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「COOL(実×大)」
前編:言えない

COOL 前編-2

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「なあ大河、恋人の誕生日すら気にしないような相手なんて、やめときなよ」

大河のように周りを愛し周りから愛される人間には、ふさわしくないと。直希は優しく窘める。

「どんだけ好きか知らないけど、でも誕生日って大事だろ。そう思わない?
だってさ、例えば俺にとっては、大河の誕生日って大事だよ。恋人じゃなくたって、大事な相棒だから。だから、大河が生まれた日は俺も大事」
「直希…」
「それをさ、恋人ともあろう人間が、気にしないってのは……ドライすぎでしょ。大河がそういう恋愛を望んでるなら話は別だけど、違うだろ?」

確信を込めた物言いでそう問えば、大河もやはり否定しない。
直希は困ったように苦笑いをしてから、俯いたその頭を軽く撫でた。

「まあ大河なら、きっとそのうち相手の方が必死になると思うけどね」

少々キツいことを言ってしまったからというわけではなく、本当にそう思うのだからと直希はそう付け足す。
しかし大河は、

「それは無いやろ」

アハハと笑って、直希の言い分を冗談だと受け止めた。
大河には、実が自分に夢中になるなんて想像がつかない。あの、クールでドライな恋愛をモットーとするような男が、今の自分のように必死でヤキモキする姿なんて。
もちろん、千田とのことを勘違いして八つ当たりするような一面も実にはあったが、それはあくまで片想いという状況であったからで。今こうして両想いになれば、実はいつだって冷静に大河を見守っているし、彼が嫉妬する姿も一切なくなったのだから。

―――嫉妬するレベルでもないしな、俺の場合…

実を取り巻く女性たちの視線に比べれば、自分の周囲なんて平和なものだと、大河は分かっている。もちろん自分だってある程度の誘いはもらうが、実のように知性も兼ね備えた男に群がる女たちはレベルが違う。実際、実はいつでもクオリティの高い女を連れていたと思う。
要はそれが、変わらず続いているだけなのだ。
自分たちが恋人同士になったところで、実の周囲が変わらないのは当然のこと。彼に対する"誘い"の話など、これまでだって何度も聞いてきた。自分だって、その話を笑って聞いていたはずだ。
気にならなかったといえば嘘になる。でも、聞き流すことはできていたのだ。ただ、恋人同士になって以来、聞き流すのに時間がかかるようになっただけ。少なからず沸き起こる不安を、処理する場所がないから、蓄積させてしまうのだ。

「俺の問題、やね……」

実を責めるのは、きっと違う。大河は改めて、そう言い聞かせる。これもこの1か月、何度もしていることだ。
すると直希が、ふうと大きな溜め息をついた。

「わかってないなぁ、大河は」

そしておもむろに、その体を抱きしめる。

「な、直希???」
「大河の不安は当然のことだろ?だから、ちゃんと本人に言いなよ。
そうやってウジウジするなんて大河らしくないよ。そんな風にフラストレーション溜めこんでどうすんの。確かめなきゃダメだって」
「え……」
「その人の本心を聞いたうえで、どうするか決めればいい。そういうこと訊かれることすらウザがられるなら、そんなのは大河の相手にふさわしくないから別れな。当たって砕けたら、俺が全部拾ってあげるから大丈夫」

頼もしい言葉と共に、何度も背中を叩いてくれる。
それだけで大河は、少しだけ元気が出てきて。

「あはは、直希…それ、なかなかの殺し文句やな」

相手が自分ではなく女の子なら、きっとそのまま略奪愛だって可能なんじゃないかというセリフに、くすぐったさを感じつつも嬉しくて、大河も直希を抱き返した。大河からようやく普段の声が出たことに直希もまた笑う。

「惚れた?俺に乗り換える?」
「いや、それはええわ」
「何でだよ~~」
「だってお前、イケメンの皮かぶった変態やし」
「ひっど。つーかさ、そこまで好きになってもらえるなんて、どんな人なんだよ一体。超悔しいんですけど~」
「アハ、ハ…(バンド内に居るとは言えへん…)」

