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「短編作品」
不本意の愛嬌(実×大)

不本意の愛嬌-1

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安藤大河の長所は、打算なく滲み出てくる愛嬌。
彼が何の気なく自然に取る行動には、法則性もタイミングもない。
だから、付き合いたての、まだまだ若い恋人にとっては、時と場合によっては試練でもあって。

―――勘弁してくれ、大河よ……

今日も実は、クールな顔をさりげなく歪めて溜め息を吐く。




「ただいま~♪」

ラジオ収録現場。スタジオの扉を開けるなり、大河がキラキラとした瞳を実に向けて上機嫌にそう言いながら、コンビニの袋を揺らした。
ようやく戻ってきたかと、ソファに腰かけていた実は資料を置いて、近づいてきた大河からその袋を取り上げる。テーブルに居た直希と拓郎も、近づいて来た。
3人が中を覗けば、そこにはカップアイス2種類と棒アイス2種類、見事にそれだけで。自分たち4人だけじゃなくスタッフやマネージャーの分も買ってきてくれたようだが……

―――いやいや、違うだろ、大河…

3人同時に、思わず溜息が洩れた。

「返せよ~。早く食わないと収録始まるで」
「俺らが頼んだカツサンドと焼きそばパンとピザまんは?」
「忘れた」
「は?」
「仕方ないやんか。アイス選んでたら時間なくなってしまったんやもん」
「ったく……」

どうしていつもこうなのだろうと、実は頭を抱える。頼まれたものを先に買えよと。だから自分や陸に小言ばかり言われるのだということを、そろそろ学習してくれないだろうかと。
とはいえ、確かに大河の言う通り、ラジオ収録が始まってしまうしアイスも溶けてしまうので。

「で、お前はどれがええねん」

袋から種類の違うアイスを1つずつ取り出して、どっちがいいんだと実が問い掛けると、

「両方」

間髪入れずに、そんな言葉が返ってくるから。

「数も時間も足りなくなるやろが」

大河の頭を叩いて、軽くお説教。
そんなやりとりを、拓郎と直希は顔を見合わせて笑うばかりで。

―――お前らは甘いねん、大河に

関西人のボケとツッコミがはじまったとばかりに笑う2人に、実は軽い睨みをきかせた。

「だいたい、この寒さの中で2個も食ったら凍えるで」
「平気平気」
「平気ちゃうやろが」

人一倍寒がりのくせして、と実は、強引に1つを主張する。ちなみに拓郎と直希は、袋を漁って周りにも振る舞いながら、既に食べ始めている。

「今は1つや。どれやねん」

改めて実が強く言えば、

「んじゃ、こっち…」

大河も妥協して、チョコの棒アイスを手に取った。実もバニラのカップアイスを手に取り、残りは袋ごとスタッフに渡した。
そのまままたソファに腰かけた実は、大河を隣に促す。備え付けのスプーンを唇に銜えながら、何気なく隣に視線を向けると……

「あれ?あれ??」

ソファで器用に体育座りしている大河は、アイスの袋が開けられずに奮闘していた。
基本的には器用なくせに、時々こうして恐ろしく不器用なのが大河だ。

「お前なぁ、袋も開けられへんくせにアイス買うなや」
「こ、これは特別やんっ」
「んなことやっとる間に溶けるで?暖房効いとるし、この部屋」

だから貸してみろ、そう言って実は手を差し伸べたのだが、大河が軽く無視してくる。実は思わずフッと笑った。

「何を拗ねとんねん」

可愛いだけなんだから……という言葉は、心の中だけで呟くにとどまらせて。
すると、

「ほら、貸してごらん大河」

トイレから戻ってきた陸(今日のゲスト)にアイスを渡しに来たついでに近づいて来た直希が、そんな大河を"可愛くてしょうがない"と顔中に書いて、手を差し伸べる。すると大河も、今度は素直に直希に手渡した。

「直希、自分でやらせろて。じゃなきゃ一生コイツは、"アイスの袋が開けられへん男"として暮らしていくんやぞ?」

いちいち仲睦まじい相棒コンビに悔しい気持ちを隠しながら、実は直希に抗議をするが、それすら直希は実らしい毒舌だと笑うだけ。
しかし、直希から少し遅れて実たちの前にやってきた陸が、大河と同じチョコアイスをかじりながら"いろいろお見通し"という顔で実に視線を向けると、

「お前、意外と分かりやすいな」

小さい声で、楽し気にからかってくる。
その意味を、もちろん直希は分かっていないから軽くスルーしているし、大河は直希に託したアイスに夢中で聞いてもいないのだが、実には当然意味が分かるから、

「陸さんには適わないですけどね」

ニヤリと笑って、陸に視線を返す。そうすれば当然返す言葉がない陸は不敵な笑みを返すだけで、タイミングよくスタッフに話かけられてその場から少し離れて行ってしまった。

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