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「パンドラの箱(三角関係)」
3:パンドラの箱

パンドラの箱 3-2

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『もちろん、それだってやっぱりアイツのしてたことは最低だし、ちゃんとはっきりするべきだったんだけどさ。俺も、再三アイツにはそう言ってきたし。
有耶無耶にしたままこんな関係続けて、大河から自由を奪うようなマネしてまで自分の手中に閉じ込めていたって、関係が歪んでいくだけだぞって。いつか大河は、疲れて逃げるに決まってるぞって』
「それで、実際逃げられたら惜しくなって、取り戻しにかかってるんか。自分勝手すぎるやろ。そんな奴に俺の引っ越し先なんか教えるなよ」
『惜しいとか、そういうんじゃないんすよ』
「何が」
『俺が2人の関係に気づいたとき、俺、もうひとつ気づいたことがあって。
アイツが俺に、大河のことで思わせぶりなこと言ったりわざとらしい表現使うときって、必ず俺が、大河の話題を出したときで。それで、もしかして、って……
まさかと思ったんだけど、考えれば考えるほど、それしか考えられないことだらけでさ』

今野の言葉が、実の予感を核心へと突き進むようで。だから会話を切りたいのに、実は思わず耳を傾けてしまっている。
隠された真実への、好奇心という人間の本能が、そうさせているのだろうか。

『そこに気づいた瞬間、全部繋がったんです。
アイツが大河を手離さないのも、俺に思わせぶりなことしたのも、そうやってペラペラ白状してきたのも。悪気がないわけでも大河をナメてるわけでもないって。
だから俺、アイツにカマかけてみたら……アイツまんまと乗っかって。アホなんだ、マジで。
きっと今日も、そういう理由で、実さんの話題にも過剰に反応したんだと思う』

実と大河の仲の良さを、"取られる"なんていう言葉で表現した今野に、直希が過剰反応したのだと。

『俺も挑発するつもりなかったんだけど、ホントにアイツ、実さんの存在めっちゃくちゃ意識してて。特に最近、偶然かもしれないけど、実さんがけっこう大河を連れ出したりするじゃん?それを知る度にアイツ、何かイライラっつうか、そわそわしてて。だから寧ろ、実さんていう存在をしっかり意識させることで、アイツが焦って良い結果になるんじゃないかとか…そういう打算も、あって』
「良い…結果…?」
『これを機にはっきりしてくれれば、何の問題もないしさ。大河だって、幸せだろうし。始まりが若干不純な動機だって、結果が良ければさ、問題ないじゃない。
この関係が終わるとすれば、どう考えたって大河が疲れて逃げるときで。そのときに取り戻そうとしたって、心が離れてしまったら絶対に戻らないだろ?大河って、その辺の切り分けは意外と潔さそうだしさ』

切り捨てるときはバッサリといく、それが大河の性格だと感じるからこそ、今野は直希に忠告してきたのだと言った。

『手遅れになる前に、ちゃんとしろ。そんで、大事にしてやれって。俺、何度も言ったんすよ。
それなのに、何を怯えてたんだか知らないけど、アイツはいっつもはぐらかしてきて。何で言わないんだって訊いても、"そのうち"としか…』

そこまで聞いてしまえば、実だってさすがに、いろいろ気づく。

「アイツまさか……」

聞きたくないのに、思わずそう口に出していて。
覗きたくない真実を、知りたくない現実を、心は拒否しているのに、体は言うことをきかない。
そして、

『そうなんだ』

静かに、今野が打ち明けたのは、

『直希さ、アイツ大河にマジになっちゃってんだよ』

やっぱりの、そんな言葉。
ならば彼が今までしてきた行動は、あんなに必死で電話をかけてきたのは……
その事実が前提となるならば、

『寧ろアイツの方が夢中なんじゃないかってぐらいで…』

そういうことだ。





『お掛けになった電話は、現在電波の届かないところに居られるか、電源が入っておりません。しばらく経っ…』

何度かけても同じアナウンスが流れ、ソファを背に直希は、絶望的な思いで膝を抱えた。
最後に通じた電話は実が出て、最後通告のような言葉をかけられて切られた。それ以来、一切繋がらない。試しに実に電話をかけてみても、既に着信拒否をされていた。
もちろん大河とは、明日も稽古場で会えるのだが、

