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「最愛(直×大)」
3:リベンジ

最愛 3-2

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「大河さん、お疲れ様」

大河が駐車場に出ると、送迎車から出てきた千田が、傘を広げながらそう言って微笑んだ。

「あ、濡れるでチダちゃん、大丈夫やから」
「いーんです、いーんです。大河さんだって傘も持たずに、高さんに怒られるよ?」
「黙っといてな」
「ハハ」

そんな会話をして笑い合いながら、千田の傘に入れてもらって大河も車に乗り込む。
2人並んでシートに腰かけると、運転係のスタッフは「POLYGONは仲良いねぇ」と笑いながら、まだ現れないもう数人を待つために施設内へと入っていってしまった。
大河や千田をはじめ、午後からの撮影参加は4名。集合時間より少し早いせいか、残り2名がまだ現れない。そのうちの1名はいつもギリギリにならないと来ない役者だし、さらにもう1名はギリギリアウトが多いほどの役者なので、これもまた、時間内に来ればいい方だ。そして彼らを運転係がロビーで待つとなれば、しばらくこの車内は2人きり。それを察した千田が、

「帰り、寄るんですよね?場所教えてくださいね」

不意にそんなことを口にする。
大河が顔を向ければ、「ね?」と微笑んでくる千田は、いろいろ理解した顔をしていて。

「高さん、今日はずっと来れないんでしょ?そういう日は、俺が一緒に行きます」
「チダちゃん…あ、でも別に俺、一人で平気やで?」
「いいんです。高さんにも"任せてください!"って言っちゃったし」

何も気にしなくていいと、千田は軽い口調で微笑んだ。
この撮影ではスタッフが運転する送迎車で現場と宿舎の行き来を行うが、ここ最近の大河は帰りだけは高瀬と別行動をしている。宿泊施設へ戻る前に、"寄り道"をするためだ。しかし今日、高瀬が来れないことを知った千田は、別行動のパートナーとして自ら申し出たのだ。もちろんそれは、千田が陸から事情を聞いてしまったことが大きく起因している。

「大河さん一人で行かせたところで、きっと何言われても都合の悪いことはスルーしそうじゃないですか」

だから今朝のうちに高瀬には、来れない日は連絡してくれと伝えておいたのだと、そうしたら今日まさに来れないと言われたのだと、千田がさらりと答える。
そんな千田に、大河も特に口答えはしなかった。優しい千田がこんな風に厳しく言ってくれるのは、自分を気遣うからこそだと思えば、寧ろありがたくて。

「話、聞いたんやね」

訊くまでもないが、いちおう確認しておこうと問えば、

「……はい」

少しだけ目を伏せた千田が頷く。
そして、

「大河さん」
「ん?」

何を思ったか、左手を伸ばして徐に大河の手を握ってきた。

「え?チダちゃ…」
「大河さんっ」
「は、はいっ」

手を握られて急に真剣に見つめられて、大河は思わずたじろぐ。
しかし千田は気にせずに、改めてギュッと手を強く握り返したかと思うと、

「俺、大河さん好きです」

いきなり、大胆な告白をかましてきた。

「聞いてる?俺、大河さん好きです」
「えっと……」
「大好きですよ」
「あ、ありがと…」
「ホントに分かってます?大好きなんです」

戸惑う大河に何度もその言葉を連発してくる千田は、大真面目だ。
もちろんその"好き"の意味が純粋なそれであることぐらい分かっているが、それでも大河は慌ててしまった。それは決して、過去の自分にやましい思いがあったことが災いしているからではなく、千田はあまりこういうことを言う人間ではないからだ。千田に限らず、大の男が大の男に対して面と向かって"好き"だなんて、よっぽどのことがない限り言わない。
いったいどうしたものかと千田を凝視していると、千田がまた口を開く。

「大河さん、俺、秘密は守ります。大河さんが困るようなことはしません」
「う、うん…」
「でも、その範囲内で、自分が正しいと思うことをします」
「うん。……ん???」
「心配だから、世話も焼きます。もちろん、誠さんにバレない程度にね。
だから、みんなにバレたくなかったら、大河さんも素直に俺の言うこときいてくださいね」
「チダちゃん?」
「大河さんが居ないと、俺も困るんです。
それから、大河さんがちゃんと笑ってないと、それも俺は困る」

