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「最愛(直×大)」
1:勝手な男

最愛 1-3

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直希には、言われた意味が分からなかった。
彼から貰ったカギを勝手に取り返された意味も、この部屋のカギを差し出されている意味も。
そんな直希の動揺にすら、大河がいつものように気遣ってくれることはなく。直希が手を出してこないので、身を屈めてテーブルにカギを置いている。
カチャリ…と、ローテーブルに置かれたそれは、大河の手から離れて。

「何…言ってんの?」

直希がようやく口に出せた言葉は、ひどく震えていた。
カギを置いて体を起こした大河は、自分を見ない。ただ、彼がとてつもなく冷たい顔をしていることだけは分かった。

「こないだのことが原因?」

彼が何も言ってくれなかったからとはいえ、一方的に責めてしまった自覚はある。彼だって不安で言えなかったかもしれないのに、と反省していたところだったのだ。だからこそ直希は、今日大河がわざわざ会いにきてくれたのが嬉しくて、自分も素直に謝ろうと思っていたのに。
そう思ったのだが、

「違うよ」

即座に、静かに大河が否定した。
それはいつもの彼のように、とても優しい響きだった。
だが、

「体調崩して休んでる間、時間あったから、いろいろ考えてて…」

すぐにまた、声も表情も温度を失い、

「今回お前と揉めて、改めて思ったんやけど…」

俯き、溜め息をついた大河が発した言葉は―――


「今の俺は、お前のことホンマに好きなんか、分からなくなった…」


今まで交わしたどんな言葉よりも鋭く、直希の胸を突き刺した。
それなのに大河は、言葉を止めてくれない。

「正直、俺の気持ちは、お前から離れてる」
「………」
「ゴメンな、勝手で。でも、こういうのはハッキリ言うべきやと思うから」
「………」
「俺たちは同じグループの人間で、曖昧な言葉で有耶無耶にすることは無理や」
「………」
「俺と別れてくれ、直希」

最後のその言葉だけは、顔を上げて真っ直ぐ見つめられて、告げられた。

直希はやっぱり、何も言えなかった。
信じられなかった。
こんなことを淡々と言える大河が。
裏切りの言葉を、悪びれもせずに吐いている大河が。
何の相談もなく、こんな短時間で、これまでの全てを断ち切ろうとする大河が…

頭が真っ白で体も硬直して。
ただただ立ち尽くすしか出来ない。
唯一出来たのは……

「……嫌だ」

そう言って、首を左右に振るだけ。
しかしやっぱり大河は、そんな直希をチラリとも見ずに踵を返した。
部屋の扉まで歩を進めた大河が、一旦そこで立ち止まったのを機に、少しだけ直希に顔を向ける。もちろんそれは視線が合うほどのものではなく、本当に少しだけだが。

「直希」

静かに呼びかける、声。

「これがホンマに最後やから、言わせてもらうけどな?」

こんな別れ方をすれば、もう友人にさえ戻れないことぐらい分かっているから。そんな意味を込めて。

「ホンマに好きで、幸せやった。それだけは真実やから」

この1年8か月の関係が決して無駄だったわけではないと、それだけは分かっていてほしいと、大河は告げた。

「それなのに俺は、お前を裏切る。
お前との約束も交わした言葉も全部、俺は今この瞬間に捨てる。
きっとそのうち、別の誰かを好きになって、お前を好きだったことも忘れる。
俺は救いようのないアホや。地獄行きやな。
こんな奴のことホンマは忘れて欲しいけど、俺らが仕事のパートナーである以上それは無理やと思うから……だから、絶対に俺を許すなよ」

全ては自分の責任。
心が離れた自分の。
大河は、そう言った。
そして、

「バイバイ直希」

その言葉を最後に、大河は部屋を出て。
やがて玄関のドアが開いて、閉まる音がした。

一体、何が起きたのか。直希には何も分からなかった。
あまりの衝撃に、彼を追いかけることすら出来なくて。

「嘘だ……」

ただひたすら、そんな言葉を繰り返すだけ。
自分の全てを捧げた彼の心が、離れるなんて。
そんな残酷な事実を、本人の口からはっきりと告げられて、直希は身動きがとれなかった。

―――大河、どうして……





通りに出た大河はタクシーを捕まえ、マンションへと向かった。
タクシーの中で大河は目を伏せたまま、特に表情を変えることは無かった。
しかし。
部屋に着き、玄関に入り、ドアを閉めた瞬間―――

「………っ」

まるで堰を切ったように涙が溢れて。
そのまま大河は、ドアを背にずるずると座り込んだ。

―――ゴメン、直希……

胸元に手をやり、今だそこに存在し続けるリングを握りしめる。
どうしても返せなかった、返すにはあまりにも長く自分の傍に居過ぎたそれを。

大河はしばらく、そこから動くことができなかった。


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