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「最愛2(直×大)」
5:たしかな光

最愛2 5-2

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最愛2 5-2

この黒崎という医師は、大河の主治医になってからずっと、こうして軽い口調で緊張感や恐怖感を和らげてくれていた。だからといって事実をひた隠しにすることもなく、正直に話してくれる。そのうえで、どんなに差し迫った状態でも、飄々とした笑顔で落ち着いて対応し、バックアップをしてくれていた。
だからこそ大河もこの医師を信じ、その信頼関係が治療にも大きく影響したと思っている。

「先生、俺ね、この病気になって、いいことたくさん知りました」

だからこの人にどうしても伝えたくて、今度は大河が口を開いた。

「この病気にかかって、あんな事態になって。そうならなきゃ分からなかったこと、経験できました。
だから俺、これからは病気と闘うんやなくて、共存していこうと思います」
「……え?」
「これも俺の一部、俺の特徴。俺じゃなきゃ経験できないことさせてくれるんやから、それぐらい思ってあげないとねぇ」

本当にそう思えるようになったから、大河はありのままの言葉でそう伝える。黒崎は、そんな大河を不思議そうに見つめたままだ。

「俺のオカンは看護師やったんですけど、小さいときに亡くなって。同じ病気が原因で。先生も知ってますよね?」
「ええ」
「オトンがね、よくオカンの話してくれるんですけど、人の命を預かる仕事をしてたって、よう言ってて。すごいなぁって思ったけど、なんか漠然としてたんですよね」

命を預かることがどういうことかなんて、壮大すぎてピンとこなかった。それは、大人になってからも変わらなくて。

「でも今回、初めて自分が当事者になって、分かりました。先生たちの努力はすべて、自分以外の誰かを救うためにあるって。自分以外の誰かを救うために、先生たちは寝る間も惜しんで勉強したり、たくさん悩んだりする。
そうやって、先生や看護師さんたちが長い時間をかけて身につけたものが、今回、たった一人の命を生かしてくれたんです。先生たちの知識のどれが欠けても、俺はここにいない。それってすごいことですよね」

自分の命が助かったことで、また大好きな仲間たちと大好きな仕事ができる。父と兄を悲しませずに済んだ。直希に対して嘘つきにならずに済んだし、彼の笑顔を守れた。
そう。黒崎たちは、お金では買えないものを守ってくれた。そう思うからこそ大河もまた、彼らに感謝の言葉をいつでも自然に伝えていたのだ。
だから真っ直ぐ黒崎を見つめて、いつもとは違って脱線もせずボケもせずに最後まで告げれば、

「……なるほどね」

しばらくポカンとしていた黒崎が、目を細めて笑って。

「そんな風に言ってくれる患者さん、なかなかいませんよ」

本当に参るな、と頭を掻きながら窓に視線を戻して笑い続ける。

「確かに僕たちは、人様の命を助けるために日々勉強します。でもね、大河さん」
「はい?」
「医者はね、神ではないんです。世界一腕の良い医者だって、救えない命はあります。
今回の件は、大河さんにかかってました。救えるのか救えないのか、大河さんが持つ力に」

医療には限界がある。その限界を伸ばすには、患者の意志や生命力に左右されるものは多い。
病は気から―――とは、決してただの諺でないのだ。

「あなたの命を生かしたのは、僕たちだけじゃない。あなた自身でもありますよ」

黒崎はそう断言した上で、

「その勝負強さ、ぜひまたステージやテレビで見せてください。ライブ、今度僕も嫁と行きますよ」

夫婦でファンクラブ入っちゃおうかなぁなんて言いながら、黒崎は大河の肩に優しくポンと手を乗せて、また笑う。そこへタイミングよく昼食が運ばれてきて、そのまま黒崎は去って行った。

「って、あんたもラブラブやんか」

昼食を持ってきた看護師にちょっかいをかけているその姿を眺めながら、大河は思わず呟いて。せっかく見せるなら最高のステージを見せてやろうと、また熱い気持ちが沸き起こるのを感じた。
黒崎はもちろん友人ではないが、特別な存在であることは確かだと、大河は思う。ただの主治医だけではないと。
友達というほど近くはなく、医師と患者というほど距離があるわけでもない。そんな、不思議な関係性だ。
それは、黒崎もまた、同じことを思っていた。

「別のとこで会ってたら……か」

ラウンジを出て、廊下を歩きながら、先ほどの大河の言葉を繰り返してみる。

―――確かに自慢のダチになってただろうな、あれは

そんなことを考えてフッと笑いながら、自分もたまには学生時代の友人にでも連絡してみようかなんて思った黒崎だった。

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