気迫に圧されている大河に、構わず千田はそんなことを言いながら、握っていた手を放す。その手で、車に乗り込む隙に雨に濡れた大河の腕をタオルで拭いてやった。
大河はその手に、思わず、世話焼きな直希の仕草を重ねて……。チクリと胸が痛んだが、慌てて視線をそらして誤魔化した。
しかし千田はそれを見逃さず、チラリと大河を見遣り、しばらくその横顔を見ていたが。やがて、気付かないフリをしてやるかのように自分も視線をはずし、そのタオルで今度は自分の手元や吹き込んだ雨で濡れたシートを拭く。それからもう一度、大河の方に顔を向けた。
千田の視線を感じた大河も、顔を向けてくる。

「俺、前に言ったよね?何があっても大河さんの味方だって」
「ん?ああ、うん」
「それから大河さん、前に言ってくれたよね?"兄貴の大事な人なら俺にとっても大事"って。俺も同じです。陸の大事な人は、俺にとっても大事な人です」

そしてその恋人もひっくるめて、芋づる式にだ。と千田は言いたかったが、それは止めておいた。そのことについては大河を下手に刺激しないようにしようと、陸と決めたばかりだ。
その代わりに、

「だから、覚悟してください」

口の端をニッと上げて、千田は宣戦布告のように言ってやった。それは、陸の癖にとてもよく似ていて。
夫婦は似てくるというが、確かにそうだと、大河はこの場にそぐわず痛感してしまえば……戸惑いながらも笑ってしまった。
そして千田のその強引さに、そういえば昨日実から連発の嫌がらせメッセージが来ていたことも思い出す。

『何で別れた』
『ホンマの理由を言え』
『アホのくせに余計なこと考えるな』
『そういうプレイか』

さらにそれは、誠にも飛び火しているようで。

『実から、お前が既読無視してくるっていう八つ当たりメッセージとスタンプが止まらん。お前、何した。早く連絡してやれ。
ていうかお前、最近変やぞ。俺に話すか誰かに相談するか、どうにかせえ』

昨日の休憩中、じゃれ合うフリをしながらそんなことを耳元で言われた。
兄からも、『近いうちゆっくり話すぞ』と来ていたし、遂には拓郎からも『お前に話がある。今度ツラ貸せよ』(←コイツも元ヤン)というメッセージが来ていた。他のメンバーからも、直接的ではないが何かこちらを伺うようなメッセージが送られている。
どうやら自分の周りは、容赦してくれない人間ばかりのようだ、と大河は思った。こんなときこそ放っておいてほしいが、こんなときだからこそ放っておいてくれない人間ばかりで、自分が恵まれていると思うと同時に、逆に切ない。
でも、ひとまずは。

「わかったよ。覚悟しとくわ」

よく分からないが、この千田には口答えできなさそうだ、と思って、大河は笑った。
すると千田が、

「言いましたね」

今の覚えておきますよ、と強い視線をぶつけてくる。
そしてガラリと空気を変えるように、笑顔を見せてきた。

「じゃあ、今日の夕飯は、やっぱステーキっすね」
「え?」
「寄り道コースの近くにあるんですよ、知らなかった?俺、初日にチェック済ですよ。
A5ランクのブランド牛って看板立ってて、あそこ絶対美味いですよ。いけますよね?ステーキの1枚や2枚」

誠さんにはナイショで、と、千田がまた笑えば、大河もハハッと笑った。

「確かにそれは気になるなぁ。よし、ステーキいっちゃうかっ」
「いっちゃいましょう!ライス大盛り無料でお替わり自由らしいですから」
「お前の胃袋、どんだけブラックホールやねん」

呆れたように笑う大河は心から笑ってくれていて、千田はひとまずホッとしながらその横顔を眺めた。
しかし、昨日陸から明かされた話を思い出せば、その笑顔が妙に切なくて。

『このままやと、アイツは……』

思わず浮かんだ陸の言葉を、慌ててかき消す。
全ての事情を知った以上、大河が直希と離れた心情を理解してやれる以上、それを考えるだけで涙が出そうで。
さりげなく大河から視線をそらして潤んだ瞳を隠した千田は、

「あ、雨、早く止むといいね」

窓を眺めることで、彼に顔を見られることを避けた。


このまま終わりはしない。終わらせたりはしない。
直希も陸も、そして千田も実も、思いは同じだ。

この長雨だって、必ずいつか止むのと同じように―――


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