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「立ち入り禁止(誠×風)」
1:危険区域

立ち入り禁止 1-4

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「なあ、誠」

不意に、風見の声のトーンが低くなった。
同時に、誠の首にしがみついていた腕が、ギュッと強くなって。
2人の密着度が、増す。

「りょ、涼太さん?」

どうしたん?と、必死で冷静を装いながら誠は、その腕を優しく叩く。苦しいよ、という意味も込めたのだが、風見は余計にしがみついてきた。
おかげで誠は、この場で心臓発作を起こしそうだ。

「涼…」
「誠ってさ、最近変じゃない?」
「え?」

変?と、誠が首を傾げると。
風見が、変わらず真剣なトーンで理由を告げた。

「誠、最近俺に壁作ってる」
「へ?作ってへんよ」
「いや、作ってる。今日だってそうだ」
「今日?あんたを背負ってる俺が?壁作ってるって?」
「そうじゃない。今朝、撮影スタジオで」
「あ」

そういうことか。と、誠もすぐに納得した。
確かに、今朝の自分は挙動不審だった自覚がある。
しかしそれならば"最近"ではなく、"今日は"じゃないか?
……そう考えて、不意に誠は、ぎくりとした。
もしかして風見は、自分の引いた生命線に、気づいているのでは?と。

『誠ってさ……』

あのとき風見が言いかけた言葉が蘇る。
もしかして彼はあのとき、今の話がしたかったのかもしれない。そう思えば、あの、何かを探るような視線の意味も理解できた。

「何か隠してるのか、俺に?」

食い下がる風見は、誠を逃がそうとしない口調で。
それでも誠は、

「隠してへんよ」

必死で逃げ道を探す。

「司に訊けば分かる?」
「は?何でそこで高ちゃんが出てくんの」
「だってじっくり話したくて飲んでたんだろ?そういう悩み相談とか、してたんじゃないのかよ」
「するわけないやん。だって悩みないし。あったら高ちゃんより涼太さんに先に相談してるって」
「本当か?」
「ホンマやて」

そう。悩みなら、たいてい誠は風見に真っ先に相談する。別にそういう約束をしたわけではないけれど、知り合って間もない頃は高校生だった誠にとっていちばん身近に居た大人が風見だったこともあり、いつの間にかそれが暗黙の了解になっていたのだ。
しかし、例外だってある。
風見にも言えない、風見にだけは言えない悩みだってある。
だから誠は、誰にも言わないのだ。
悩み事を他人に打ち明けるなら優先順位1番は風見で、その風見に言えない悩みなら、自分は誰にも言わない。そう決めた。

「心配してくれてありがとう。でも、俺は大丈夫やで涼太さん」

ポンポンっと、風見の尻を叩いてやって。自分の壁に気づいていた彼に、心の中でそっと謝る。

―――アカンな、俺。まだ詰めが甘いわ

またもや心の中だけで、苦笑い。
一人で抱えようとしたって、相手にその壁を見抜かれてどうするのだと。
それじゃ結局、こうして不安にさせるだけじゃないかと。

「涼太さんにも、壁なんて作ってない。俺は変わってへんよ」
「嘘だ」
「嘘やないて。壁なんて作ってたら、迎えになんて来ないやろ」
「……」
「ええ歳こいたヤローがこれまたええ歳こいたヤロー負ぶって帰るんやで?相当仲良くないとできひんと思わん?」
「……思う」
「そういうことやって」

自分としたら満点に近いぐらいの素晴らしい回答を誠がすれば、珍しく風見も早々と納得した。そして、

「俺と誠は仲良しぃ~~」

誠の言葉に少し機嫌を直したのか、適当なメロディに合わせてそんな歌を歌いだす。
自分との壁を感じただけで不安がって食い下がって来たかと思えば、納得のいく答えをもらった瞬間に笑顔になってくれる。そんな風に、自分のことで表情を変える風見が、誠はやっぱり愛しいと思った。
短気な自分が風見の屁理屈にカチンときて激しい口論になったこともあったけれど、"面倒臭せぇ"というひとり言を聞かれて激怒された時もあったけれど、そのどれもが、今となってはとても大事なものだと思える。

この人との絆を、歪めるわけにはいかない。
だから……

「そ、仲良し」

この人に気づかれちゃいけない。
改めて、誠はそう決意した。

「俺と涼太さんは仲良しぃ~~」

自分の心は、この先侵入禁止の危険区域。
絶対に開けてはいけない、禁断の扉で守られている。
境界線を越えたこの気持ちは、墓場まで持っていく。


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