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「女は災い(陸×千)」
8:交渉

女は災い 8-2

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陸は体を離し、ゆっくりと、千田の頬に触れる。
千田は一瞬ビクンとして顔をそらそうとしたが、

「美香のこと、言えなかったのは、決してやましいことがあるわけじゃない」

今更、打ち明けても遅いかもしれないけど。と、そう切り出した彼に、千田の視線も戻った。

「そもそもアイツとは、最初から別れるまで、ずっと何もしてへん」

こんな話、呆れられるだろうけれど…

「美香も俺も、互いをそういう目で見たことなんて、一度も…」

はっきりと、覚悟を決めて陸は話した。
千田の眉がしなり、顔全体に困惑の色が見える。

「美香は俺にとって一番の女友達で、大学入ってからずっと親しかった。お嬢様育ちやから行動に若干の問題はあるけど、たぶんいちばん仲は良かったし、大河も最初は懐いてた。でも、俺らが付き合ってるって言ったときは、いまいち反応悪くて」

『またああいうのと付き合うん?今更付き合うんか?』

そう言って、眉を寄せたという。

「俺は彼女を男友達みたいな感覚で思ってたせいか、平気で2人で出かけたり飲みに行ったりしてて。大河が中学卒業して東京来たときも、美香が平気で俺の家に上がり込んだりしとるの見て、恐らくセフレかなんかやと思うてたんやろな。まぁ、普通はそう思うよな、確かに。それでも美香のさっぱりした性格は気に入ってくれてて、大河も、俺の友人として受け入れてくれとった。
それが、いきなり"付き合う"やろ?いい気分せえへんよな。しかも"結婚前提"なんて言われたら…
今思えば、何で俺は大河にちゃんとあのとき言ってやらなかったのかって思う。美香にすら、呆れられた」

『あんたバカじゃないの?』

吐き捨てるように、彼女はこの間、陸にそう言ったのだ。

「友達やから助けてやろうとして、とりあえず身内も全員丸め込もうとして。結局俺がしてたことは、大河のことも美香のこともバカにしてるようなもので…」
「……どういう、こと?」
「俺たちの関係も婚約も、ぜんぶ芝居やったんや」
「…え?何で…」
「美香はな、女性しか愛せない奴やねん」

そう、彼女は…

「何をどうあがいても、男は好きになれない。体が受け付けない、って。結婚させられたところで毎日地獄やって、いつも零してた」

知り合って1年ぐらいした頃、陸は口が堅いと信じ、彼女は話してくれたのだ。

「じつはな、俺の当時の彼女のこと、あいつが好きになっちゃって。張り合ったこともある」

いつだってそうやって自分に引け目を感じない彼女を、陸は認めていた。だから…

「大学も4年になって、就職活動の矢先にあいつ、親から結婚をすすめられてな。まあ、見合いやな。親父さんの友達の息子さんらしいねんけど。それで俺に……」

『お願い、あたしと付き合って』

そう言ってきた彼女に、親を諦めさせるためとはいえもちろん躊躇はしたものの、友人の力になれるならと、気軽な気持ちで引き受けてしまったのだ。当時陸は他に恋人が居たが別れたい気持ちもあったし、芸能界での仕事もすでに忙しかったし、煩わしい恋人を作るぐらいなら彼女の一芝居に付き合ってやろうと。

「結局それが、大ごとになっていって。向こうの親まで出てきて、引くに引けなくて…」

結婚を前提にしていると―――気付けばそう口走っていた。

「お前みたいな明日をも知れない仕事してる奴に娘はやれない、って思いっきり殴られて。俺も思わずカッとなって、思わず啖呵きってしまってな」

『美香はあんたたちの人形じゃないっ!』

そして美香も、

『私の相手は自分で決めるから。駆け落ちでも何でもしてやるわよ』

親に言い放った。恐らくそれが、彼女の初めての反抗だったのかもしれない。

「それから家を飛び出して東京に出てきて。でもアイツ、俺とは違うとこ住んでたんやで?それは大河とハルが居候してたのが理由ではなくて、単純に、俺と住むこと自体考えてへんかったんや。いくら俺を信頼してるとはいえ、俺は男やし、長いこと一緒にすごしたら下心もたれるんやないかって警戒して。200%ありえへんのに。
お嬢様のくせして必死でバイトして、ボロいアパートに住んでたんやアイツ。根性あるやろ。
それから間もなく美香は親に自由を認められたんや。絶縁てやつやね。あの結果はあまりええモンではないけど、でもそれで美香は自分の人生を歩くことができてる。イギリスに行くことも、あいつらしいって思った」

それから10年近く、美香とは殆ど連絡をとっていなかった。年に1度、思い出したように絵葉書が来るが、特に気にも留めなかった。友人ではあったが、離れれば切れるような関係だったのだ。
それが今回、とつぜん現れて。はしゃぐ彼女は、自分の立場を忘れてしまっていた。

「お前に、ホンマに申し訳ないって謝ってた。大河にも、ちゃんとあいつの口からホンマのこと話したらしい」

一触即発のあのムードの後、美香は真相を知って、大河に自らカミングアウトをした。

「で、でも…あの人俺を…」

そう、千田には疑問が残る。
初めて会った日、自分を見つめて微笑んだ彼女、6日前、突然声をかけて挑戦的な発言をしてきた彼女。あれは一体……

「それはきっと、気付かれたからや」
「え?」
「俺たちのこと……」

最初に鉢合わせした時、千田を見た陸の視線と表情で、ショックを受ける千田の姿で、美香は気付いたのだ。
千田が、陸にとって特別な存在だということを。

『あの子が新しい恋人?やるじゃない』

頭を抱える陸には気付かず、嬉しそうに彼女は笑った。

『ていうか、陸にはもったいないんじゃない?』

過去を清算できれば釣り合うのにね~と、陸の恋愛遍歴をチクリと刺しながら。

「じゃあ、この前俺に声をかけたのも…」
「恐らく、ホンマに俺でええのかって、純粋にそれだけ訊きたかったんやろな。
でも、TPOをわきまえてへんよな、ああいう行動は。あいつも、お前に言われて気付いたみたいで、反省してた。何も知らない有介があんなことされたら、動揺するのは当然やもんな?まさか俺が話してなかったとは思ってなかったみたいで、"かわいそうなことした"って落ち込んで。俺のことも、自分のこと棚に上げて怒ってた、アイツ」

『このバカ男。私のことなんてどうだっていいのよ。好きな相手なら、ちゃんと真実を話すべきでしょ。疑われても言わないなんて、どうかしてる。しかも、大河にまで言わないで黙ってきたなんて。私のプライバシーを守るため?そんな風に守られて私が嬉しいと思うわけ?バカにしてるわよ』

懇々と説教されて。
そして、千田が陸から離れたことに気付いた美香は、ひどく落ち込んだ。

「じゃあ……」

千田は、疑心暗鬼ながらも、陸の言った言葉を元に考えを整理してみる。
今日、廊下で静かに頭を下げた彼女。
あれは、心からの謝罪だったのだろうか……

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