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「パンドラの箱(三角関係)」
7:幸福の選択

パンドラの箱 7-3

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「ホンマにもう、頼むで」

直希の言葉がいちいち惚気に聞こえてきて、実は苦笑いでそう告げると、大河の腕を引いて一緒に立ち上がった。そして直希にも手を差し出してやり、

「ほら、もう立て。聞けば聞くほどムカつくわ」

さっさと話を終わらせようと、彼を立ち上がらせる。
そして隅に放っておいた2人分のバッグを取って戻り、直希に押し付けて。そのまま視線をずらせば、ジッと見上げてくる大河と目が合った。

「実…」
「ん?」
「……いや」

ここで何を言っても、きっと実には辛いだろうと感じたのか、大河は言葉を切って首を横に振る。そして何かを言う代わりに、彼は綺麗に微笑んだ。
実にはそんな大河が、やっぱり愛しくて、可愛くて。

「またメシ作ってな?」

同じように微笑みながらそう言って頭をグリグリと撫でてやれば、大河も「うん」と頷く。そんな自分たちを見つめる直希が、不満そうな顔をしているのが分かって、

―――そんな顔したって無駄じゃアホ

兄弟分の関係性まで邪魔されてたまるかと、実は心の中で悪態をついた。
そもそも、結果的に自分から大河を奪ったくせに。
それが少しだけ、いやぶっちゃけかなり、悔しかったから。

「大河」
「ん?」
「今日のお礼、もらってええか?」
「へ?あ、うん」

ワケが分からないまでも、自分の提案に大河が頷いたことを確認してから。

「じゃあ、遠慮なく」

フフッと笑った実は、大河の頬に手を伸ばして。
迷わず、唇を重ねた。

「―――っ!?」

驚いた大河は、抵抗すら忘れて目を丸くしている。隣で直希もまた、呆然としていた。
実は気にせず、目を閉じて、彼の唇を舌でノックして。

「……んっ…ん~…はっ…」

苦しくて口を開けた大河を見計らい、するりと舌を滑り込ませた。
何度も角度を変えながら、彼の口内をしっかりと味わって。
これが最後だろうと思えば、チクリと胸が痛んだが……

「な…何してんだよ!」

いきなりの怒号と、同時に思い切り引き離された大河の体に、切なさも一気に吹っ飛んだ。
我に返った直希が、立ちはだかるように間に割って入って、大河を抱きしめている。

「何すんねん、ええとこやったんに」
「はぁ!?」
「まさか今日が最後になると思わんかったんや、キスの1回ぐらいじっくりさせろや。殴る代わりに、これぐらいええやろ?」

ニヤリと笑って直希を見遣った実は、直希を挟んだ先に居る大河に「なぁ?」と同意を求める。
だが直希はその視線からも大河を隠すようにすると、

「殴ってくれた方がだいぶマシだ」

きっぱりとそう言いながら、"現役ヤンキー疑惑"のタネともいえる睨みをきかせてきた。
いちいち期待通りの反応を見せてくれる直希の単純さに、実はもう、心からの笑い声を上げて。

「ハハハ。お~怖っ」

トンでもないライバルだなと、いつもの飄々とした態度で2人の前を通り過ぎていく。
部屋の通路に消える間際、飲みかけだった缶コーヒーを一気に飲み干してゴミ箱に放った実は、

「そしたら俺帰るから、お前らも、追い出される前にさっさと出てやれよ?」

振り向き様にそう告げてから、

「それから大河、今日の夕飯の約束は、無しな?」

律儀な大河のためにそこは念のためはっきりしておこうと、そう付け足してから部屋を出て行った。

残された2人は、実の姿が消えてもしばらくそのまま立ち尽くしていて。直希の腕からスッと大河がすり抜けたことで、直希も彼に視線を戻した。

「俺らも、帰ろう」

実の言う通りいつまでもここに居るのはまずいからと、大河が促す。スタッフが片付けにくる前に出払ってやらないと、彼らも迷惑だろうと。

「うん」

頷いた直希はバッグを肩に掛け、荷物は車においてきたらしき手ぶらの大河と並んで、歩き出す。

「大河、メシ、一緒に食おう」
「……そうやね」





駐車場に着いて車に乗り込んだ実は、シートに座った途端、はぁ…と大きな溜め息をついた。

―――やっぱ俺、アイツに甘いわ…

フッと笑って、頭を掻く。
こんな風に自分がお人よしになれるのは、相手が大河だからだ。彼じゃなければ、身勝手だろうが卑怯だろうが、自分に有利な手段をとっただろう。人はワガママな生き物だし、今回の状況的に、たとえ自分がその手段をとったって誰も責めなかったはず。そして時間が経てば、相手の気持ちを自分に向かせることだって、可能だったかもしれない。
それが出来なかったのは、大河だから。
誰に対しても正直で優しくて、いつも相手の幸せを願ってくれる彼だから。自分が彼の幸せへの鍵を掴んでいるのなら、遠い先の話よりも目の前にそれがあるのなら、与えてやりたくなってしまう。

―――惚れた相手が悪かったわ

いい奴すぎてタチの悪い片想い相手だと、また笑って。もう一度大きく息を吐いてから、エンジンをかけて車を出した。
のんびりしていたらあの2人が来てしまう。見せ付けられるのは、今日はさすがにもう勘弁だ。





実の車が駐車場を去ってから数分後、大河と直希もそこに訪れていた。
互いの車が少し離れて停まっているため、手前にあった大河の車の前で一度立ち止まる。

「メシ、どうする?」
「どこでもええよ」

まだ少し気まずいのか伏せ目がちの大河は、ポケットに手を突っ込んで視線を泳がせている。そんな彼は、話が滞れば"じゃあまた次の機会に"と言い出しかねないようにも思えたから、

「じゃあ、俺んチで食べない?」

顔を覗き込んで、直希は彼の腕をそっと掴む。
すると大河は一瞬答えを迷ったが、

「……うん」

チラリと直希を見上げ、小さく笑って頷いた。
それだけでホッとして、直希にも笑顔が出て。

「また後でね」

別々の車で向かうことすら惜しいけれど仕方がないので、自分の車へと向かった。


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