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「最愛(直×大)」
5:臆病者の嘘

最愛 5-2

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『俺、訊いたんだ。大河さんは、どんな風に鈴野が好きなんですか?って…』

ストレートに思わず訊いてしまった千田に、大河は……


*****


数週間前。

「大河さんは、どんな風に鈴野が好きなんですか?」

ソファに寝転ぶ大河に、ソファを背に座っていた千田がそう問うと、

「ん?そうやなぁ…」

あまりの直球に一瞬驚いた顔をしたものの、大河はすぐに優しく笑って、少し考えて。

「敢えて考えることがないぐらい、って感じかな」

まずは、そう言った。

「直希は前向きで明るい性格やけど、俺とは違う。俺はいつも笑って誤魔化すけど、直希はホンマに笑えるときにしか笑わないし、マイナスな感情もはっきり出してくるし、言葉にも出してくる。
だからアイツといると、俺が出せない感情を出してもらってるみたいで。気が付いたら傍に居てくれて、そうやって俺の分を吸収して出してくれてるっていうんかな」
「楽にしてくれるってこと?」
「うん、そういうことになるかもね。もちろんそこに逃げるってことやなくて、アイツがそうやって俺の感情を代わりに吐いてくれるとね、ちょっとだけ肩の荷が軽くなって、また頑張れるんよ」

ゴロゴロと、まるで猫のようにソファで転がりながら、大河は笑う。
たくさんのものを背負う彼の、その荷物を直希がほんの少しだけ軽くしてくれる、それを全身で表現しているようで、千田は温かい気持ちになった。

「でもな、それだけではないで?」

楽にしてくれるから好きというわけではないと、ゴロン、と千田に体を向けた大河が、子供のように無邪気な顔で笑いかけてきて。
思わず頭を撫でたくなるというのはこういうことだろうかと思いながら、千田は年下なのでそこは控えながらも、先を促すように彼に近づいた。

「俺のアイツへの"好き"はね、いろんなものの積み重ねっていうか、これっていう理由って、実際はなくってね」
「分かります。そんなもんですよね、人を好きになるって」

人の気持ちに理屈なんてないと、千田もしみじみそう思う。だから素直に同調すれば、大河はまた嬉しそうに笑った。

「あ、そうそう、直希ってな、世界一美味いフレンチトーストが作れるんやで」
「フレンチトースト?」
「そう。アイツ料理あんまり得意じゃないくせに、フレンチトーストだけは、世界一美味い。なんていうか、あれって好みが出るやん?アイツが作るやつは、俺の好みのドストライク。俺フレンチトースト好きなんやけど、今まで食べたどれよりピカイチ」

あれだけはどんな人気カフェでも高級ホテルでも敵わない、と、断言して。

「アイツはね、俺のお節介焼いて構い倒すエキスパートやね。
気付くと傍で、俺の代わりに感情吐き出してくれて。
気付くと傍で、世界一美味いフレンチトースト作ってくれて。
気付くと傍で、俺に"大丈夫"って言ってくれる。それが気休めやろが何やろが、アイツの言う"大丈夫"が、俺はいちばん安心できる」

頼んでもいないのにさ、と。そんな、他の誰かにはできないことを、当たり前のようにやってくれる直希のことを、日常の行動のひとつとしてくれている彼のことを、大河は愛おしく思うのだと。

「ケンカもバカ騒ぎも何でも、俺らは全力やから騒がしいはずなんやけど……でも、何やろね、騒がしいのに、穏やかっていうのかな。矛盾してるけど、そんな感じ。
そんな風に、俺のアイツへの"好き"はいつもさりげなくあって、空気の中に漂っとるみたいで」

そう、まるで、当たり前の感情として、自分の傍にあって。
当たり前すぎて考えもしないほど、いつも……

「そういう意味で、敢えて考えることがないっていう、"好き"かな」

千田が他の仲間のように冷やかしたり茶化したりしないことを分かっているからこそ、恥ずかしげも無く大河はそう打ち明けてくれた。

「いいね、なんかそういうの」

何だか自分まで幸せな気持ちになって、千田は目を細めた。
肌の白い大河は午後の日差しに照らされて、本当にキラキラ輝いているように見えて。
いつもバカなやり取りばかりしている直希と大河のカップルがもつ、不思議な魅力の正体を、そこに見た気がした。

「大河さん、幸せ?」

大河の胸元に光るリングに思わず手を伸ばしながら、訊くまでもないが千田がそう訊ねれば、

「うん」

チダちゃんたちに負けないぐらい、と。千田の頭を撫でながら、大河が大きく頷く。

「たぶん俺、今がいちばん幸せなんかもな」

大好きな仕事ができて、大切な人が傍に居て、その人に愛されて。

「今なら死んでも何の悔いも残らんぐらい、幸せやね」

冗談交じりに彼は、最後に笑ってそう言った。


*****

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