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「最愛2(直×大)」
4:声

最愛2 4-2

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―――……

帰らないと、と思ったと同時に、パタリとその声が止んで。
代わりに自分の耳に入ったのは、無機質な機械音。
瞼が重たくて、でも今までの暗闇とは違う明るさを感じて。
そっと目を開けて見えたのは……

―――あ…

白い天井。
ここ数日、何度も見ていたそれ。

―――生きてるん…か?

天井は同じようで違う気もして、ただそれだけを思った。
意識が混濁して、目を瞑る前のことはよく覚えていない。
ただ、たくさんの人が自分の名を呼び、そしてそれに答えようと必死で目を開けていようとしていた。
その中に、彼の声があったから。
この声の主を置いていってはいけないと、強く思っていた。
それでもどうしても瞼が重たくなって、苦しくなって。

『ごめん』

そう口にしたいのにできなくて、やるせない思いで意識を手放した。
次に目を覚ましたとき、また彼が居てくれたら…なんて。限界すぎて、逆にそんな呑気なことを考えた気もする。
そういえばあの声は、どうなったのか。
今も直前まで自分を呼んで、昔の想い出を見せてまで、"帰ろう"と思わせてくれた相手は。

体が鉛のように重くて動かず、頭を動かすことすら気分が悪くて、視線だけを動かした。
窓があった方へと視線を向けても、そこに見えるのは何やら音を立てる機械。
いったいここはどこなのだろうかと思案しているうちに、頭も、何とか少しだけ動いて。
やがてそこに、人影が見えた。
壁に凭れて頭を下げている人物は、眠っているのか、あまり動かない。
眼鏡をかけていないせいか顔の判別はつかないが、自分には誰だかすぐ分かった。
その明るい髪は、耳に光るピアスは、均整の取れた体は、足の組み方は、一人しかいない。
だからその名を呼びたいのに、声を出そうとしても、カラカラに乾いている喉からは声が出なくて。

―――直希…

気持ちだけで彼を呼べば、その肩がビクンと震え、

「…………」

顔を上げながらうっすらと目を開けた彼が、自分を見た。

―――直希…

声にならなくて、でも必死で呼ぶ。

「大河……?」

彼の声が、自分を呼んだ。

「……な…ぉき」

呼びかけに答えたくてやっと出た声は、自分でもようやく聞こえるかどうかのもので。だからなのか、彼はまだ自分を凝視しているだけ。
目が覚めたことも声を出していることも、気付いていないのだろうか。そんな風に思って、彼に手を伸ばした。





―――直希…

微かに、しかししっかりとそう呼ばれた気がして。
はっと顔を向けると、虚ろとはいえ、こちらをジッと見つめている彼が居た。

「大河……?」

直希が思わず呟くと、黒崎と話をするためにICUを出ようとしていた陸と海斗も視線を寄越した。

「……な…ぉき」

酸素マスク越しに呼びかけてくるその弱々しい声は、さすがに陸と海斗には届かなかったが、直希にはしっかりと聞こえて。
しかし、覚醒したばかりの直希には、事態が飲み込めていなかった。
ついさっきまで、どんな呼びかけにも応えてくれなかった大河が、自分が少しベッドを離れて転寝をしている間に目を覚ますなんて、と。
そんな直希に不安になったのか、大河がフラフラと手を少しだけ上げて伸ばしてきた。

「……大河…」
「………っ、」

呆然とする直希に伸ばされる手。弱々しい力で、でも必死に伸ばしてくる。
陸と海斗も、思わず硬直してそれを見ていた。

虚ろに、しかししっかりと直希を見つめる瞳。
伸ばしてもそこで維持できずに、パタリと落ちる手。
それでもまた腕を上げて、手を伸ばす。そしてまた落ちて、また上げて…
必死で、直希を求めて―――

「―――大河っ!」

飛び上がるように駆け寄った直希は、その手を強く握り締めた。

「大河、大河。わかる?」

差し伸べられた手を掴んで呼びかける直希に、大河が小さく頷く。

「なおき……なお…」
「大丈夫、俺ここに居るよ。よく頑張ったね?」

危険が回避できたかは分からないが、彼の意識が戻ったことが嬉しくて笑顔でそう言えば、大河は目を細めて小さく微笑んだようで。
子供のように真っ直ぐに見つめてくる、澄んだ瞳。そこにはっきりと、自分が映っている。
愛しさがこみあげて、直希は頬をすり寄せるように顔を近づけた。

「「大河っ」」

ハッとして、陸と海斗も駆け寄った。

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