FC2ブログ

「パンドラの箱(三角関係)」
1:ガラスの絆

パンドラの箱 1-1

 ←パンドラの箱 Prologue →パンドラの箱 1-2
【1:ガラスの絆】

7月。都内某所。
POLYGON夏イベント稽古場。

「あれ?直希知らん?」

事務所内の稽古場にシャワーを終えて戻った大河は、さっきまで直希と一緒に居たはずの幸樹にそう声をかけた。

「あ~そういえば廉と一緒に、さっき出て行ったよ」
「出てった?」
「冴島が遊びに来てたじゃん?隣の稽古場にも寄ってたらしくて、さっき帰り際にまた挨拶来て。そのまま3人で」
「そうなんや」
「何、また一緒に帰る約束でもしてたの?」

よく飽きないね、と、年がら年中一緒にいる2人を幸樹が笑う。
だから大河は反論をしようとしたものの、すぐにやめて。

「まあええわ。ありがと」

それだけを答えて自分も帰る準備を始めた。

『大河、今日これで仕事終わりだろ?タクシーだよな?俺車だから送るよ。さっさと帰ろ?』

稽古前、そう言ってきたのは直希だったのに、と思いながら。

『久しぶりに泊まっていってよ』

耳打ちされたその言葉の意味を、ちゃんと理解していたから。

―――でもまぁ、今に始まったことでもないしな。

直希の気まぐれには、もう慣れた。
誘ってくるのもドタキャンするのも、忘れてしまうのも、日常茶飯事。
それでも毎回、期待をする自分が悪い。

そもそもこの関係は、不毛すぎると知っているのに。

そこを理解した上で彼と関係を続けている以上、気まぐれに振り回されるのは仕方がないのだろう。

―――惚れた弱みやな……

心の中でそう苦笑いを漏らせば、自分の愚かさを思い知る。
とはいえ、ここでいつまでも待つほど、自分もバカではない。
久しぶりに陣中見舞いに来た友人を連れ出してしまったとなれば、しばらく帰ってこないだろうし、もしかしたら自分を待たせていることすら直希は忘れているかもしれない。
後で思い出してマンションに訪ねてくれば相手すればいいし、来なければそこまでだろうと、ならば幸樹の車にでも乗せてもらおうと大河が声をかけようとすると、

「大河、送るで?」

不意に後ろから声をかけられて、大河は振り返った。

「あ、実」

しゃがんでいる大河を高い位置から見下ろしていたのは、実。大河にとって、タレント養成所入所時からかれこれ9年の付き合いになる先輩で、今やバンドメンバー。実の双子の兄・誠と共に、大河にとってこの兄弟は一番信頼している兄貴分だ。
だから大河は、

「助かった~、ホンマに?」

顔をパッと輝かせて、誘いに乗った。実が、何故大河にアシが無いことを知っているのか、疑いもせず。

「よかった。あ、もう帰る?」

バッグを持って自分も立ち上がると、

「うん、帰るで。でも、飲み物だけ買ってもええか?」

お前の分も買ってやるよ、と。財布だけ手にした実が微笑みかけてくる。そんな彼に大河が尻尾を振る子犬のようにくっついて歩き出せば、拓郎や幸田をはじめその場に居る仲間たちから笑い声が響いた。

「子守ご苦労様~~」
「俺今日、仕事まだあってよかったわ~」

お子チャマの面倒は頼むとばかりに手を振ってくる仲間たち(誠も便乗中)に、大河も手を振る。実は手を振らないまでも笑みを見せながら、大河の頭をグリグリ撫でて稽古場を出て行った。



稽古場を出た2人は、隣の稽古場からちょうど出てきた他のタレントたちと挨拶を交わしながら、一番近い喫茶コーナーへと続く廊下を歩く。
通りがかりの休憩室に大河はチラリと目をやったものの、直希も今野も冴島も居らず。

―――どこ行ったんやろ…?

どこまでおしゃべりに行ってしまったのだろうと、大河は首を傾げた。直希の荷物はまだ残っていたから、帰ったわけはないだろうが。
そんなことを思っていると、

「おまえのアシは、どこで油売ってるんやろな」

隣の実が、ボソリとそう口を開いた。

「え?」

大河が顔を向けると、

「待たせておいて何も告げずに帰ってこないとか、お前、ずいぶんナメられてへん?」

いつの間にか笑顔を消していた実が、彼特有のポーカーフェイスを向けて、ズバリと言ってくる。
実は、知っていたのだ。
稽古が始まる前、直希が大河を誘っていたことを。
耳打ちしていた内容までは理解できなかったものの、

『……うん』

小さく頷いていた大河の表情を見れば、何となくその意味すら気づく。
そして今自分を見上げてくる大河の、バツの悪そうな顔の意味だって。
自分にどうしてそんな顔をしてくるのか。それは……

「それでもアイツが好きか?」

そう、実は、

「やめとけって言うてるやろ?」

知っているのだ。

関連記事
スポンサーサイト
↓ランキングに参加しています。
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL恋愛小説へ

総もくじ 3kaku_s_L.png 短編作品
総もくじ 3kaku_s_L.png 未定(○×○)【準備中】
総もくじ 3kaku_s_L.png ★恋人たちのクリスマス(ミックス)
総もくじ 3kaku_s_L.png Hide-and-seek(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 直感(春×歩)
総もくじ 3kaku_s_L.png Assist(春&歩)
総もくじ 3kaku_s_L.png 一時停止(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png Engagement(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png アゲイン(陸×千)
総もくじ 3kaku_s_L.png Beyond Silence(W大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 恋愛プロセス(拓×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 満月の夜(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 痴話喧嘩(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 白い恋人(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png reward(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 君と見る空(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 極夜(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png シンクロニシティ(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png Stranger(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png その先へ(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 優しい嘘(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 短編作品
総もくじ  3kaku_s_L.png 未定(○×○)【準備中】
総もくじ  3kaku_s_L.png ★恋人たちのクリスマス(ミックス)
総もくじ  3kaku_s_L.png Hide-and-seek(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 直感(春×歩)
総もくじ  3kaku_s_L.png Assist(春&歩)
総もくじ  3kaku_s_L.png 一時停止(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png Engagement(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png アゲイン(陸×千)
総もくじ  3kaku_s_L.png Beyond Silence(W大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 恋愛プロセス(拓×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 満月の夜(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 痴話喧嘩(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 白い恋人(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png reward(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 君と見る空(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 極夜(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png シンクロニシティ(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png Stranger(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png その先へ(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 優しい嘘(直×大)
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  • 【パンドラの箱 Prologue】へ
  • 【パンドラの箱 1-2】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【パンドラの箱 Prologue】へ
  • 【パンドラの箱 1-2】へ