「★That night(実×大河)【連載中】」
4:after the act~最低な男~
That night 4-4
一方の実は実で、顔にはいまいち出ていなくても、かなり必死だった。
必死だったし、とてつもなく後悔してもいた。
目が覚めたら隣に大河が居なくて。
何故か無性に、焦った。
何となく、大河の様子がおかしいことは実は気づいていた。
どこからというのははっきり分からないが、少なくとも、風呂からあがってベッドに入ったときには感じていたのだ。何かがおかしいと。
しかし、大河も疲れたのだろうとか、半日で変わってしまった自分との関係に気持ちが追いついていかないのだろうとか、ていうか冷静になって恥ずかしくなったんだろうとか、そんな風に思うことにして、実も眠ってしまった。
それが、ひと眠りしたら気配がなくなっていて。
その瞬間、嫌な直感が走ったのだ。
たまに働く直感が、たまにだからなのかそこそこ当たる実は、慌ててベッドから出た。
とはいえ、シャツと下着ではさすがに寒いからと、部屋着用のジーパンとパーカーを羽織った自分は、周りから言わせると"そういうとこが天然"かもしれないし、こういうところが今までの彼女から"自己チュー"といわれた部分かもしれない、と実は思う。
しかし、普段の自分ならここに"パーカーのファスナーをしっかり締めてから落ち着いて歩く"という行為も加わるはずだが、そんな余裕は全く無くパーカーを羽織りながら駆け足で部屋を出たのは、やっぱり相手が大河だからだ。
そもそも、起きて恋人が隣に居なくてホッとすることはあっても(←最低)、焦ることなんて、無かったのだから。
部屋を出てすぐ、廊下の電気もつけずにそそくさと玄関で靴を履く大河の後ろ姿を見た瞬間、実の焦りは頂点に達した。
それでも深夜だからと静かに大河に声をかけたはいいが、何も言わずに自分を見上げる目がどこか怯えているようにも思えて―――気がつけば、力ずくで引きずり戻していた。
しっかりと目を合わせれば、大河からは怯えではなく悲しみが手に取るようにわかり、心が締め付けられて。
「そんなに……俺としたの、嫌やったか?」
思わずストレートに、不安の種を彼にぶつけていた。
事の最中は気持ちいいと言ってくれていたけれど、正気に戻った瞬間、後悔したんじゃないかと思っていたから。だから自分に背を向けて寝たんじゃないかと。大河の性格上、終わったらさっさと寝るタイプにはどうしても思えないのに。
正直なところ実は、セックスの後にまでウダウダとイチャつくのは嫌いなタイプだった。これまでの彼女に対しても、そういうことを求められる前に自分が先に寝たフリをすることもあった。
しかし大河なら、いくらだって甘やかしてやろうと思っていた。寧ろ、大河なら甘えて欲しいと思った。それなのにあんなドライな行動、実の方が拍子抜けしたぐらいだったのだ。
あのとき何か声をかけていれば、何かフォローしておけば、もっと違う結果だったんじゃないかなんて、そんなことすら考えていた実に、
「ハハ…最低やね、実」
乾いた笑いで自分を睨みつけた大河。心臓が止まるかと思うぐらい、実が見たことの無い冷たい顔をしていた。
それから自分にぶつけられた言葉の数々も、口調も、全てが冷たくて自分を罵倒するものなのに。
何故か実には、まったく別の感情として伝わってきた。
寂しい
悲しい
痛い
……と。
だから、大河が自分に嘘をついていることは実もすぐに分かったし、真に受けたらいけないと思っていたけれど。
大河の口から『冷めた』とか『無い』とか言われるだけで、苦しくて。
大河の心が離れていく―――そう思うだけで、焦りが増していく。
実が知る限り一番お人よしで優しい大河がこんな風に罵ってくるぐらいには、自分は何か最低なことをした、もしくは言ったのだということは分かるのに、実には思い当たる節がなくて。鈍感な自分を、このときほど呪ったことはなかった。
それでも何とか、大河から聞き出そうと試みて……ようやく見つけた手がかり。
『……なんていうか、こんなモンなんかな…って感じ?』
あれだ、と。
風呂場で、自分が大河の質問に対してした答え、あれが原因なのだと。
そして気づいた。大河の異変も、そういえばあそこからだということに。
突然浴槽から立ち上がって髪を洗いだした大河は、あそこから実を一度も見ていない。
「ああ、俺……最低や、確かに」
何の説明も無くあの言葉だけ投げれば、勘違いしても当然なのに、
―――どうして気付かなかったんや…俺
その結果、大河は実にガッカリされたと思い込んで、それで、逃げようとした。自分たちの関係を、リセットするために。
痛みも余韻も残る体で、あんな、泣きそうな顔して……
「無いな、マジで」
大河の心情を思うだけで、実は罪悪感で潰れそうだった。
本当に、男としても人としても最低な発言。
