「その先へ(直×大)【連載中】」
1:告白

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【1:告白】

『まもなく当機は、成田国際空港に着陸致します……』

機内アナウンスが流れ、大河は目を擦りながら窓に目をやった。

「お客様、ひざかけとヘッドホンを回収致します」
「あ、すいません…」

CAに声をかけられて慌ててひざ掛けとヘッドホンを返して、結局飲まなかった水をグイッと一気に飲む。
時差ボケに完全にヤラれたのか機内でも熟睡ができず、浅い眠りを繰り返していたせいか、自棄に眠い。2時間前に出された昼食代わりの機内食も断ったせいか、空腹で力も出ない。
次の仕事があればマネージャーが迎えに来てくれることも多いが、今日はこのまま帰るだけだからそれも無く(←送り迎え無しが原則の事務所)。だからいつものようにタクシーで帰らなければならないはずだったが……今日は違う。

『明日は俺もオフだから迎えに行く。着く時間教えて』

直希からそんなメッセージが入ったのは、現地でホテルを出る直前。
日本は深夜近いが直希はまだ仕事先だったようで、合間を見て連絡を入れてくれたようだ。

『順調なら13時ぐらいかな。でも成田やから、来なくてええよ。お前まだ現場なんやろ?明日はゆっくり休みな』

空港へ向かうタクシーの中でそう返せば、すぐに着信があって。

『もう帰るところだから大丈夫だよ。明日行けるから、着いたら連絡ちょうだい』

自分も男なのだからそんなに大切にしてくれなくてもいいのに、と思うものの、こういうときの迎えは嬉しくて。

『ありがとう。助かる』

返信しながら、少しだけ顔が緩んだ。

しかし。

この直希に最近抱いている、微かな疑念が頭をよぎって。
日本に帰って久しぶりに会えば意外とあっさり解決するのか否か、大河は少しだけ不安になった。


『ずっと、こうしたかったんだ』
『大河の中に、入りたい』

そう言われて大河が直希と体を繋げたのは、3週間前。
あの日彼は、痛みに顔を歪めた大河を気遣いながらも、激しく自分を求めて。
大河もまた、痛みの先で訪れた快感に溺れながら、直希を受け入れた。

『本物の大河は、俺の想像の斜め上いってるよ』
『ヤバイぐらい、気持ちいい』

蕩けるような瞳で自分を見つめながら、いちいち甘い言葉を囁かれて。
シャワーに立てなくなるほど、何度も打ち付けられた。

『すっげぇ良かったよ、大河……』

眠りに入る直前、大河はその言葉を確かに聞いたのだ。
だが―――

彼とは、今日まで"それっきり"だ。


あんなに自分を求め、最高の気分だと言ってくれた人が、軽いキスと抱擁以外、何もしてこない。
大河が日本に居る間は、イベントやらバンド活動やらで仕事も一緒だったし、仕事が終われば毎日のように互いの部屋を行き来したにもかかわらず、だ。

最初の1週間は特に気にならず、10日目あたりからおかしいと思い始めて。
2週間が経つと、不安になった。
気になることも腹立つことも心配事も何でも口に出せる大河だが、不安やショックな感情が絡むと、一気に抱え込んでしまう性格で。
そんな大河が一人でひたすら考えることは、ひとつ。

もしかして直希は、嫌なのではないか―――。

あの時は感情が昂ぶっていて快感を感じたものの、一旦冷静になった瞬間、引いてしまったのだろうかと。
そんな想いを抱えたまま、大河は先週、ユニットのイベントが終わると同時に、テレビのロケでアメリカへ飛んだのだ。


複雑な思いを抱えて降り立った日本。
途中上空の気流の乱れや悪天候で、結局予定より1時間以上遅れた着陸となってしまった。
到着ロビーでスタッフたちと現地解散した大河は、スマホの通信を切り替えてメッセージアプリを開く。予想通り、直希からメッセージが入っていた。彼は1時間半前には着いているようだ。
申し訳なかったなと思いながら電話をかけると、すぐに通話は繋がって。

『大河?』
「おお。ごめんな遅れて。今着いたで」
『どこに居る?』
「直希が居るとこ行くわ、どこ?」
『第2ターミナルでいいんだよな?到着ロビーにス○バがあるんだけど…』
「ああ、あれか。もう見えてるから今行くわ」

気を利かせて近くで待っていてくれたようで、大河はすぐ近くに見えるカフェへと歩いた。
真っ直ぐ向かっていると、一人の人物が席を立つ。
背が高いからすぐ分かるその人物は、大河の姿を確認すると嬉しそうに笑顔を見せて、足早に向かってきた。

「お帰り」

サングラスを外した彼―――直希が、優しい笑顔を見せる。
遠目から見ても気付いた変化は、近くで見ればはっきりと分かって。

「お前、また染めたんか」

先週まではせっかく黒っぽくしていたはずの髪の毛は、明るい茶色に染まっていた。

「ドラマ撮影終わったし、思い切って染めちった」
「お前、結局またチャラくなっとるやんか」

しょうがないなぁと大河が笑うと、直希は目を細めながらジッと見て、

「良かった」

ポツリと呟く。

「え?」

何がだろうと首を傾げた大河の手に、さりげなく触れて。

「なかなか着かないから、心配した」

この場で繋ぐことはできないせいか、そのまま大河のスーツケースに手をかける。
着陸が遅れている旨はアナウンスされていたのだが、詳しい内容はあまり聞き取れず、ただただ待つしかできなかったのだと。
些細なことでも自分を心配してくれる直希に、大河は、仕方のないこととはいえ申し訳なくなった。
もしも自分が彼の立場だったら確かにそうだと、そう思うと、なんだか可哀相で。
しかしここまで想われていることが、この3週間の不安を少し和らげもする。
少なくとも彼の気持ちは、きっと変わっていないのだと―――

「疲れた顔してるね。早く帰ろう」

自然の流れでやはりさりげなく背中に手をやった直希は、大河の荷物を持ったまま歩き出す。大河も彼に続き、とりあえずボディバッグだけは自分で背負って歩き出した。
歩き出してすぐ、自分からスッと手を離した直希の行動は、公然の場であれば当然なのだが……



その異変は、エスカレーターで2階へ上がり、駐車場に着いたときに感じた。
ターミナル直結の駐車場はすぐで、出入口から少し離れたところに停まっている直希の車まで歩く途中。

「お…っ?!」
「え?あ、大河…っ」

何かに躓きかけた大河に気付いた直希が、空いてる腕で抱え込むように支えてくれたのは良いのだが。
一気に2人の距離が近づき、体が密着した瞬間。

―――?

大河の体勢をさっさと直した直希が、パッと体を離して。

「疲れてるね」

ハハッと笑いながら、さっさと歩き出してしまった。
その姿が妙によそよそしくて。

―――な、何…?

和らぎかけた不安が、また一気に押し寄せてくる。
この1週間の間で薄れていることを願っていた彼の態度は、逆に強くなった気さえして。
直希の少し後ろを歩きながら、大河は嫌な胸騒ぎがしていた。


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