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「パンドラの箱(三角関係)」
1:ガラスの絆

パンドラの箱 1-2

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大河が何かを隠していると、実が気づいたのは、半年前。
春海と栗原のユニット"StarMine"への提供曲に関する打ち合わせで、2人でスタジオにこもっていたその日。バレンタインという日に突然呼び出された大河の、去っていく横顔に感じた違和感。その内容は、その後まもなく、大河と直希の空気で理解できた。

『バレンタインの日?俺は、大河が遊びに来たからメシ作ってもらった。ね?』

ラジオ収録中、バレンタインをどう過ごしたかというリスナーからの質問にあっさりそう答えた直希。仕事だからと大河も明るくノリノリで答えていたが、あの日彼が呼び出されたことを知る実と視線が合えば、思わず目を泳がせて視線を逸らしていた。
それがもう、実にとってはじゅうぶんなほどの答えだった。

直希と大河。一見、仲の良い気の合う相棒同士にしか見えない2人。
だから周りの仲間たちは気づいていないようであるが。
あの2人に隠された秘密を、実は、察してしまったのだ。

慕われている兄貴分の特権というか、大河の扱いは一番よく分かっている実には、誘導尋問など容易かった。大河を溺愛する兄の陸さえ知らないであろう秘密を、大河の想いを、簡単に打ち破いたのだ。
以来、実は大河を説得し続けている。
直希はやめろ―――と。

「お前には似合わん。次を見ろって」

まったくしょうがないなと溜め息をつきながらも実は、隣で俯いてしまった大河の髪を撫でて、極力軽い口調でそう言ってやる。
すると大河が、

「…わかってる」

小さく、そう答えた。

「でも今は、それでええねん」
「は?」
「向こうが俺に飽きたら、どうせ切れる関係やし」
「大河?」
「どうせ長続きなんてせぇへん。それからでも遅くないやろ?」

見上げて笑った大河は、諦めたように眉を下げている。

「アイツはアイツなりに気を遣ってくれるとこあるし。さすがはモテ男やからね、勘違いさせてくれるっていうか。確かに気まぐれで、振り回されっぱなしやけど、相棒としては100点満点やし。俺が勝手に好きになって、アイツなりにそれに応えようとしてくれてるだけなんよ。
だから、恋愛ごっこでもええから、もう少しね、俺もこの雰囲気味わいたいかな。ダメになったらすぐに、ダチに戻れる覚悟も自信もあるし」

だからそれまでは、勘違いしていたい。期待してみたい。
そう言われてしまえば、実には返す言葉などなくて。

「はいはい。そぉですか」

強がりばかり吐く大河の頭を、また撫でる。
事実を知ってしまった唯一の人間だからとはいえ、こんな話をもう聞きたくない。
大河が断れないことを承知でこんな関係を続けている直希が、実には腹立たしくて仕方なかった。
大河を想う人間など、いくらだって居るのに。
そう、ここにだって―――

「お前は、人のことばかり気にするくせに、自分のことには疎いな」

誰よりも周りが見えているその才能は仕事にだけ機能して、恋愛ごとにはからっきしらしい。そうしみじみと感じて実は溜め息をつきながら、その意味が分からずに首を傾げる大河を見てまた苦笑いを漏らした。

大河は、実の言葉の意味がいまいち理解できずにいたが、いちいち頭を撫でてくれたり笑ってくれる彼の温もりが気持ちよくて、あまり深くは考えなかった。

直希への気持ちに気づいたのは、もう3年以上前。知り合って2年半近く経った頃。
当時付き合っていた彼女とキスする瞬間に直希の顔が思い浮かぶようになって、セックスしている最中すら頭に浮かんで、気づいた気持ち。最初は愕然としたが、認めざるをえず、彼女とも上手くいかなくなり、それから半年ほどして別れた。
そして、直希とこんな不毛な関係を始めたのが、約1年半前。忘れもしない、去年のバレンタインデー。

『大河、チョコレートちょうだい』

お互いその日最後の仕事となった音楽番組の収録後、当たり前のように自分の車に乗り込んできた直希がそのままマンションまで一緒に来て、そんなことを言ってきて。
意味が分からず首を傾げた大河に直希が言ったのが、

『大河ってさ、俺が好きでしょ』

その言葉だったのだ。
そして直希に誘われるがまま、その日初めて、大河は彼と関係を持った。
それ以来、自己嫌悪と、相反する期待とに挟まれながら、大河はこの行き場の無い想いを抱えて過ごしている。

かけがえのない相棒との、秘めた関係。誰にも言えないし、知られれば軽蔑されかねない。かといって、受け入れられることのない気持ち。
その全てが実にバレたのは、半年近く前。しかし実は軽蔑もせず、大河の気持ちも理解して、傍に居てくれる。ただ純粋に心配して、適度に時間を作っては息抜きの場を作ってくれる。
おかげで大河は、実が気づいて意識的に傍に置いてくれるようになってからの自分は、だいぶ心が安らいでいるように思えるのだ。だから、

「実、俺、コーヒーとアイスが欲しい」

空気を変える様に、大河が笑顔でそんなおねだりをすれば。
実も、すぐにプッと笑ってくれて。

「はいよ。お前には甘いからな、俺」

また陸さんに怒られちゃうかな、とまた大河の頭を撫でながら、その空気転換に乗ってくれた。

それなのに―――

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