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「That night(実×大)」
1:before the acts~ムカつく男~

That night 1-3

 ←That night 1-2 →That night 2-1 ※R-18
「ごめん。ごめんな?」

とりあえず帰るのは思いとどまってくれたらしき大河を、実は抱きしめて宥める。

男は経験ないとはいえ、男同士だからなのか。
車内で交わしたキスで、実は互いの立場を理解した気がした。
そしてそれは、実が望むもので。
大河は戸惑ったかもしれないが、それでもその状況を飲み込んでくれたようで、この部屋に来てくれた。
だから、いろいろ葛藤があるのは恐らく、大河の方。自分は基本、今までと同じことをすればいいだけ。
実際、部屋に入ってからの大河は、あきらかに緊張していた。

でも、それでも実は、やっぱり大河と"そうなりたい"と思っていた。
テレビとピザでリラックスしてくれて、でも全てが終わってまた一気に緊張した大河をキスで宥めて、大河もそれに答えてくれて―――室内の空気がガラリと変わったから、当然その気になった。
だが、このまま流れに乗ってしまいたいと、その髪に触れた瞬間。大河の体から緊張が走って……

なんだか、可哀相になった。
大河は自分のためにいろいろ理解して来てくれたが、きっとものすごく不安なのだろう。
その立場関係を理解して受け止めてもらえただけで嬉しいのに、何を欲張って先に進もうとしてるのだと思えば、実は自分が恥ずかしくもなった。
自分は年上で、兄貴分でもあって、そして身を委ねようと思ってもらえた側で。そんな自分がこんな大事なことを勝手に進めちゃいけない。余裕を見せても、ガッついているところなんて見せられない。そんなのカッコ悪い。
だから、これ以上こんなことしたら絶対止められなくなるからと、寸前で止めた。なるべく怖がらせないように、じっくり考える時間を与えるためにも今日は何もしない方がいい。自分さえ我慢すればいいだけの話なのだから、と。
しかし、そんな自分のカッコつけは逆効果だったということを、大河のブチギレによってようやく理解した。

まさか、そんな覚悟決めてくれてたなんて―――
そう思えば、実は若干の感動すら覚えてしまう。

だいたい、よくよく考えてみれば、大河はそれなりに経験豊富な奴なのだ。恋人の家に泊まるということがどういうことか、すぐに察したはず。しかも自分の立場を理解していたなら尚更、実の誘いに乗ることがどういうことなのかなんて。

「ごめん。カッコつけたかっただけなんやって」

据え膳食わぬは男の恥、とはよく言ったものだと思う。
今の自分は、めちゃくちゃカッコ悪い。

「分かるやろ?俺の心臓の音で」

自分の腕にすっぽり納まって密着しているのだから、鼓動の速さは伝わっているはず。そう思いながら大河に問いかければ、大河も複雑な表情ながらも反論はしてこない。

「なぁ大河、機嫌直してや」

今までの彼女にこんな風にご機嫌取りしたことなんてなかった実だが、大河には無意識のうちにしてしまう。そこまでしても、自分に向けられる彼の笑顔を見たくなってしまう。
そうすれば、

「別に…怒ってへんけど…」

実の腕の中でぶつくさと、まだ若干機嫌の悪そうな大河が、しかしちゃんと返事をくれた。
それだけでホッとした自分に実は、

―――ヤバイな俺、夢中やん…

そう実感して、たまらない気持ちになった。
しかしそれが、少しも嫌ではないから、

「なら、こっち見て」

体を離して、見上げてきた大河の頬に触れて。

「ホンマにええんやな?」

滑らかなその頬を軽く撫でながら、念を押す。
すると大河が、遠慮がちに、しかししっかりと一度頷きながらも、

「実こそ、俺が相手でホンマに大丈夫か?」

不安そうに瞳を揺らした。
それを実は軽く笑ってから、

「理性を保てるかって意味では、大丈夫じゃないかもな」

大河の顔を両手で挟んで、14cmの差を埋めるように少しだけ背伸びをしてきたその唇を塞いだ。

つい数時間前まで、大河同様に実にとっても、絶対に叶わないと思っていた恋。
なぜなら、大河の相手(だと思っていた人物)は……真面目で優しくて、きっと恋愛でも誠実で健気そうだと思える人間。要は、大河がいちばん好きそうなタイプ。当然、勝てるわけがないと。
しかし少しだけ素直になってみたら、幸福な大どんでん返しが待っていた。

