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「パンドラの箱(三角関係)」
3:パンドラの箱

パンドラの箱 3-3

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こんなつもりじゃなかった―――


大河から向けられている気持ちに気づいた時、直希は不思議とすんなりと受け入れていた。
女の子が好きとはいえ、同性の恋愛も普通にありえると思っていたし、特に大河のように愛嬌や何とも言えない雰囲気をもつ人間が同性からもモテることぐらい知っていた。だから正直、優越感すら感じたのだ。
大河に好意を抱く奴らを出し抜いて、自分が彼の"そういう"対象になっている。そこに感じた何とも言えない優越感は、手離すには惜しすぎて。彼の好意を利用してでも、味わっていたかった。
だから自分は、言葉巧みに彼を誘い、関係を持ったのだ。

『あ…っ、なおき……』

戸惑いと羞恥に揺れながらも自分の腕の中で乱れる彼を見下ろすことは、直希にとってたまらないほどの快感で。何度も貫けば、締め付けてくるナカと仰け反る喉元のラインなんて、これまでの女なんか比べ物にならないぐらいの破壊力だった。
そもそも彼は男だから、避妊の必要もなく。自分を直接包んでくれる彼のナカは、最高に気持ちがいいし、直接包まれながら欲を放つ瞬間の開放感とそれを受け止めてくれる彼の奥深い部分は、何度でも味わいたくなる。

最初の頃は、後処理なんてものはしてやらなかった。自分でやるから大丈夫だと言う彼に甘んじて、そこは気遣ってやれていなかった。
しかし、セックスの後にそのまま2人で眠りこけて朝を迎えてしまった日。大河が体調を崩して、そこで初めて、しっかり後処理しないといろいろ大変だと知った。そして処理自体も、自らするのは苦痛だということも。
大河が我慢するタイプだということは直希も十分理解しているから、今まで彼が一人で風呂場で後処理していたのかと思ったら、可哀想になって。出した側としてそこは責任もとうと、自分が掻き出してやると申し出た日。有無を言わさず風呂場に連行した自分に、真っ赤になって抵抗しながらも最終的には身を委ねてきた大河の、その痴態にまた興奮した。
その頃にはもう、何をしても、大河が可愛いと思うようになっていて……
大河の、くしゃみひとつでも愛しいと思う頃には、

好きだと―――自覚していた。

一度自覚してしまえば、後はもう、感情は突き進む一方で。自分でも驚くぐらい、強い独占欲が沸き起こった。
そして同時に、募る不安。
大河が少しでも視線を外せばいくらでも転がっている可能性と好意を、彼の傍に居るからこそ気づかされる。
不安で、自信が持てなくて。
大事にしたいのに、優しくしたいのに、手荒いマネをしたこともある。
あんたは俺のものだ―――そう思い知らせたくて、無理強いしたことも。

『ほら大河、口でちゃんと勃たせて、これ』
『んん~~…ちょ、待っ…』

その度に彼が無理をしていたことなど、どんな顔をしていたかなど、気遣う余裕もなくて。

『大河、俺が好き?』
『う、うん……』
『ちゃんと言って』
『……好きや』

毎回毎回、彼の気持ちを確かめて、その度に繰り返される言葉を聞いて、やっと満足できた。
彼は自分が好き。自分は、彼の一番だ。彼は自分のもの。
満足すれば、余裕ができて。そこでようやく、彼に無理をさせたことを可哀想に感じて。

『ごめんね?辛かった?寄りかかって良いよ』

辛く当たった分も含めて、彼を包み込んで甘く囁いた。その時に、擦り寄るように縋り付いてくる彼しか、覚えていない。溢れる満足感で、いつも大事なことを忘れてしまっていた。
自分たちの関係が、大河にとっては彼の一方通行の想いのままだということに。
気がついたところで、"そのうち気がつくだろう"という自分本位な驕りと、打ち明けることが怖いという怯えが渦巻いて。
気持ちを打ち明けた瞬間、これまでの無理強いの理由も、都合よく振り回した理由も、当然問い詰められるだろうし話さなければいけない。今さらしおらしく打ち明けるには都合がよすぎるのは、自覚があったから。だからそれを知った彼がどんな顔をするのかが、怖かった。呆れられて、その瞬間に気持ちが離れたら、と……

『好きなんだろ?なのにこんなこと続けてたら、大河疲れて逃げちゃうぞ』

今野のそんな忠告を聞けば、余計に彼を縛りつけようとしていた。大河の足元に転がる可能性に怯えて、あまりに身勝手な理由で気持ちも告げずに彼を利用して振り回していて。
そして気づく、実という存在。
同じ気持ちだからこそ気づいた、実の想い。
一番の脅威が一番身近にあったことに、気づいて。
焦りが増せば、冷静な判断なんてできなかった。大河を繋ぎ止めるためにも、彼の周りから可能性を消すためにも、あからさまな行動をとるようになっていた。

全ては自分が、こんな不確かな関係を続けていたからこそなのに。
彼のこれまでの苦悩を、少しでも考える余裕が、どうしてもてなかったのだろう。考えてさえいれば、彼にどんなに激怒され呆れられようが打ち明けることはできたかもしれないのに。
大事な相棒から向けられている好意に気づいたときに生まれた、小さな好奇心。思わず手を伸ばしたことで、彼を苦しめて。
それにすら気づかず覗き続けた世界の中で、やっと見つけた光。彼を想う気持ち。その光を大事にして、恐れず彼に捧げていれば……今頃自分たちは、きっと幸せだったのに。

『俺もう…ええわ』

微笑んだ彼の顔は、あまりに悲しくて、だが綺麗で。

『もう、お前を好きなこと、やめる』

吐かれた言葉は、絶望的なものだった。

好きなことをやめる―――それは言い換えれば、幻滅した、失望したということだろう。自分との関係を"もういい"と言った意味も声も、呆れと脱力感が窺えた。
必死で追いかけた相手から受けた仕打ちに、期待させるだけさせておいて突き落としてきたとも受け取れるあの言動に、彼は音を上げて。

『俺いま…自分がすごく惨めや…っ』

「くそ……っ」

頭を抱えて、胸を抑える。
痛くて苦しくて、体が震えていく。
喪失感と後悔と絶望と自己嫌悪―――マイナスだらけの感情に、頭がおかしくなりそうだ。

失望は、嫌われることよりも辛いことのように思える。
彼から失った信頼も好意も、消えてしまった感情は、取り戻すことだってできない。もう存在していないのだから。

―――嫌だ…

身勝手だとは分かっている。
しかし彼だけは、失いたくない。失うことなんてできない。
簡単に手離せる人ならば、誰が出てこようが焦ったりなんてしなかったのだから。

「お願い…大河……」

スマホを握りしめてそう呟くと、直希はメッセージアプリから彼のトーク画面を開いた。

『話がしたい。お願いだから、連絡ください』

誠実な想いが伝わればと、そんな文面で、願いを込めて送信した。

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