FC2ブログ

「最愛2(直×大)」
2:静かな足音

最愛2 2-1

 ←『最愛2』更新スケジュールについて →最愛2 2-2
【2:静かな足音】

翌日も、大河の状況は思わしくなかった。
貧血の改善は一切見られず、その日も輸血は行われることになり、

「大河さんよかったね。朝からお見舞い来てくれて」

陸を始め皆仕事の都合で朝は来ることが出来ない中、直希だけが付き添う病室内。黒崎が彼独自の軽い口調でそんな声をかけながら、手際よく処置していく。そして直希と大河両方に軽い説明をすると、黒崎は優しく大河の肩をポンと叩き、看護師らと共に部屋を出て行った。
春の日差しが降り注ぐ、静かな病室。
起き上がろうとしている大河に気付いた直希は、慌ててベッドの端に座って近づいて体を起こしてやると、優しく抱き寄せた。

「横になってれば?」

座っていたら辛いんじゃないかとそう声をかけるが、大河は静かに首を横に振る。

「…ちょっと、背中痛いから」

状況は変わらないが多少会話ができるようになった大河の言葉に、直希も納得して。

「寝てばっかりだったからね。じゃあ、俺に寄りかかっていいよ」

と掴んだ肩に少し力を入れると、その体は何の抵抗もなく直希に凭れた。
そのまま何となく、2人で窓を眺めて。

「「春だな(やな)~」」

2人同時に、そんな言葉が漏れると、

「…以心伝心やな」

少しだけ顔を動かした大河が、直希の服の裾を引っ張りながら、昨日黒崎が言った言葉を使ってそう笑う。それはとても笑顔とはいえない弱々しいものだったが、自分も合わせてやろうと、直希も笑顔を見せた。
しかし、

「せっかく春やのに、こんなとこ居させて悪いな」

ポツリと大河がそんなことを呟いて。

「あんま来なくてええで?」
「え?」
「…俺がこんなんじゃ、直希まで具合悪くなってしまうから」

そんなことまで言うものだから、

「何言ってんの」

直希はさすがにたまらなくなって、お人好しもいい加減にしろとばかりに、更に抱き寄せた。

「大河が心配すぎて、そんな余裕ねぇし」

そして、口元に当たった彼の黒髪にキスを落とす。すると大河も、素直に寄り添ってきた。
そんな風に大河を抱き寄せていれば、

「なんかさ、思い出すね」

ふと、いつかの光景を思い出して、直希は苦笑いで口を開く。
すると、大河が「ん?」と顔を向けてきた。

「3~4年前だったかな。俺、ベロベロに酔っ払って大河んチに押しかけて、超迷惑かけたなって。あのときは、俺が寝れなくて大河に付き合ってもらったじゃん」
「ん?ああ…」

大河も思い出したのか、うっすらと笑みを浮かべた。
あの日、友人を強引に呼び出して無茶な飲み方をして。友人たちに引っ張られるようにしてタクシーに乗せられた直希は、あろうことか、大河のマンションを運転手に告げていた。

「深夜だっていうのに、次の日オフだっていうのに、ひとつも嫌な顔しないで部屋にあげてくれて。俺、あそこまで酔ったら普通記憶なんて飛ぶのに、何故かあの日のことだけは全部覚えてるよ」
「俺も、なんか、心配やったのは覚えてるよ」
「ほら。やっぱいい奴だ、大河は。普通の奴なら怒るから、そこ」

いくら相棒とはいえ、あれは非常識極まりない。怒ってくれていいところなのに、あの日の大河はただただ、心配してくれた。変な酔い方をした自分に、寄り添ってくれた。

「今だから言うけど、あれ、大河の邪魔しようとしたんだ、俺」
「え?」
「あの日俺、誕生日でさ。最後の仕事はPOLYGONの仕事だったし、ついでに誘おうかなって思ってたら、大河はデートだって言って帰っちゃって。みんなに冷やかされてた大河の嬉しそうな顔が、そんなの当たり前の反応なのに、なんか悔しくて。そしたらその後ちょうど友達から連絡来たから気分転換がてら飲みに行ったんだけど、友達がせっかく祝ってくれてるのに、そのことばっか考えてあんな飲み方して」

タクシーに乗った瞬間、大河は今頃彼女と一緒に過ごしているのだろうかと、思ったら。
気が付けば、大河のマンションへと向かっていた。

「行ったところで何ができるわけじゃないだろうし何も考えてなかったけど。
でも実際行ったら大河は一人で。なんか、めっちゃくちゃホッとして。アホだよね。
酔ったついでにキスのひとつでもしちゃおうかとか思ったのに、ホッとした瞬間、超気持ち悪くなってた」
「…ハハ。何や、そうやったんか」

大河が、またフッと笑う。
そう、大河は決してそういった行動を咎めない。理由が分かってよかったと、そうやって笑ってくれる。いつもそうだ。他人のおかしな行動に何か理由がありそうだと感じれば、どんなに自分が巻き込まれようが付き合ってくれる。だからあの日も、彼はひたすら根気強く付き合ってくれた。

『ぎぼぢわりいぃ~~』
『当たり前や。そんなベロベロになっとったら。だから吐け。ええから』
『ヤだ~~』
『ガキかお前』
『だっで大河んヂじゃないが~~』
『お前が来たんやろ。ここトイレやし、気にせんでええから』
『ぜってぇぇヤだっ。ヤだもんっ』
『もん、って…』