「…ホンマにごめんな大河」

少しだけ唇を離して、改めてそう告げる。そしてまた塞いだ。
その"ごめん"は、今のことだけではなく、今までのことも含めて全てについてだ。
彼が好きだからイライラしたし、彼が好きだから尻込みしてしまった。

「それぐらいお前は、俺の今までの相手とは次元が違うんや」

そもそも今まで自分は、本気で人を好きになったことなどないのだろうと、実は思う。
こんな風に、素直に気持ちを告げたくなる相手なんて、初めてなのだから。

「…嫉妬でガキみたいなことするぐらい。俺、ホンマはそういうキャラと違うんやで?」

ジョーク交じりに言ってはみせても、それが実の本音だ。
嫉妬とか独占欲とか、そういう感情とは、どちらかといえば無縁だった。もちろん全くなかったといえば嘘になるが、あんな、逃げたくなるほどの苛立ちを抱えたことなど無かった。
大河の相手には同性もありうると、その可能性を知った瞬間に爆発したその想いは、実自身の知らないところでこんなにも大きくなってしまっていたのだ。
そう考えてみれば、ふと感じるのは、大河が告白した"思惑"のこと。兄と千田を守る目的の他に、もうひとつ彼が抱えていたそれについては、

「お前の裏目的、成功やん」

そういうことだと、実は思う。
自分の気を引くためにあからさまな言動をした大河に、まんまとハマったのだから。もちろんそれで若干こじれたものの、結果的にはこうして互いに想いを伝え合えた。
そこには、陸という強力な味方が加勢したという要因もあるが、遅かれ早かれ、自分たちならきっとこういう結果になっていたのではないかと。

「お前みたいなアホに乗せられたのはムカつくけど、おかげで良かったわ」

だからそう結論づけて、実はまた大河の唇を深く味わう。
すると今度は大河が、

「…今日な?」

唇をわずかに離し、キスで少し息を乱しながら、話し出す。
それを実は、「ん?」と耳を傾けてやりつつも、唇を塞いだ。
そして少し離してやれば、大河も続ける。

「休憩中、兄貴と話してたとき…」
「うん」

実は相槌を打ちながら、またキス。
大河も、それに応えて。また唇が離れたタイミングで、続けた。

「俺が悪いって、説教された」
「陸さんが?大河を?」
「気を引きたいからって好きな人を困らせるのは、ガキのすることやって…」

『そんなことしてるうちに、大事なモン失うぞ?』
『ええ年ぶっこいていつまでガキやねん』
『これで空中分解でもしてみろ。アイツが可哀想や』

陸は、そう言ったのだ。
実の名前は出さず、だが、明らかに実のことを示して。

「俺もな、ホンマは素直になりたかった。でも、自分が始めた嘘を、打ち明けるタイミング失って…」
「うん」
「だからこれからは、素直になろうと思ったんやけど……ちょっとしたことで結局ケンカ越しになったりとか。俺、やっぱガキなのかも」
「そんなことない。今のは俺が悪い」

ずっと、意地を張ってすれ違ってきた、お互いの気持ち。
しかし、どちらかが素直になれば……

「俺も、実が特別や。今までの相手とは、次元が違う」

もう一方も素直になって。
視線も想いも、しっかり繋がる。

「みのる…」

確認するようにその名を呼んで。
大河からの、初めてのキス。
遠慮がちに舌を出せば、実に一気に絡めとられた。

「…ん……ぁ…」
「大河…」
「みの…っんぅ…」

10年以上もの長い付き合いで、初めてのそんな行為。
しかしそれが、あまりにも自然にすら思えてくる。
それぐらい、実も大河も、相手をひたすら求めてしまって。
これまで互いに隠し続てきた分を、埋め合うかのように……

「シャワー、入るか」
「……そやな」

囁き合って、また軽くチュッとキスをしてから、2人は風呂場へと向かった。


第2章へ進む

※序盤からまたもやすれ違う2人。
でもようやく先に進めそうです。
第2章は、1/14(月)6時から開始予定です。
次回からしばらくはR-18ページになると思われます。ご注意ください。

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