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「最愛(直×大)」
4:暗い日曜日

最愛 4-4

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陸の言葉に、直希は目を丸く見開いたまま、陸を凝視している。

「もちろんそんなことは最悪の事態やけど、安定するまでは何が起きるかわからんて。可能性が高いということは了承してくれって言われた。覚悟してくれって」

極論とはいえ起こりうることだと、それは確率の問題ではなく状況によってさまざまだと。
大河が紹介された循環器専門の病院は、専門医を中心とした医療チームが24時間救急受入体制を敷いて最新の診断・治療機器を駆使し、診療にあたっている。中でもそこには、大河が抱える疾患の研究者の一人であるという医師が居り、当然彼が主治医になってくれたのだが。

『現時点でも、本人に無理がなければ日常生活に制限はしませんし、体を動かさないものならば多少仕事をしてもかまいません。ものを書いたり喋ったりする程度なら。それが気晴らしになる場合もありますし、あまり縛り付けないことが大事です。
ただし、安全なレベルに下がるまでは、日常生活の中に常に突然死のリスクが付きまとう。症状が重ければ重いほど、発生確率も高くなる。お母さんの症例は、決して珍しいものではありません。それだけはわかっていてください』

恐らくまだ30代であろう若さとはいえ海外でも数々の症例を見てきた経験豊富な医師は、全面的なバックアップを約束してくれた上で、万が一の事態もしっかりと告げてきたのだ。

「だから、お前も……」

分かっていてくれと、言いかけて陸は、それ以上は言えなかった。
そんな残酷な"もしも"を何度も言えるほど、強くなかった。
代わりに、

「この話を踏まえた上でやけどな?」

話の先を進めようと、試みる。もちろん、目の前の直希はそれどころじゃない気もするが、かといって中途半端に辛い告知だけをするわけにはいかない。起きてしまったものはどうしようもないのだから。
今いちばん辛いのは大河で、こうなったのは誰のせいでもない。主治医の医師もそう言っていた。この疾患に関しては、いまだもって全く原因不明なのだと。
そう、大事なのはこれからなのだ。その"これから"のためにも、大河が下してしまった、直希との結果について考えなければいけない。
だから、

「大河が、お前から離れたのは―――」

数日前に千田と話したことをふまえて、陸が口を開いたときだった。

ピンポーン♪

絶妙なタイミングで、インターホンが鳴らされる。
相手など、ほぼ分かっていた。
30分ほど前に、タクシーに乗ったと連絡をしてきた相手。

「ちょっと待ってろ」

聞いているのか聞いていないのか分からない直希に一応そう声をかけて、陸は席を立った。

玄関を開ければ、予想通りの相手。千田だ。
陸は無言で頷いて彼を招き入れ、千田をリビングへと促した。

千田が中に入ると、目に入ったのは、肩を落としたままでピクリとも動かずソファに座る直希の姿。

「とりあえず、全部話した」

千田にだけ聞こえる声で、彼から荷物を受け取りながら陸が打ち明ける。
お前に話した内容を、直希にも全て話したと。

「お前の話、どこまで耳を傾けられる余裕があるか分からんけど、話してやってくれるか?」
「…分かった」

千田が頷き、一度大きく深呼吸をしてから、ゆっくりと直希に近づく。そのまま隣に座ると、直希がチラリとだけ顔を横に向けてきた。

「鈴野」

気遣うように呼びかけながら肩に手を置けば、小さく震えていて。それだけで千田も胸が苦しくなった。
しかしだからこそ、何かが変わってくれればと願いながら……
そっと、その手を握った。

「……千田?」

小さく、呟くように、直希が言葉を発する。

「俺、鈴野に、どうしても伝えておきたいことが……」

ゆっくりと、この張り詰めた空気の中に染み渡るような穏やかな声で、千田は語りかける。陸はそれを、ダイニングテーブルに腰をおろして、少し距離を置いた状態で黙って見届けることにした。

「……俺に?」
「うん。大河さん、退院した日は東京のマンションに泊まってたんだけど、俺ちょうど東京で仕事があったから見舞いに行ったんだ。その日は朝いちで東京戻って仕事して、次の夕方の収録まで時間がたっぷりあったから、おやつ持参でさ。
それで、大河さんといろいろ話してた中で、鈴野の話になって」

きっかけが何だったかは忘れたが、もしかしたら大河の方から直希の話題を出したかもしれないと、千田は思う。
千田が兄の恋人であり、自分たちの関係を知る人間でもあり、そして千田という人間自体が安易にペラペラしゃべる奴ではないと信頼している大河は、気を許して直希のことを話したのだ。

「あのときの大河さんがすごく印象的で、会話、全部覚えてるんだ」

あんな風に話してくれたことは、今まで一度もなかったから。

「大河さんは"チダちゃんと俺だけの秘密ね"って言ってたけど、俺の判断で、鈴野に話してあげるよ」

あのときはただの照れ隠しだと思っていたが、きっとそこには他の意味もあったんじゃないかと、千田は今ならそう思えるから。
あれは、直希との関係を迷っていた大河が思わず出した本音で、それを知られたら直希と離れられなくなることを知っていたからだと。だから、"秘密にして"なんて、彼は冗談交じりに、千田に裏を読まれないような口調と表情で言っていたのだと。

「それを聞けば、大河さんが鈴野にさよならを言った意味が、きっと分かる」

千田がそう告げると、直希が静かに顔を上げた。
それを確認して、千田は話してやることにした。

『大河さんは、どんな風に鈴野が好きなんですか?』

会話の流れで、何の他意もなくそう言った千田に、

『ん?そうやなぁ……』

いつものように照れたりはぐらかすこともなく、優しく笑った大河が、少し考えてからくれた言葉の数々を―――


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