しかしあれには、意味があるから。
今さら自分の元から離れていくのだけは、勘弁してほしい…
「なあ、帰るなよ。帰らんよな?」
「離…」
「お前なら、刺されてもええから」
そう。
自分は大河が相手なら、そのぐらいの覚悟はできる―――
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必死だったし、とてつもなく後悔してもいた。
目が覚めたら隣に大河が居なくて。
何故か無性に、焦った。
何となく、大河の様子がおかしいことは実は気づいていた。
どこからというのははっきり分からないが、少なくとも、風呂からあがってベッドに入ったときには感じていたのだ。何かがおかしいと。
しかし、大河も疲れたのだろうとか、半日で変わってしまった自分との関係に気持ちが追いついていかないのだろうとか、ていうか冷静になって恥ずかしくなったんだろうとか、そんな風に思うことにして、実も眠ってしまった。
それが、ひと眠りしたら気配がなくなっていて。
その瞬間、嫌な直感が走ったのだ。
たまに働く直感が、たまにだからなのかそこそこ当たる実は、慌ててベッドから出た。
とはいえ、シャツと下着ではさすがに寒いからと、部屋着用のジーパンとパーカーを羽織った自分は、周りから言わせると"そういうとこが天然"かもしれないし、こういうところが今までの彼女から"自己チュー"といわれた部分かもしれない、と実は思う。
しかし、普段の自分ならここに"パーカーのファスナーをしっかり締めてから落ち着いて歩く"という行為も加わるはずだが、そんな余裕は全く無くパーカーを羽織りながら駆け足で部屋を出たのは、やっぱり相手が大河だからだ。
そもそも、起きて恋人が隣に居なくてホッとすることはあっても(←最低)、焦ることなんて、無かったのだから。
部屋を出てすぐ、廊下の電気もつけずにそそくさと玄関で靴を履く大河の後ろ姿を見た瞬間、実の焦りは頂点に達した。
それでも深夜だからと静かに大河に声をかけたはいいが、何も言わずに自分を見上げる目がどこか怯えているようにも思えて―――気がつけば、力ずくで引きずり戻していた。
しっかりと目を合わせれば、大河からは怯えではなく悲しみが手に取るようにわかり、心が締め付けられて。
「そんなに……俺としたの、嫌やったか?」
思わずストレートに、不安の種を彼にぶつけていた。
事の最中は気持ちいいと言ってくれていたけれど、正気に戻った瞬間、後悔したんじゃないかと思っていたから。だから自分に背を向けて寝たんじゃないかと。大河の性格上、終わったらさっさと寝るタイプにはどうしても思えないのに。
正直なところ実は、セックスの後にまでウダウダとイチャつくのは嫌いなタイプだった。これまでの彼女に対しても、そういうことを求められる前に自分が先に寝たフリをすることもあった。
しかし大河なら、いくらだって甘やかしてやろうと思っていた。寧ろ、大河なら甘えて欲しいと思った。それなのにあんなドライな行動、実の方が拍子抜けしたぐらいだったのだ。
あのとき何か声をかけていれば、何かフォローしておけば、もっと違う結果だったんじゃないかなんて、そんなことすら考えていた実に、
「ハハ…最低やね、実」
乾いた笑いで自分を睨みつけた大河。心臓が止まるかと思うぐらい、実が見たことの無い冷たい顔をしていた。
それから自分にぶつけられた言葉の数々も、口調も、全てが冷たくて自分を罵倒するものなのに。
何故か実には、まったく別の感情として伝わってきた。
寂しい
悲しい
痛い
……と。
だから、大河が自分に嘘をついていることは実もすぐに分かったし、真に受けたらいけないと思っていたけれど。
大河の口から『冷めた』とか『無い』とか言われるだけで、苦しくて。
大河の心が離れていく―――そう思うだけで、焦りが増していく。
実が知る限り一番お人よしで優しい大河がこんな風に罵ってくるぐらいには、自分は何か最低なことをした、もしくは言ったのだということは分かるのに、実には思い当たる節がなくて。鈍感な自分を、このときほど呪ったことはなかった。
それでも何とか、大河から聞き出そうと試みて……ようやく見つけた手がかり。
『……なんていうか、こんなモンなんかな…って感じ?』
あれだ、と。
風呂場で、自分が大河の質問に対してした答え、あれが原因なのだと。
そして気づいた。大河の異変も、そういえばあそこからだということに。
突然浴槽から立ち上がって髪を洗いだした大河は、あそこから実を一度も見ていない。
「ああ、俺……最低や、確かに」
何の説明も無くあの言葉だけ投げれば、勘違いしても当然なのに、
―――どうして気付かなかったんや…俺
その結果、大河は実にガッカリされたと思い込んで、それで、逃げようとした。自分たちの関係を、リセットするために。
痛みも余韻も残る体で、あんな、泣きそうな顔して……