「酷かったよね、あれは」
「あんな風に駄々捏ねる成人男性、初めて見たわ」
「俺があんまり聞き分けないからって、最終的に大河、俺の口に指まで突っ込んで吐かせてくれたんだよね」
「めっちゃ抵抗されたけどな」
「だって、好きな人の手ぇ汚すとか、無理でしょ」

こんなに綺麗な手、と、大河の手をとって直希はその指にチュッとキスをする。
トイレで子供のように駄々を捏ねて"気持ち悪い"を繰り返した自分に、袖をまくって迷わず指をつっこんできた大河は男前だったが、誰にでもこんな風に優しいのだろうと思えば、あの頃の自分は勝手にまた落ち込んで。
でも、

『大河、誰にでもごんなごどずんの?』
『は?まさか。トイレには付き合っても、指突っ込むなんて、後にも先にもきっとお前ぐらいや』
『え?』
『お前みたいな聞き分けの悪い奴、周りに居らん』
『ああ…(そういうことかよ)』

どんな理由であれ、自分が彼の特別だったことを意識すれば、また期待が沸き起こって。

『大丈夫か?ホンマにどうしたん?』

そんなことを言いながら、一晩中付き合ってくれた彼が。
翌朝には、自分が寝ている間に二日酔い用のドリンクと朝ごはんを買ってきてくれた彼が。
肩を落として猛反省する自分に、頭をひと撫でして笑って許してくれた彼が。
どうせ自分も予定が無いからと、結局夜まで家に置いてくれて、風呂も貸してくれて洗濯までしてくれた彼が。
前日自分が誕生日だったことをちゃんと分かっていて、自分を送りがてら夕飯を奢ってくれた彼が。
今こうして苦しんでいるのを見て、心配以外に何をするというのだろう。

「あのときの俺みたいなのをね、"一緒に居て具合悪くなる"っていうんだよ」

だから変な心配も気遣いも要らないと、直希は改めて大河を抱き寄せる。
すると大河が、弱々しい力であれどペシッと直希の腿を叩いてきた。

「あれと一緒にすな」
「アハハ。ですよね~」

的確なツッコミを頂いて、いつもどおりの雑談が成立して、大河も笑ってくれて。
自分といつも通りの雑談をすることが、きっと大河にとって一番の安らぎなのだろうと思えば、直希はまた何か自分が一方的に喋っていられるような話題をと考えたのだが、

「……っ…」

大河が、少し辛そうな顔をして凭れてきたので、

「大河、座ってる時は体勢このままでいいからね?こうしてる方が楽でしょ絶対」

直希も雑談をそこで切り、彼の頭を優しく撫でる。

「俺が来てる時はこうしてな。俺、ラジオと番組収録以外はほぼ仕事無いし、毎日来るからさ」
「無理するなよ?兄貴にも、そう言うといてな」
「そのセリフ、俺と陸さんからそっくりそのまま大河に返すよ」

それからしばらく、大河が横になれるまで、2人は頭をくっつけ合って目を瞑っていた。
久しぶりの、こんなに近い気配。

「大丈夫だからね、大河」
「うん」

何の根拠もないその言葉に安心したように少し笑った大河が、直希にはただただ愛しくて、ただただ切なかった。

関連記事
スポンサーサイト



↓ランキングに参加しています。
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL恋愛小説へ

総もくじ 3kaku_s_L.png SS
総もくじ 3kaku_s_L.png Turning point(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 悪魔たちの狂想曲(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 立ち入り禁止(誠×風)
総もくじ 3kaku_s_L.png Old flame(実×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 最愛2(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 最愛(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png COOL(実×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 女は災い(陸×千)
総もくじ 3kaku_s_L.png 交差点(実×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 恋人たちのクリスマス(ミックス)
総もくじ 3kaku_s_L.png Hide-and-seek(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 直感(春×歩)
総もくじ 3kaku_s_L.png Assist(春&歩)
総もくじ 3kaku_s_L.png 一時停止(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png Engagement(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png アゲイン(陸×千)
総もくじ 3kaku_s_L.png Beyond Silence(W大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 恋愛プロセス(拓×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 満月の夜(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 痴話喧嘩(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 白い恋人(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png reward(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 君と見る空(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 極夜(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png シンクロニシティ(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png Stranger(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png その先へ(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 優しい嘘(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 【あとがき・雑記】
総もくじ  3kaku_s_L.png SS
総もくじ  3kaku_s_L.png Turning point(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 悪魔たちの狂想曲(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 立ち入り禁止(誠×風)
総もくじ  3kaku_s_L.png Old flame(実×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 最愛2(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 最愛(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png COOL(実×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 女は災い(陸×千)
総もくじ  3kaku_s_L.png 交差点(実×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 恋人たちのクリスマス(ミックス)
総もくじ  3kaku_s_L.png Hide-and-seek(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 直感(春×歩)
総もくじ  3kaku_s_L.png Assist(春&歩)
総もくじ  3kaku_s_L.png 一時停止(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png Engagement(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png アゲイン(陸×千)
総もくじ  3kaku_s_L.png Beyond Silence(W大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 恋愛プロセス(拓×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 満月の夜(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 痴話喧嘩(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 白い恋人(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png reward(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 君と見る空(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 極夜(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png シンクロニシティ(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png Stranger(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png その先へ(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 優しい嘘(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 【あとがき・雑記】
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  • 【『最愛2』更新スケジュールについて】へ
  • 【最愛2 2-2】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【『最愛2』更新スケジュールについて】へ
  • 【最愛2 2-2】へ