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「最愛(直×大)」
5:臆病者の嘘

最愛 5-1

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【5:臆病者の嘘】

2人きりになったリビングのソファに、陸と千田は並んで座っていた。
先ほどまで同じ空間に居た直希は、もうこの場には居ない。"行くべき場所"へと、向かっていった。

「ずいぶんペラペラ喋ってもうたな」

大河に怒られるで、と陸がフッと笑いながら呟く。
でもその陸も、千田の話を聞いて、納得したのだ。

『冷めるわけがない。根拠はある』

数日前、陸が打ち明けたときに言った、千田の言葉の意味を。
大河が直希に冷めるわけがないと、

『寧ろ大河さん、鈴野のこと、めちゃくちゃ好きだよ』

だからこそ、怖くて離れたのだと。

「大河はきっと、お前やから話したんやぞ?」

口調では嗜めるようなことを言いつつ、陸の本心は全く逆だ。よく言ってくれた、と。
それを分かっているから、千田も一切悪びれる様子も後悔する様子もない。

「責任は、俺がもつよ」
「ん?」
「大河さんに怒られても、別にいい」

これを話せば、それを知った直希が大河から離れられなくなることぐらい、容易に予想つく。あんな話を聞いてしまったら、想いは一層強くなるはずだと。しかし、それでいいと千田は思うのだ。

「大河さんの気持ちは分かるけど、それでも大河さんの判断は間違ってると思うって、俺言ったじゃないか」

千田は優しいが、決して優柔不断ではない。しっかりとした芯の強さや頑固さも持っている。

「俺は、自分が正しいと思うことをする。大河さんにもそう言ったし。"覚悟しろ"って言ったら"わかった"って言ってたから、文句なんて言えないはずだ」

何を覚悟しろと言ったわけではないが、それでも頷いた以上は約束は成立だ。言葉が足りないのは、嘘やだましとは違う。
そんな意味を込めて千田が強く真っ直ぐな瞳で言うと、陸はしばらくキョトンとしてから、

「お前にはかなわんな」

フッと、笑った。

「また惚れ直したわ」

思わず素直な本音をもらせば、今度は千田が真っ赤になる。それがおかしくて、陸は今度ははっきり笑った。それからギュッと、その体を強く抱きしめた。

「大丈夫、俺も一緒に責任もつから」

そもそも自分が直希に話したことだって、大河からは暗に口止めされていたことなのだから、同罪だと。

「それは心強いな」

素直に、背中に回される千田の腕。
自然に、どちらからともなく重なる唇。
何があってもこの人さえ傍に居れば、この人が居るからこそ自分も強くなれるのだと、互いにそう思える。
直希と大河も、それは同じはずだ、とも。

「今日も泊まってけよ」
「俺もそのつもりだった」
「はは。気が合うな」

今日が終われば、来週のクランクアップまで千田は戻らない。そして映画がクランクアップすれば、実と拓郎への報告も待っている。そしてPOLYGONの面々にも。これは、陸が決心していることだし、千田も同じことを思っている。しっかりと話をした上で、みんなで大河を支えていくべきだろうと。母と同じ運命を辿らせるリスクは、できる限り減らさないといけない。
そして今自分たちがこうしてここで寄り添い合って、こうして悩みを分かち合えるのは、荷物を分け合えるのは、一度は途切れた絆を繋ぎなおすチャンスを大河がくれたからだ。直希が大河に同調して協力してくれたからだ。
だから今度は、自分たちが彼らの糸を繋いでやりたい。きっと繋がってくれる―――そんなことを願いながら、彼らがくれたこの大切な絆を噛みしめるかのように、2人は貴重な夜をスタートさせた。





陸のマンションを飛び出すように出た直希は、車を発進させると、ひたすら道路を走り抜けていた。
世の中は春休みシーズンであることと日曜日の夜ということで渋滞も人通りも激しく、思ったほど進んでくれない。
恐ろしいほどに前を凝視している直希の強張った表情の理由は、青になっても歩行者に邪魔されて曲がれないからでも、渋滞への苛立ちでも、振ったり止んだりを繰り返している雨のおかげで見づらい前方に対してでもなく。ひたすら脳裏に蘇る、陸が打ち明けた事実と、そして千田が話してくれた大河の言葉で。

『大河さんと話してて鈴野の話題が出て、俺が、鈴野は大河さんのことが本当に好きなんだねって言ったら、大河さんは"どうかなぁ"って照れ臭そうに笑ってて。
だから俺、訊いたんだ。大河さんは、どんな風に鈴野が好きなんですか?って…』

ストレートに思わず訊いてしまった千田に、大河は……

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