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「★パンドラの箱(三角関係)【連載中】」
5:決意と決別

パンドラの箱 5-1

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【5:決意と決別】

「ごめんごめん、ちょっと遅くなった」

帰りがけに近所のスーパーで買物をしてから実のマンションに戻った大河は、リビングのソファでテレビも点けずに寝転がって雑誌を読んでいた実に声をかける。

「売り場のおっちゃんがな、エビに値下げシール貼ってたから、ちょっと待っとったら」

主婦のようなことを言って笑う大河に、実もプッと笑った。どんなに名前が売れようが金を稼ぐようになろうが、どこまでも庶民的な奴だと。

「で、安く買えたか?」

実も立ち上がってカウンターからキッチンを覗くと、袋から出てきたエビの値札は半額に下がっていた。

「お~、この値下げはデカいな。さっすが」
「半額やからね、多いやつ買って来た。今日はエビ祭りやね。エビチリとシュリンプサラダやわ」
「トムヤムクンは?」
「それは作れへんから無理」

バッグを放ってさっさと作りにかかろうとする大河は、視線を逸らすこともなくやましいこともあるようには見えない。
これから帰るというメッセージを貰った時間から考えると少し帰りは遅かったが、買物で時間稼ぎした程度と言われれば確かにその程度で。直希から何かしら引き止めをくらっただろうことは、あの男の行動パターンから容易に予想できるが、すぐに話をつけて帰ってきたことが伺える。
鼻歌交じりで料理をしている大河に、実も少しホッとした。ちゃんと帰ってきてくれた、と。

「手伝うよ。切るぐらいならできるで」

自分も隣に立ち、腕まくりをすれば、大河が顔を向けて笑って。

「さすが立花実」
「意味分からん」
「はは。そしたらお願いしよっかな」

材料を並べて、簡単な処理から頼んでいく大河に、実も従っていく。実だって全く料理をしないわけではないせいか、手際よく準備は進んでいって。
実がセットしておいたご飯が炊けるのと同時に、料理も完成していた。

「すげぇなお前。めっちゃ美味そう」

短い時間で大河が作ったのは、エビチリ、シュリンプサラダ、ニラ饅頭、そして余った肉ダネでササッと作ってくれた鶏だんごスープ。栄養バランスもよければ、組み合わせもバッチリだ。
大河の手料理は、実も何度も食べたことがある。ライブ中に足をケガしてあまり動けなかった時は、何度も作りに来てくれた。大河本人は趣味レベルになるほど好きというわけではないようであまり手の込んだ料理はしないが、簡単に作ってくれる料理が全て美味しいから、本当に上手なのだろうと思う。素材の下準備もしっかり頭に入っていることからしてもそうだ。幼い頃から父子家庭だったということが影響しているのかもしれないが、同じ環境で全く料理のできない兄・陸は何なのだろうと思う。

「これがカップラーメンに氷入れて食う奴と同一人物とは思えへんわ」

どういう舌構造になっているのかと実が笑えば、大河も楽しげに笑った。
大河がここに来てから2週間の中で数回作ってくれた料理の中でも、一番豪勢な今夜のメニュー。テーブルに向かい合い、20代の若者らしくどんどんと平らげていく。

「兄ちゃんとこ居候しとった頃は、年中作らされたやろ。お前やってバイトしてたんに」
「そうやね。あの人俺には"体が資本なんやから食生活管理はきちんとせえ"って言うくせに自分が滅茶苦茶やから、ハルの分も含めて結局3人分の栄養管理してたわ」
「菓子パンとカ●リーメイトばっか食っとるもんな、陸さん」
「それでも健康体とか、ありえへんわ」
「お前、けっこう体弱いもんな?」
「それみんなに内緒やで」
「ハハ…何やねんその見栄。仲間内じゃ有名やて、もう」

どうでもいい会話で笑いながら、食卓を囲む。互いにそれぞれ思うところはあるが、せっかくの料理の前で、ややこしい話はしたくなかった。
穏やかな時間。
実が与えてくれたこの空間は、大河にとって最高の安らぎの場所となっていた。
もちろん、これはただの"逃げ"だとは、分かっている。
だからこそ大河は、実に告げたいことがあった。


若い男同士、食べるスピードも早く、バカバカしい雑談をしながらあっという間に食事は完了した。
食後に、実が買っておいてくれたアイスを食べて、またバカみたいなやり取りをして。

「俺が皿洗うわ。お前そっちでゆっくりしとき」

作ってくれたお礼にと、実が流しに立った。
しかし大河は立ち上がると実の隣に立ち、

「俺も手伝う」

ふきんを手に、洗った皿を片付けるスタンバイをする。

「ええのに」
「2人でやった方が早く終わるやんか」

だからほら、と流しの皿を示せば、実は笑って洗い始めた。
特に会話がないままの時間は、実が無口だからといえばそうかもしれないが、大河にはちゃんと分かっていた。
これは、実が何か話しの切り出し方を迷っているものだと。切り出すべきか、否かと。
だから、

「実、ええよ、訊いて」

大河は自分から切り出してやった。

「直希と何かあったかって、訊きたいんやろ?」

はっきりと言いながら、実から皿を受け取ったついでに見上げる。
実もまた、大河をジッと見下ろしてきた。

「……何かあったか?」

若干の間を置いてからそう口を開いた実は、完全に手が止まっている。それに気づいた大河は場所を移動すると、

「やっぱ俺が洗う。実、そっちで拭いて」

ふきんを彼に手渡して体を少し横に押しやり、自分がどんどんと洗い物を始めた。
実の視線がこちらに向いていることは知っているから、自分もまた、話題を逸らすことなく話を続ける。

「あったで、アイツと」
「……え?」
「好きやって、言われた」

手を止めることなく大河が淡々とそう告げれば、反して実は隣で固まった。

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