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「★パンドラの箱(三角関係)【連載中】」
5:決意と決別

パンドラの箱 5-2

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「好きやなんて、アイツから初めて言われた。驚いたわ」

ハハっと大河が笑っても、実は何も言葉を返してこない。
実は、内心ガックリと項垂れていた。
自分が知っていて大河に教えてやらなかったこと、それを直希は自ら言ってしまったのかと。ここ数日は大河を刺激しないように様子を伺っていた様子の直希だったが、あれ以来初めての2人きりの空間で、我慢の限界を超えたのかもしれない。稽古場での自分と大河のやりとりを見てきた視線や表情からも、実はそれが予想できていた。
仲間としては今までどおり扱われて、気にかけてももらえて、逆に大河との距離を感じたのかもしれないと、実はかなり正確にそう理解していた。他のものが何も変わらなければ、変わってしまったものは余計に浮き彫りになるというものだ。

「……お前は、嬉しかったか?」

落ち着けと心の中で言い聞かせながら、静かに問う。
すると大河はチラリと実を伺い、

「まあ、好きって言われて嫌な気はせえへんよね。しかも、好きやった相手やし」

やっぱり軽い口調のまま、そう答えた。
しかし大河は、実が本当は何を訊きたいのか知っているから、自分からその先を口にした。

「でも俺、綺麗さっぱりフってきた」
「え?」

あっさりと吐かれたその言葉に、実が驚いたように顔を向ける。
大河はまたチラリと実を見てから笑うと、再び皿を洗い出して。

「アイツは、ホンマに俺が好きなわけじゃない。ただの意地や」
「意地……」
「そう、意地。それが、好きって気持ちと勘違いさせてるだけ」

大河には、直希の行動がそうだとしか思えない。

「アイツと関係持って1年半、いや、気持ちに気付いてからやから3年ぐらいになるんかな、アイツを好きでいたけど。追いかけて追いかけて、それでもアイツはいっつも遠いところに居て。そのうち、姿も見えなくなって……それでも必死で探してたけど、アイツは一度も引き返さなかったし待ってもいなかった。だからアイツが俺を好きなわけがない」

必死で追いかけた恋は、一度も距離が埋まることはなかった。広がる一方だった。

「ちょっと試しに立ち止まってみたら俺が追いかけてこなくなっていて、なんとなく勿体無い気分になっただけやと思うわ」
「大河……」
「アイツにも、ハッキリそう言った。そしたら納得したみたいやで」
「え?」
「何も反論しなかったし、諦めたようなことも言うてたわ」
「まさか……」

実には、俄かに信じ難い話だった。あれだけ食い下がってきて、あれだけ意気消沈してミスも連発するような直希が、大河にピシャリと言われたからってあっさり引き下がったなんて。
しかし大河は軽く笑うと、

「そんなモンやって」

最後の皿を実に渡した。
そして体ごと実に向く。

「それに俺は、直希のとこには戻らない」

たとえ好きだと言われても、どんな甘い言葉を囁かれようとも。

「そのぐらいの決心がつくようになったのは、ここに置いてもらえたおかげや」

直希との接触を避け、ここで実との穏やかな時間を過ごしたからこそ、直希の告白にも流されずに帰ってこれたのだと。
咄嗟の逃げ場として、実の優しさに甘えて居着いた場所だったが、この2週間でどれだけ救われただろうと大河は思うのだ。

「だからもう大丈夫。明日、自分チに戻るね」

直希ももう手を引いたことだし、何も問題は無い。

「これからは実と、ちゃんと向き合いたいから」

何かに逃げながらではなく、通常の環境下で。
大河がそう告げれば、実は目を丸くした。
自分のマンションに帰るという大河の言葉から、そんな続きが聞けるとは思っていなかったから。

「俺、実がホンマに好きや」
「大河?」
「だから、実と同じ意味でも、好きになりたい」

そっと、実の手を握る。
真っ直ぐ見下ろしてくる切れ長の瞳は、いつだって大河にとって心強いもの。好きだという気持ちを告げることなく見守ってくれていたこの人の気持ちに、応えられたらと、切に思う。

「少しずつやけど、実の気持ちに近づいていきたいって思うよ」
「大河……」
「だからそれまでは、俺に好きやって言わんといて」
「へ?」
「俺調子に乗るから、俺も同じ気持ちになるまでは、甘やかさんといて欲しい。
俺も実好きになったら、今度は俺から言う。だからそのときまだ実が俺のこと好きやったら、そしたら付き合って」

大河がそう告げれば、実はまだ黙ったまま、しかし握り締められた手を握り返してきた。
本当に、大河らしい言葉だと思う。
決して、他人の好意を軽く扱ったりしない。貴重なものとして受け止めて、真剣に考える。応えたいと思えば、一生懸命に応えようとしてくれる。
愛しいと、改めてしみじみと感じた。
この存在を、このまま奪ってしまいたい、と。
直希の想いへの認識も、大河がそう判断したならそのままでいいのではないかと―――

「ええよ。そうしよう」

握り返した手を引き、反動で前に踏み出してきたその体を抱きしめる。
そうすれば、すんなりと背中に回される腕。
胸元に頭を押し付けるように、何度も撫でて。

「でも俺は気が短いから、なるべく巻きでな」
「アハハ。そっかぁ」

実らしい返しに、大河が笑う。
実も笑い、互いにぎゅうぎゅうと抱き合ってから、どちらからともなく体を離し見つめ合って。

「コーヒーでも飲むか?」
「…うん」

そしてもう一度、ギュッと抱き合った。

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