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「女は災い(陸×千)」
3:守るべきもの

女は災い 3-1

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【3:守るべきもの】

1月7日。土曜日。
両チーム、公演2回目。

楽屋で、千田は荷物を整理しながら、背後で聞こえる幸田と鹿野の会話を聞いていた。
直前に行われていた、幸田流に言うと"ラギ廉"チームの公演。どうやら今日も、大盛況だったようだ。

「この前の初回とは少し変えたとこもあるらしくて、そこがめっちゃハマったらしいね」
「へぇ~」
「そんで今日も、全員残ってるっぽい」
「今日も全員で俺らの舞台観るってこと?」
「そうなんだろうね。最終日に向けた偵察っすかね」
「おお。望むところじゃん」

一発スコンとやってやろうぜ、なんて、幸田は奮起しているようで。鹿野が苦笑いする声が聞こえている。
千田も思わず笑った。おかげで少し軽い気持ちになって、衣装に着替えるまでの時間を使って外の空気でも吸ってくるかと楽屋を出た。

5日前の出来事は、結局千田は誰にも言っていない。
あの日居合わせた人間の中で幸田と鹿野と幸樹は、千田が陸と会っていたことを知っているが、翌日何も聞いては来なかった。それは恐らく、朝食で会った自分の顔色を見て、何かあったことを察したのだろう。
そしてどうやら大河も気づいたらしく、

『別れたらアカンで』

彼からのそんなメッセージが届いたのは、あれから数時間後の、朝のことだった。

『兄貴をフルボッコにしてもええから、別れないでな?俺はチダちゃんの味方やで』

そこには、いつものようなスタンプも絵文字もなく。それでも、彼の優しさはじゅうぶんに溢れていて、申し訳なくも思った。
しかし、今の状況では返しようがないのも事実で。

『心強いです。今はお互いに考える時間が必要なんだと思います』

とだけしか返していない。
そしてその日の夕方、事務所の稽古場ですれ違った時には、大河は優しく笑って背中をポンと叩いただけで。気を遣ってくれたのか何も言ってはこなかった。

―――考えるって言ってもな…

今回の件は陸と美香という女性の問題であり、2人次第なところがある。自分が考えることといえば、2人の答えによって自分がとるべき行動だろうか。

―――2人の答え

それが一番怖いし、今の千田には嫌な結論ばかりが浮かぶ。
そもそも、陸があの女性を庇う理由は一体何だろう。
そしてこの件で、陸が自分を庇ってくれた瞬間は……
そう、一度も無い。
自分を庇ってくれたのは、大河ら仲間たちで。千田を責めたり疑っても、彼女を庇うことで千田が傷つくことを、陸は気付いてくれない。
そんなことを痛感して、見えてきた千田の"考え"なんて……

―――俺は何番目なんだろ…

結局、そこに至る。

たとえば自分が2番手3番手だったとして、ならばどうするのだろう。
正直、陸を想う気持ちは、一切変わっていない。自分が彼に守られなかったと分かった今でも、彼が誰より大切で、好きで……
自分のプライドと、彼との繋がりと、いったいどちらを優先するべきだろうか。そんなことを、この2、3日間はずっと考えていた。
そしてそろそろ、結論を出すべきなのではないかということも……

年が明けて、誕生日が来て。年男で。
おめでたかったのは、1日だけ。
出だしの悪い年だ。

そんなことを考えながら、外へと続く長い通路を歩いている時だった。

「ねえ」

背後から、自分を呼ぶ、声。
それが異性だということは、すぐに分かって。
振り返った千田が見たのは……

―――美香さん…。

今一番見たくない相手だった。

「ちょっといいかしら」

美香は、5日前と同じようにジャケットとスーツ姿で、違うのは、すでにネームプレートを下げている程度。恐らく、昼の部の公演を観ていたのだろう。腕を組んで立つ姿は相変わらず余裕たっぷりで、千田は思わず怯んだ。

「何ですか?」
「ここじゃちょっと…ねぇ、外行かない?」

にっこりと、懐っこい笑顔をかけてくる。

「僕はこれから本番なんです。ここで済ませてください」
「聞かれたらまずいんでしょ?」
「どういうことですか?」
「"彼"のことよ」

笑顔を崩すことなく、彼女はそう言った。
名前こそ出さなかったが、それが誰かはすぐに分かる。

「か、彼って?」
「とぼけないで。名前出しちゃまずいんでしょ?
ねぇあなた、顔に出てるわよ?」

心臓がドキドキと煩い。
どうして、自分がこんな目に―――

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