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「恋人たちのクリスマス(ミックス)」
後編:それからの一件

恋人たちのクリスマス 後編-2

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<(引き続き)Side-Riku>
その瞳が俺を映したことに、少しだけ安堵する。

「陸…さん?」
「どうした?気分悪いんか?」

ハルがいる手前、ギリギリ怪しまれないラインの優しい声で訊いてやれば、少し目を細めた有介がコクンと頷いた。

「ちょっと、悪酔いしたかも…」

えへへと力ない笑顔を見せつつも、遠慮がちに俺の胸に頭を預ける姿が、心細さを示しているようで。頭を撫でてやりたい衝動を必死で堪えた。

「顔色が悪いな、確かに」

眉を寄せたまま唸っている有介の前髪をよけてやりながら、そのまま額に手をやってみる。

「熱はなさそうやけど…」

そしてまた顔を覗き込めば、相変わらず青い顔はしているが、俺が駆け付けたときよりは落ち着いたようにも見える。単純に、一瞬立ち眩みを起こしただけなのかもしれない。
マネージャー呼び出して病院へ連れていくほどでもなさそうやと、本人の言う通り悪酔いしただけなのだろうと思いながら、有介の体を少し起こしてやる。するとハルも気づいて、さっと手を伸ばして手伝ってくれた。

「ありがとなハル。お前が連れ出してくれたんやろ?」
「あと大河もね。つうか、脱出作戦練ったのは大河や」
「え?」
「俺が気づいたのは30分ぐらい前で、そんときすでにチダちゃんがフラフラしてたんよ。そしたらみるみるうちに顔が蒼くなって。おかしいなって思って…。そしたら大河も気づいてこっち見てて…」

くそっ、気付かんかった。
またもや大河に先越された(←以前大河が部屋に連れ込んだ件を根に持ってる)。
自分が気づいてやれへんかったのは百も承知の上で、いちいち先手を打ってくる大河に思わず悔しくなってくる。
だが、

「あのな陸兄、チダちゃん、調子悪かったのかって訊いたら"良くはなかった"って答えたんよ。最近SQUAREのスケジュールが立て込んでたってアキから聞いてたけど、それに加えてチダちゃんドラマとかやっとったし、疲れが溜まってるんと違うかな」
「そうかもな。少し休ませるように川口にも伝えとく」
「うん。あ、そうや、陸兄もいっつも忙しそうやけど大丈夫?」
「え?あはは。俺は大丈夫やで」
「ならええけど。大河が、心配しとったから」
「大河が?」
「陸兄の休みが全然無い気がするって。久しぶりに顔見たら痩せた気がして心配やって」
「……そ、そうか」(←内心は超嬉しい)

有介だけではなく俺の心配までするあたりが、大河がちゃんと周りを気遣っている証拠で。これは先を越されても文句は言えないかと、つい数十秒前に"悔しい"と思った自分を戒めた。
もちろん、普段の俺と有介には一定の距離感が必要やし、ユニットメンバーである大河が先に手を回すのも自然な流れと言えばそうなのかもしれない。いや、そうなんやろうと思うことにして、

「ホンマ、世話かけたなハル。とりあえず部屋連れて帰って、様子みるよ」

自分の立場的にここまでしてええもんかと思いつつ、でもこの状態の有介を誰かに任せていくのは絶対にできないから、ハルが疑う隙も与えないぐらいに当たり前の顔をして、俺はそう言った。
他事務所のハルよりも、同じ事務所の先輩である俺の方がふさわしいやろ、みたいな。
するとハルが、俺の望み通りすんなりと頷いて、

「そうやね。陸兄の方がチダちゃんも気兼ねせんやろし」

と微笑む。
その意味が分からず俺が首を傾げると、

「ホンマ、慕われとるんやね陸兄。チダちゃんな、ずっと陸兄にSOS出してたんやで?」
「…え?」
「プロデューサーなんてさ、普通めっちゃ緊張する存在やのに。陸兄が担当してる他の子たちは知らんけど、少なくともPOLYGONの奴らは皆、陸兄居ると安心した顔するもんね」

自分も所属していた時はそうやった、と、ハルが笑う。

「チダちゃんも陸兄に懐いとるってのは有名やし。そんな懐かれて、ええなぁ?」

それは、夏に騒ぎになった週刊誌の件を指しているであろうことは、ニッと笑ったハルの顔で分かる。しかしハルは、俺と有介の関係という、あの騒ぎの真相を知らんから、単純に週刊誌ネタでいじってる程度のつもりなんやろうけど。
ただ、いずれにしても、