「無いな、マジで」
大河の心情を思うだけで、実は罪悪感で潰れそうだった。
本当に、男としても人としても最低な発言。
しかしあれには、意味があるから。
今さら自分の元から離れていくのだけは、勘弁してほしい…
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そう。
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総もくじ
パンドラの箱(三角関係)
- ┣ パンドラの箱(三角関係)について
- ┣ Prologue
- ┣ 1:ガラスの絆
- ┣ 2:想定外の温もり
- ┣ 3:パンドラの箱
- ┣ 4:コワレモノ
- ┣ 5:決意と決別
- ┣ 6:強硬手段
- ┣ 7:幸福の選択
- ┣ 8:メビウス・ループ
- ┣ 9:はじめて
- ┣ 10:あるがまま
- ┗ Epilogue~次の強敵~
総もくじ
Hide-and-seek(直×大)
- ┣ Hide-and-seek(直×大)について
- ┣ Prologue
- ┣ 1:迫り来る過去
- ┣ 2:Breakdown
- ┣ 3:決戦の日
- ┣ 4:守りたいもの
- ┣ 5:Hide-and-seek
- ┣ 6:氷点下の恋
- ┣ 7:もう一度君に
- ┣ 8:黎明
- ┗ Epilogue~終息の朝~
総もくじ
Engagement(直×大)
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アゲイン(陸×千)
- ┣ アゲイン(陸×千)について
- ┣ Prologue
- ┣ 1:疑惑の男
- ┣ 2:あるがままの自分
- ┣ 3:アゲイン
- ┣ 4:手さぐりの夜
- ┗ Epilogue~メンバーの内緒話~
総もくじ
Beyond Silence(W大)
総もくじ
痴話喧嘩(直×大)
- ┣ 痴話喧嘩(直×大)について
- ┣ Prologue
- ┣ 1:誇りと不安
- ┣ 2:起爆剤と痴話喧嘩
- ┣ 3:溺愛と協力
- ┣ 4:無自覚と×××
- ┣ 5:話し合いと持久戦
- ┗ Epilogue~翌朝の痴話喧嘩(?)
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reward(直×大)
- ┣ reward(直×大)について
- ┣ Prologue
- ┣ 1:戻った日常
- ┣ 2:お気に召すまま
- ┣ 3:聖なる夜の思い出
- ┣ 4:reward
- ┗ Epilogue~聖なる朝~
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極夜(直×大)
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- ┣ Prologue
- ┣ 1:裏切り
- ┣ 2:決心
- ┣ 3:報い
- ┣ 4:極夜
- ┣ 5:決意
- ┣ 6:親愛
- ┣ 7:誓い
- ┗ Epilogue~訪問者~
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シンクロニシティ(直×大)
- ┣ シンクロニシティ(直×大)について
- ┣ Prologue
- ┣ 1:勘違い
- ┣ 2:恋しい人
- ┣ 3:通り雨
- ┣ 4:シンクロ二シティ
- ┗ Epilogue~敏腕マネージャー?~
総もくじ
Stranger(直×大)
- ┣ Stranger(直×大)について
- ┣ 1:見知らぬ恋人
- ┣ 2:熱い胸騒ぎ
- ┣ 3:独占欲と自覚
- ┣ 4:恋の浸透圧
- ┗ Epilogue~鉢合わせ、再び~
総もくじ
その先へ(直×大)
- ┣ その先へ(直×大)について
- ┣ Prologue
- ┣ 1:告白
- ┣ 2:拒絶
- ┣ 3:衝突
- ┣ 4:告白2
- ┣ 5:その先へ
- ┗ Epilogue~ある3人の目撃談~
総もくじ
優しい嘘(直×大)
- ┣ 優しい嘘(直×大)について
- ┣ Prologue
- ┣ 1:忠告
- ┣ 2:きっかけ
- ┣ 3:優しい嘘
- ┣ 4:それぞれの言い分
- ┣ 5:熱帯夜
- ┣ 6:陸の言い分
- ┗ Epilogue~はじまりの日~
もくじ
※ごあいさつと注意事項
もくじ
※設定・登場人物
もくじ
【ストーリーリスト】
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パンドラの箱(三角関係)
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