が繋がらないのはおかしい。
ならば一度ここに戻っていたとして、それで閉館してしまった場合も然りだ。この部屋を出られるはずがない。
そう、閉館してしまえば、どの部屋であれ出ることなど…
閉館前に誰かに会場の外へ連れ出されたとなれば説明はつくが、それは最終結論で。

「とにかく、ここに残ってる可能性にかけよう」

矛盾点を考えていたらキリがないのだからと、陸は、そこは後回しにすることにした。

「俺はメインホール側から回る。お前は、反対側から見て行って」
「わかりました」
「中央の階段前で待ち合わせよう」
「はい」

まずは1階から、と2人はその場を離れた。


大河が居そうな所だなんて見当をつけず、直希はとにかくしらみ潰しに部屋を開けた。
施錠された部屋はそもそも大河だって入れるわけがないのだから、そこは後で深雪に開けてもらうとして、まずは開いている部屋を探し回る。
しかしやはり、大河の姿は無い。
そもそも、彼が控室以外の部屋になんて入る理由など無いのだ。
時計は既に、2時37分。タイムリミットまで53分。

「大河、どこ?!」

どこかで聞いてやしないかと、大きな声で叫ぶ。
すると遠くの方からも、

『大河、どこや!!』

同じように、陸の声が聞こえて。
直希はもう一度、大河に電話をかけた。
すると―――

Prrrrrr…

電話の向こうで、呼び出し中の音が聞こえて。
電話が、通じている。
出てはくれないが、通じている。
場所を移動したのだろうか。
ならばやはりこの会場内ではなくて、別のどこかに……

その時だった。

直希の耳に、小さな音が聞こえて。それは、バイブ音だとすぐに分かった。
この音は―――
ハッとした瞬間に電話は呼び出し時間を超えて切れてしまい、そしてその音も止まった。
だから確信を持って、また電話をかける。
すると、やはりあの音が。

「大河…」

それは、間違いなく、着信を知らせるバイブ音。大河のスマホから、発せられている。

―――ど、どこ?

音のする方へ耳を研ぎ澄ませ、ゆっくりと足を進める。
そしてまた、呼び出しが切れて。またかけ直す。
そんなことを繰り返しながら、キョロキョロと見回して歩くと。
ふと、何かに目が止まった。

視線の斜め前あたり。
数メートル先に、何やらピカピカと光るものがあって。
電話の呼び出しが切れた瞬間、光は止んだ。
そしてもう一度かけると、再び光って―――
その瞬間、直希は駆け出していた。


2時40分。タイムリミットまで50分。

それは、確かに大河のスマホだった。
直希がかければ反応を示して震え、画面が明るく光り、直希の名前が表示されている。
しかし、無造作に床に落ちているそれは、持ち主の姿を照らすことは無く。落とせば音で気づくであろう固い床に転がっているのは、とても不自然に思えた。
電話を切った直希は、しゃがんでそれを手に取る。
電波が入っているこの場所が、数時間前までは入らなかったとは考えにくい。だから、このスマホが"移動"したと考えるのが妥当で。

―――考えろ、考えろ……

そう言い聞かせながら、必死で頭を巡らせる。
なぜこのスマホは、"移動"できたのだ。
大河が動かない限りそれは無理なはずなのに、大河がここに来たとなれば、鳴るはずの警報機は作動していない。

そこまで考えて、直希はふと、目の前に顔を上げた。
ここに部屋はないはずだが、何故か冷たい風を感じて。

「……?」

ゆっくりと、懐中電灯を照らす。
すると、扉のようなものが見えた。
更に上を照らせば、ネームプレートがあって。
立ち上がり、そこをピンポイントで照らす。

"用具倉庫"

控室に置きっ放しの荷物。
鳴らない警報機。
無造作に転がるスマートフォン。

―――まさか…

いや、居るはずがない。即座に直希は、自分の考えを否定した。
こんな、真っ暗な部屋に入る意味がないし、入ったとしても普通ならすぐ出るはずだ。

―――でも…

暗闇の中で、自棄に大きく見える、倉庫の扉。扉を前に、動悸が鳴り止まない。
直希は自分と彼のスマホをコートのポケットに入れると、その手を、そっとその扉に当てて。
震える手で、ハンドルをゆっくり下げた。

カチャリ

開いた扉の隙間から、刺すような冷気が流れ出してくる。だいぶ冷え切っているはずの館内が暖かくすら感じて、どうやらこの倉庫は外気と変わらないほど冷え切っているのだと分かる。倉庫とは、そういうものだ。今夜は氷点下まで気温が落ち込むはずだとニュースで言っていたから、ここもそれなりの気温なのだろう。
大きく開けて、中を照らす。それでも薄暗くてよく見えないが、天井付近からの隙間風だけは音で分かった。薄っすら見える光は月明りで、ここは外に面しているのだということも。
そして直希が照らす空間に、大河の姿は無い。中央付近でバケツが転がっているだけだ。
居るわけがないかと、直希は顔を背け扉を閉じていく。

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