「それで千田が、俺に助けを求めてたって?」

どんな風にであれ俺を"慕う"有介が、この状況下において俺に縋ったことは事実のようやから、思わず再確認してしまえば、

「うん。ずっと陸兄のこと見てたで」

迷わず頷いてそう答えたハルと、バツが悪そうに視線を逸らす有介。
普段は完璧なまでに俺との距離感を作る有介がそこまでしたとなれば、気づいてやれなかったことに対しての後悔が再燃するが。
まるでいたずらがバレた子供のような有介のその表情が可愛くて、俺は思わず笑っていた。

「懐かれるのは、プロデューサーの喜びのひとつやね」

この流れなら不自然でもないやろと、有介の頭を軽くひと撫でする。そしたら無意識に顔を赤くするから、表情には出さずに内心慌てながら、俺はその顔をさりげなく隠してやった。

「じゃあホンマ、これで戻るわ」

ゆっくりと有介を立たせてやって、俺はエレベーターのボタンを押す(←結局一度スルーしてしまった)。すると今度はすんなりと下り始めているようで、まもなく到着した。

「ありがとなハル」
「ハルさん、ありがとう」

俺に続いて今度は有介もそう言って、律儀にペコリと頭まで下げる。それをハルは笑顔で手を振りながら頷いて、

「あ、そうや陸兄」

エレベーターが閉まる直前、何かを思いついたのか俺を呼び止めたハルが、

「何?」
「あのな?」
「?うん」

ニヤリと笑って言ったのは———

「2人、お似合いやで」

そして扉は閉じてしまった。
ハルが、人差し指を口元に立ててくれていたのは、"秘密は守る"ということやろか…?
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<(引き続き)Side-Riku>
その瞳が俺を映したことに、少しだけ安堵する。

「陸…さん?」
「どうした?気分悪いんか?」

ハルがいる手前、ギリギリ怪しまれないラインの優しい声で訊いてやれば、少し目を細めた有介がコクンと頷いた。

「ちょっと、悪酔いしたかも…」

えへへと力ない笑顔を見せつつも、遠慮がちに俺の胸に頭を預ける姿が、心細さを示しているようで。頭を撫でてやりたい衝動を必死で堪えた。

「顔色が悪いな、確かに」

眉を寄せたまま唸っている有介の前髪をよけてやりながら、そのまま額に手をやってみる。

「熱はなさそうやけど…」

そしてまた顔を覗き込めば、相変わらず青い顔はしているが、俺が駆け付けたときよりは落ち着いたようにも見える。単純に、一瞬立ち眩みを起こしただけなのかもしれない。
マネージャー呼び出して病院へ連れていくほどでもなさそうやと、本人の言う通り悪酔いしただけなのだろうと思いながら、有介の体を少し起こしてやる。するとハルも気づいて、さっと手を伸ばして手伝ってくれた。

「ありがとなハル。お前が連れ出してくれたんやろ?」
「あと大河もね。つうか、脱出作戦練ったのは大河や」
「え?」
「俺が気づいたのは30分ぐらい前で、そんときすでにチダちゃんがフラフラしてたんよ。そしたらみるみるうちに顔が蒼くなって。おかしいなって思って…。そしたら大河も気づいてこっち見てて…」

くそっ、気付かんかった。
またもや大河に先越された(←以前大河が部屋に連れ込んだ件を根に持ってる)。
自分が気づいてやれへんかったのは百も承知の上で、いちいち先手を打ってくる大河に思わず悔しくなってくる。
だが、

「あのな陸兄、チダちゃん、調子悪かったのかって訊いたら"良くはなかった"って答えたんよ。最近SQUAREのスケジュールが立て込んでたってアキから聞いてたけど、それに加えてチダちゃんドラマとかやっとったし、疲れが溜まってるんと違うかな」
「そうかもな。少し休ませるように川口にも伝えとく」
「うん。あ、そうや、陸兄もいっつも忙しそうやけど大丈夫?」
「え?あはは。俺は大丈夫やで」
「ならええけど。大河が、心配しとったから」
「大河が?」
「陸兄の休みが全然無い気がするって。久しぶりに顔見たら痩せた気がして心配やって」
「……そ、そうか」(←内心は超嬉しい)

