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「パンドラの箱(三角関係)」
2:想定外の温もり

パンドラの箱 2-1

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【2:想定外の温もり】

実が運転している間、大河は黙って窓を眺めていた。
結局途中でコンビニにも寄らず、実も黙って車を走らせている。
しかし、進む方向が少しだけ違ったことに大河が気がついて、

「あれ?逆やで…」

車が左に曲がったことを指摘してくる。自分のマンションは右方向だと。
だが実は、

「何や、そういうとこはちゃんと気づくんやな」

上の空かと思いきや意外と景色をしっかり見ていた大河を笑って、また頭にポンと手を置いてきた。道が違うことは、承知だと。

「今日は俺んチ来い。明日も朝はお互い稽古場やし、泊まっていけ」
「え?いや、あの…」
「着替えぐらい貸してやる。服は、今日洗っておけば明日の朝には乾いてるで」

大河から手を離してまたハンドルに手を戻しながら、実は彼らしい強引さでそう結論づけた。
このまま大河をマンションに帰せば、直希が訪ねてくるかもしれないという懸念があったし、それはほぼ確実のような気がしたからだ。そしてそうなれば、きっと大河は直希を放っておけないだろうし、いったん部屋に入れてしまえば、後は彼のペースに丸め込まれるだろうことは容易に想像できる。
だが実は、それを大河に言うことは避けた。
大河をあの男の元には絶対に返さない。それだけは確実だから、そのために必要なことを手っ取り早くするべきだ。
大河がまた、揺らいでしまう前に。

「明日はずっと都内やろ?終わったらスタジオに来い。帰り際にお前んチ寄ってやるから、着替えとか必要なモン、取りに行こう」
「へ?」
「お前はしばらく俺のところに居ったらええから」
「何言うてんの、そんなんアカンよ」
「何で?俺の部屋広いから、お前一人ぐらいどうにでもなるで」
「そうやなくて、そこまで実に迷惑かけられへんよ」

自分にだって責任があると、大河は自覚がある。大人なのだから、防げたことなのだ。

「最初から、俺がしっかりしてればこんなことにならんかった。俺が、直希を止めるべきやったんや」

自分は決して、だまされたわけではない。絆されただけなのだ。
年上として、あんな提案を叱ってやるべきだった。それなのに、叱るどころか、悪いと分かっているのにその手をとってしまったから、いろいろな災いや歪みを生み出している。

「アイツはホンマに、俺のこと助けてくれてたのに。俺が口にせんこともいろいろ気づいてくれて。その結果、俺の気持ちに気づかれてしまったけど。でもアイツはやっぱり、拒絶せんかった。
そうやっていっつも俺を無条件で肯定してくれてて、アイツなりに俺を支えてくれてたんや。ホンマに、ええ相棒やったのに」

自分の弱さが、彼とのそんな大切な絆も壊してしまった。

「だから、俺に優しくせんといて、実」

出来るだけ笑顔を作って、大河は実に顔を向ける。
自業自得の災難に、大好きな彼まで巻き込みたくなかった。もう十分巻き込んでしまっているが、これ以上は無理だと思う。
今の自分はきっと、この人の優しさに甘えてしまうから。
その証拠に今ですら、自分を気にかけてくれている実のその存在だけで、涙が出そうなぐらいに気が緩んでしまっている。
そう思って、大河が言葉を止めて唇を噛めば……

「嫌や、断る」

静かな声で、実がきっぱりと拒否をした。

「俺はお前を心配するし、優しくするし、甘やかす。それは迷惑じゃない。俺が望んですることや」

大河のおねだりや甘えは、いつもどうでもいいことに対してだけで、大事なことは全て一人で抱える人間だと実は知っている。誰かにどんなに優しくされようが、そこに付け入る人間でもないし、そのおかげでダメになったり弱くなる人間でもない。大河には、過剰に甘やかすぐらいでちょうどいい。
それを今までは直希が分かっていて支えてくれたというのならば、そんなものは自分がいくらだって引き受けてやるし、その自信も実にはあった。そもそも直希が現れるまでは、大河の一番の理解者は間違いなく自分だったはずなのだから。
直希という相棒の存在が大河にとって絶対的な価値があったことは実にも分かっているつもりだが、大河にあんな仕打ちをした時点で、その全ては裏切りに変わったのだ。信頼させておいての裏切りは、最初から敵意を持って攻撃することの何十倍も何百倍も悪質だ。

「これからは俺が傍に居る。お前は俺が支えていく」

だから自分のマンションに来いと、実は大河の手を取って握った。
それに対して大河は頷くことはしなかったが、かといって拒否することもなく。きっとまだ迷っているのか俯いたまま、

「何で、そこまでしてくれるん?」

当然のように浮かんだであろうその疑問を、投げかけてきた。
クールで他人に無関心そうに見える実だが実際は面倒見がよくて優しいし、その中でも自分のことを可愛い弟分だと思ってくれているとはいえ、ここまでしてくれるのはその域を超えているのではないか、と。
すると、実が小さく笑った。

「その話は、帰ってからな」

自分のマンションも見えてきたし、夕飯もまだで腹も減っている。そもそも、これは運転しながらする話ではない。それを自覚しているから、実はそこで話題を切った。

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