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「Hide-and-seek(直×大)」
7:もう一度君に

Hide-and-seek 7-2

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「バカ…!」

鼻の先を付き合せるようにして、搾り出すような声が、直希から発せられる。

「そんな風に想ってくれる人に、俺がどうやって苦しめられるって言うの」
「なおき…」
「あれは俺の負け惜しみだよ」
「……?」
「出会ってからずっと、ひたすら追いかけて、やっと手に入れた人なのに。簡単にあの人は手に入れたのかと思ったら、悔しかったんだ」

苦労して心を手に入れて、だからこそ繋がることのできた体。それを、もうずっと昔に、簡単に暴いていた人間が居たと知って。しかも、自分が既に彼を想っていた頃に。

「俺の努力は何だったんだって、そう思ったら、抑えが効かなくなって…ごめん。俺が大河を疑うようなことしたから自信を失わせたのに、大河ばっかり責めてたよね。
そもそも大河の体は、モノじゃないのに。順番なんて関係なく、今が大事なのに。自分が最初じゃなかったって思うだけで、ムカついて」

大河に関する自分の嫉妬深さも独占欲の強さも、直希は自覚していたつもりだった。
でも実際は、もっと醜くてどす黒いものだと実感して、愕然とした。その結果、あんな言葉を吐いていた気がするのだ。

「重いよね、俺。でも大河のことになると、どうしても止めらんなくて。
だから大河が俺に愛想尽かしても、俺がそうなるなんてありえないよ」

愛情の重さに彼が音をあげやしないかと、そればかりが不安になる。
しかし、

「俺も…ありえへんで」

変わらぬ優しい声が、迷い無く発せられた。
至近距離で見つめてくる綺麗な瞳が、真っ直ぐ直希を見つめる。
温度を取り戻した手が、直希のピアスに触れてきて。

「お前、見た目がだいぶ軽そうやから、中身は重いぐらいでちょうどええよ」

そう笑いながら、直希の綺麗に染め上げられた髪にも触れて。

「それに俺、流されやすい奴やし。重いぐらいの愛情でどっしり押さえつけられてへんと、すぐどっか飛んでしまうからな。俺にはベストの重量やで」

自身の代名詞である"流されやすさ"を使って、また笑う。そこで初めて、直希からも笑みが零れた。

「そっか」

それからそっと、直希が唇を寄せる。触れ合う瞬間、大河も目を閉じた。
体温を取り戻した大河の唇は温かくて、それだけで直希はまた胸が熱くなった。

「ねえ大河、いいこと教えてあげようか」

顔は近い距離のまま、大河の右手は掴んだまま、血色を取り戻した大河の頬を撫でる。

「大河がね、俺に愛想尽かされるかもって思った瞬間て、だいたいあのときかなぁとか想像できるんだけどさ」
「うん」
「そういうとき大河って、ものすごい男気出してるんだよ」
「ん?」
「だから実際の俺は、その度に惚れ直してる」

だからこそ、独占欲や嫉妬心も強くなるのかもしれない。この人しかいないと思うから、僅かな可能性にすら敏感になってしまうのだろう。
でもその人が、自分をいい男だと言ってくれるなら。自信を持てと言ってくれるなら。自分の愛情の重さを、寧ろちょうどいいと言ってくれるなら。
もう少し、広い心を持って、彼と接することができる気がする。
だって……

「ア、アホやな////」

こうして、本気で照れてくれる彼の全てが、自分への想いを伝えてくれている気がするから。

「早く帰ろう?」
「うん」
「陸さん、遅いねぇ」
「そやなぁ」



その陸は―――

「入れんし……」

扉の前で、大きく溜め息を吐いていた。

「いつまでイチャついとんねん…」

こっちが恥ずかしくなってくるわ。と、片手で顔を覆う。
その後ろでは、深雪が困ったように頭を掻いていた。

「所構わずとはこのことですね」
「そうや。鬱陶しいやろ」
「四六時中ああなんですか?」
「どうやろな。プライベートでの2人は知らん」
「プライベートだったらもっとなんじゃないですか?」
「言うな。俺は直希を殴りたくない」
「なかなかのブラコンですね」
「悪いか」

お前にだけは言われたくないとばかりに、陸は深雪を睨みつける。すると深雪が、フッと笑った。

「大河に手ぇつけてなくてよかった。アンタに殺されるとこだったんですね、俺」

たとえ過去のことでもやりかねないだろうと、本気で思う。あのでまかせがあのまま事実として通ってしまっていた場合、実際は直希よりも兄の方が怖かったのではないかと。
だって、

「命拾いしたな。お前を朝まで倉庫に閉じ込めるところやったわ」

ニヤリと笑った陸の笑顔に、背筋がゾッとするのだから。冗談に聞こえなくておっかない。

「確かに、あなた方には関わらない方が良さそうですね。いろいろ面倒臭そうだ」

やっぱりそのまま引き下がるのは悔しくて、深雪はそんな強がりを吐いてから、

「さあ、帰りましょう。送ります」

のんびりしていると朝番の警備員も来てしまうからと、そう促した。

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