相棒のおかげですっかり気分が軽くなった大河は、そのまましばらく直希とギュウギュウ抱き合いながら笑っていたが(←バカコンビ)、

「直希~お前早くしろ…って、何してんの?」

直希を待ちくたびれた天野が顔を出してぎょっと目を丸くしたことで、ようやく離れた。

「あれ?タイミング悪かった?俺」
「天野さん、このこと千田にはナイショに…」
「アホかお前っ」

大河は間男キャラを楽しむ直希の頭をはたいて制すると、さっさと行けとばかりにその背中を押した。
陸と千田の問題が勃発したあの日、社長と面談をした千田のマネージャー・川口とSQUAREのチーフマネージャー・八神以外のマネージャー陣は大河のハッタリに丸め込まれているため、直希はわざとらしくそんなことを言ったのだが、

―――もしかして、大河の本命は直希か?

事態を知った陸がマネージャー陣たちには真実を話していたため、天野はこの2人の間に密かに流れる"仲良すぎ"疑惑の方が気になってしまって。

「直希、今のは何の抱擁だ?」

慌ててそそくさと帰り支度をしている大河を尻目に、直希だけにこそっと訊ねる。
すると直希はふふっと笑い、

「ん~、"場合によっては俺のとこおいで"って感じ?」

本気とも冗談ともとれない思わせぶりな発言を返して、

「大河、スタジオ作業何時までやるの?」

戸惑う天野を放置して、大河に声をかける。

「どうやろ。実が来る時間帯にもよるけどな」

荷物を手にした大河が直希と天野に近づきながらそう答え、3人はいつの間にか誰もいなくなってしまった稽古場を出て行く。

「実って、別の現場あるんだね、まだ」
「うん。CMの新バージョン撮りらしいわ」
「へ~、CMって、あの、ほら、グループのコと共演してるやつ?」

恋人同士のようなイメージで作られたそのCMを思い出しながら、天野がそう訊ねると、直希も「ああ、あれね」とすぐにわかったようで、

「あれだろ?さっき廉が言ってた、実にケー番渡したって子だろ?」

あのCMの新バージョンかぁ~と、天野と顔を見合わせて笑ったのだが。
廉の言葉を思い出した大河は、がっくりと内心項垂れた。

『CMで実さんと共演してるあの子、最初の撮影のときケータイ番号渡してたらしいぜ~』

確かに廉は、そんな話を今日の休憩中に話していた。
しかもその前にも、さんざん実のモテエピソードで盛り上がっていた。
クリスマスパーティーに誘われていただの、スタジオ裏でこっそり誘われていただの……大河の苛立ちや不安を募らせる会話が続いた中で、追い打ちをかけるような言葉がそれだったのだ。
仲間たちは、大河と実の仲を知らないこともあり、稽古場でも笑い話として実のモテっぷりを話す。それはもちろん、ここに居る相棒・直希も同じこと。
だから仕方のないことだと大河は自分に言い聞かせているのだが、苛立ちを抑えることはできなくて。

「ホンット、ウチのリーダーは女性が放っておかなくて困るわぁ」
「直希だってすげぇだろ」
「いやいや天野さん、実に声かけてくるのはね、大物の女も多いのよ。俺にはない知性ってのが、実の大きな武器なわけ」
「アハハっ。お前だって、偏差値的には決して悪いわけじゃないけどな。まあでも、自分で言ってくれて助かったわ~~」
「俺正直だから。ま、他じゃ俺だって実に負けないけどね~。音楽の才能は別として、顔とかスタイルとか色気とか男気とか~」
「後半2つは実の方がダントツ勝ってない?」
「あ、ひっでぇ~~」

直希と天野のそんな会話すら、大河にフラストレーションを蓄積させていく。
結果―――

「ごめんっ!俺先行くなっ」

いたたまれずに大河は、直希の肩をポンと叩いてから、彼らに笑顔を見せてさっさとその場を去っていった。
今日は、このムシャクシャをすべて歌詞にぶつけてやる。
そんな想いと共に、大河はひたすら走っていた。

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