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「Old flame(実×大)」
7:陸の告白

Old flame 7-6

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「俺別に、無理してませんから」

実はそうきっぱりと言い放って立ち上がり、

「失礼します」

さっさと部屋を出ようとするが―――

「待て」

同じように立ち上がった陸が、実の腕を引いた。

「今日は、行くなよ?」

見透かすように、鋭い瞳が見上げてくる。

「今日は何話しても無駄やで」
「は?何言うてるんですか?」

こういう問題は、時間が解決するものでもない。むしろ、時間が経てば経つほど、複雑になっていく。
実はそう思って眉をしかめたが、陸は首を横に振った。

「そっとしといてやれ。何話しても、今日はアイツ追い詰めるだけや。そしたら実も気分悪いやろうし、疲れるだけや。余計こじれるで」
「………」
「今夜中に解決できる自信があるなら話は別やけど、無いなら今日はやめとけ。別に、今日明日で何も変わらん」

明日のイベントが終われば時間的にも精神的にも少しは余裕ができる。その方がきっといいと、陸は断言した。

「気が気やないかもしれんけど、でも実も、少し考えな。ホンマにアイツでええんかどうか。今なら引き返せるから」

関係が始まってまだ数か月の2人なら、まだ…と。
しかし実は、自分の腕を掴むその手を静かに下ろさせると、

「俺は無理ですね」

小さく首を横に振って、

「最初から、引き返すつもりなんてありません。そんな付き合いを、アイツと始めた覚えもない。少なくとも俺は」

はっきりとそう断言して、

「逆に訊きますけど、あんたは千田と付き合い出してから一度でも、今なら引き返せると思いましたか?」

それだけを告げて、

「忠告どおり今日のところはやめときます。失礼します」

今度こそ、部屋を出た。
残された陸はしばらく唖然とした後、

「思わなかったわ、確かに」

ハハッと笑って。

「ホンマ、いちいち言い方キツい奴やな……」

グラスのお茶を飲み干し、また笑った。





部屋に戻った実は、何気なく、昨日大河に打ち明けられた冴島の行動を考えていた。
実への想いを封じさせるように追い込んだ冴島の言い分は、大河という人間の性格をよく知った上でのやり方だと思う。大河を理解しているからこそ、追い詰めるような言い方をしたのだろうと。
冴島が実の気持ちにまで気付いていたとは思えないが、それでも勝手に結論をつけて大河から希望を失わせた上で、自分の手中に収めようとした。
そう。好きだから、手段を選ばなかった。
きっと冴島のことだから心は痛んでいたかもしれないが、それでも、何か始まってしまう前に大河の心を自分に向かせようとしていたのだ。
そして彼はきっと、そんな過去を反省している。

『俺ね、大河さんが幸せならいいんですよ。邪魔するつもりなんて全くない。俺を仲間やって、めっちゃ大事やって、あの人そう言ってくれたから、俺もそうでありたい。それは嘘じゃありません』

あの言葉に嘘はなかったはず。
相手が居るのに力づくで手に入れたところで、それは大河の幸せではないのだと。
しかしもし、その相手と上手くいかないなら、

『幸せやないなら、俺でもいいですよね?』

4歳も年下相手に、怖いと思った。
それは、冴島が、というよりも……

『2人の関係を何もかも一掃はできないってことやな』
『大河さんの隙、俺、見つけるのも入るのも上手いんですよ』

彼が、大河を理解している相手だからこそで。
自分の方が大河を理解していると陸は言ってくれたが、その自分は、今それどころじゃない。

『そして今は、隙だらけです』

それを作ったのは、自分なのだ。

『……本気か?』

大河の、あの傷ついた顔が頭から離れない。
以前にも、不用意な言動で傷つけてしまうことはあったが、そのどの時でも大河はあんな顔はしなかった。ケンカ越しに言葉を捲し立てて、想いをぶつけてきてくれた。そうやって、傷ついたことを必死で訴えてくるから、実も対処のしようがあったのだ。実さえ自覚すれば、心から謝ってフォローして反省すれば済むことだった。
でも、

『実に嫌な思いさせて、俺やっぱ最低やな』
『実さんは悪くない。悪いのは自分なんやって。実さんは自分に振り回されたんやって……最後は、俺を怒ってまで庇うんやもん』
『実とのことは、何も話してくれなかった。"迷惑かけた"とは言うてたけど』

本気で傷ついた大河は、自分自身を責めていて。自分の殻に閉じこもってしまっては、実が何を言ったところで解決しない。

『さすがに疲れるわ、お前みたいなヤツ…』

昨日の、そんな言葉と繋げてしまうような、

『ホンマにお前は…』

今日の言葉と溜め息。お前はそういう人間なのだと、疲れるヤツなのだと、突きつけたようなものなのだから。
もうお前に付き合っていられない―――大河はきっと、そう捉えたに違いない。

『受け皿がないと、流れ落ちるだけやろ?』

誰にでもストレートに気持ちをぶつけて来るくせに、本当に悩んだときに抱え込んでしまうのが大河という人間で。そういうときは決まって、笑って誤魔化すから、どんなに聞きだそうとしても言葉にできない不器用さがあるから、だからそんな時は実は黙って抱きしめてやっていた。いつだってそうやって、自分が大河の感情を受け止めてやっていたつもりだ。
それなのに、ぶつける先を、あの言葉で奪ってしまったのかもしれない。
受け皿を失った大河の感情は、

『自分が夢中で追いかける恋愛よりも、相手に夢中になって追いかけてもらう恋愛に』

過去の、受け皿へと―――

「そしたら俺はどうなるんや、大河……」

ペットボトルの水をグラスに注ぎながら、呟く。
この感情は、いったいどこへぶつければいいと?
誰も気付いてくれなかった自分の内側を、見抜いて受け止めてくれたのは大河なのに。

『自分のためにも、大切にしないとね』

風見のあの忠告を、もっと真剣に受け止めるべきだった。

『"今回の話は考えとく"って』

―――俺から、逃げるつもりかよ…

『無きにしも非ずかな』


恋は、終わらせ方が大事だ。
強引に消してしまった恋は、火種がどこかに残ってしまう。

『何せアイツ、大河の恋愛を壊した前科持ちだからさ』

そんな過去の恋は、再び出逢ってしまった瞬間、再び火がつく可能性があるのだ。

『ミキを……俺も……好きになれたら…ええなって…』
『大河さんの隙、俺、見つけるのも入るのも上手いんですよ』
『自分が夢中で追いかける恋愛よりも、相手に夢中になって追いかけてもらう恋愛に』

そして、大河が過去に負けた瞬間に、

『大河が今誰と付き合ってようが、関係なくグイグイ来るでしょ。ミキに本気出されたら絶対勝てないって』
『兄としては、楽にしてやりたいって、思うよ……』
『突き放した瞬間に、脇からスルリと奪われちゃうからね?ああいうタイプは』

この恋は今度こそ終わるのだ―――

「冗談やないぞ……」

水を飲み干したグラスを睨みつけながら、実はそう呟いた。


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