『大河のフォローなら、お前がせんでも俺がするから心配するな』

暗に"もう関わるな"と釘を刺されている以上、自分が近づこうとも恐らく実に阻止されるだろうことは、想像がつく。

『それから、しばらく大河は俺のとこに居るから、アイツんチ行っても無駄やから』

先手を打って、そんな手段にまで出てきた。
だからこそ、焦っているのだ。
あの男だけは、本気を出されたら誰よりも恐ろしいと分かっていたから。
バンドメンバー同士である以上、実の着信拒否が一時的なものだとは分かるのだが、その"一時"が解除された時には遅い。
自分よりも遥かに前から大河を知る男―――実と、大河のあまりにも親密な距離は、これまでの2人の時間を考えても固くて深いことぐらいは直希にも分かる。大河から全幅の信頼を得ている実は、同じぐらいの誠意を持って大河と接していて。相棒という特別なポジションを得ていた直希にとって、それは今までは冷静に見ていられたのだが。
自分の気持ちに気付いてからは、そうはいかなくなった。特にここ最近は、実が何かに気付いたのか、ならばどこまで気づいているかは分からなかったが、彼が大河の隣に寄り添う姿が増えて。そんな実に大河がホッとしたような顔をする度に、焦りは増していった。
だから直希は、"大河は自分のものだ"と誇示するような態度を取ってまでして、牽制をかけていたのに。

『気づけや直希。もう修復不可能やて』

突きつけられた現実と、そして同時に感じた、形勢逆転。
喫茶コーナーでの言動を考えれば、実はほぼ正確に事実を知っていたことが伺える。何故気づいたかの経緯は知らないが、いずれにしろ、出所は間違いなく大河だろう。自分が知る限り、この関係に気づいているのは今野ぐらいだったのだから。
そして電話での言動を考えれば、自分が懸念していた実の気持ちも、恐らく予想通りで。
……怖くなった。
直希の気持ちを知らない大河が、あの一件で酷く傷ついたのは、彼の言動で分かること。その状況下で、実とこれまで以上に距離を縮めれば……
そう思ったら、気づけば直希は必死で実に食い下がっていた。何を言ったかはもう殆ど覚えていないぐらい必死だったが、自分のことをだいぶ棚に上げて非難めいたことを言っていた気がする。
そんな自分に対し、

『俺はお前とは違う。一緒にするな』

それだけ答えて、電話を切った実。まもなく電源を切ったのも、恐らく彼だろう。
電話の場に大河が居たかどうかは不明ではあるが、いずれにしろ大河は実のマンションにいて、電源を切られたことだってすぐに気づくはずだ。スマホのチェックは、現代人の習慣でもあるのだから。それなのにあれから一度も電源が入らない時点で、大河もまた意図的に自分との連絡手段を切っていることは明白だ。
その後あの2人がどうなったのか、もしかしたらあの時点で何か起きてしまったのか、それを考えるだけで、直希はもう何も手がつかない。
わずかな望みをかけて今野に連絡をしてみたものの、あれから特に折り返しは無く。試しに大河のマンションまで行ってみても、部屋の電気は真っ暗だった。

『直希ぃ、お前、マジでもうそういうのやめろって。はっきり言ってやるべきだろ』

今野のあの忠告をどうして素直に聞かなかったのだろうと、今更ながら後悔に苛まれるが。自分が愚かだったとしか言いようがないし、そこは素直に認める。
しかしその結果起きてしまった出来事で、誰よりも傷付いたのは、大河で。

『俺いま…自分がすごく惨めや…っ』

彼の、あの言葉と表情と、震えていた手を思い出せば、

「大河……っ」

自分への嫌悪感で、罪悪感で、心が壊れそうだ。
大河はきっと、この1年半ずっと悩んでいたのだろうと、今更ながら気づく。
一方的な想いだと知りながらも自分との関係を続けていた彼は、きっと本当に真っ直ぐに、自分を想ってくれていた。どこかで淡い期待を持ちながら、それを支えにして、利用されてくれていた。
それを、あの一瞬で、壊してしまった。
自分のおかしな驕りや怯えが招いたあの言動は、相棒としての信頼すら壊してしまった。何も知らない大河には、ただの裏切りと思われて当然だ。いや知っていたとして、あの言い方は酷いと思う。
鉢合わせた瞬間の、大河の姿が忘れられない。絶望で呆然としていた彼の、青ざめた顔と震える体が。実が手を掴んでいなければまるで消えてしまいそうなほど、彼は儚く見えた。

「ごめん…ごめんなさい…っ」

繋がらない電話を握りしめて、ひたすらそう繰り返す。
欲張りなくせに弱虫で自己保身の強い自分の虚勢が、彼の心を砕いて、ゴミのように踏み潰してしまうなんて。
自分と向き合って支えてくれて、初めて目標を持たせてくれた人を。
大河はいつだって、彼自身を犠牲にして自分を助けてくれたのに。

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