有介だけではなく俺の心配までするあたりが、大河がちゃんと周りを気遣っている証拠で。これは先を越されても文句は言えないかと、つい数十秒前に"悔しい"と思った自分を戒めた。
もちろん、普段の俺と有介には一定の距離感が必要やし、ユニットメンバーである大河が先に手を回すのも自然な流れと言えばそうなのかもしれない。いや、そうなんやろうと思うことにして、

「ホンマ、世話かけたなハル。とりあえず部屋連れて帰って、様子みるよ」

自分の立場的にここまでしてええもんかと思いつつ、でもこの状態の有介を誰かに任せていくのは絶対にできないから、ハルが疑う隙も与えないぐらいに当たり前の顔をして、俺はそう言った。
他事務所のハルよりも、同じ事務所の先輩である俺の方がふさわしいやろ、みたいな。
するとハルが、俺の望み通りすんなりと頷いて、

「そうやね。陸兄の方がチダちゃんも気兼ねせんやろし」

と微笑む。
その意味が分からず俺が首を傾げると、

「ホンマ、慕われとるんやね陸兄。チダちゃんな、ずっと陸兄にSOS出してたんやで?」
「…え?」
「プロデューサーなんてさ、普通めっちゃ緊張する存在やのに。陸兄が担当してる他の子たちは知らんけど、少なくともPOLYGONの奴らは皆、陸兄居ると安心した顔するもんね」

自分も所属していた時はそうやった、と、ハルが笑う。

「チダちゃんも陸兄に懐いとるってのは有名やし。そんな懐かれて、ええなぁ?」

それは、夏に騒ぎになった週刊誌の件を指しているであろうことは、ニッと笑ったハルの顔で分かる。しかしハルは、俺と有介の関係という、あの騒ぎの真相を知らんから、単純に週刊誌ネタでいじってる程度のつもりなんやろうけど。
ただ、いずれにしても、

「それで千田が、俺に助けを求めてたって?」

どんな風にであれ俺を"慕う"有介が、この状況下において俺に縋ったことは事実のようやから、思わず再確認してしまえば、

「うん。ずっと陸兄のこと見てたで」

迷わず頷いてそう答えたハルと、バツが悪そうに視線を逸らす有介。
普段は完璧なまでに俺との距離感を作る有介がそこまでしたとなれば、気づいてやれなかったことに対しての後悔が再燃するが。
まるでいたずらがバレた子供のような有介のその表情が可愛くて、俺は思わず笑っていた。

「懐かれるのは、プロデューサーの喜びのひとつやね」

この流れなら不自然でもないやろと、有介の頭を軽くひと撫でする。そしたら無意識に顔を赤くするから、表情には出さずに内心慌てながら、俺はその顔をさりげなく隠してやった。

「じゃあホンマ、これで戻るわ」

ゆっくりと有介を立たせてやって、俺はエレベーターのボタンを押す(←結局一度スルーしてしまった)。すると今度はすんなりと下り始めているようで、まもなく到着した。

「ありがとなハル」
「ハルさん、ありがとう」

俺に続いて今度は有介もそう言って、律儀にペコリと頭まで下げる。それをハルは笑顔で手を振りながら頷いて、

「あ、そうや陸兄」

エレベーターが閉まる直前、何かを思いついたのか俺を呼び止めたハルが、

「何?」
「あのな?」
「?うん」

ニヤリと笑って言ったのは―――

「2人、お似合いやで」

そして扉は閉じてしまった。
ハルが、人差し指を口元に立ててくれていたのは、"秘密は守る"ということやろか…?

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総もくじ 3kaku_s_L.png SS
総もくじ 3kaku_s_L.png Turning point(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 悪魔たちの狂想曲(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 立ち入り禁止(誠×風)
総もくじ 3kaku_s_L.png Old flame(実×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 最愛2(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 最愛(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png COOL(実×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 女は災い(陸×千)
総もくじ 3kaku_s_L.png 交差点(実×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 恋人たちのクリスマス(ミックス)
総もくじ 3kaku_s_L.png Hide-and-seek(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 直感(春×歩)
総もくじ 3kaku_s_L.png Assist(春&歩)
総もくじ 3kaku_s_L.png 一時停止(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png Engagement(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png アゲイン(陸×千)
総もくじ 3kaku_s_L.png Beyond Silence(W大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 恋愛プロセス(拓×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 満月の夜(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 痴話喧嘩(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 白い恋人(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png reward(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 君と見る空(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 極夜(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png シンクロニシティ(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png Stranger(直×大)
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総もくじ 3kaku_s_L.png 【あとがき・雑記】
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