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「立ち入り禁止(誠×風)」
4:タイムリミット

立ち入り禁止 4-2

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「…………」

皆の声が、少しずつ遠くなっていく。
だが、

「……こと、おい、誠」

こっそり眠りに入ろうとした誠は、肩を叩かれて小声で呼ばれ、仕方なく目を開けた。

「………?」

顔を向けると、高瀬が誠の腕を軽く引いている。

「……何?」

邪魔するなと思いつつも、それは表情には出さずに誠が極力いつも通りの声で答えれば、高瀬は誠に耳打ちするかのように顔を寄せてきた。

「お前、少し外の風当たってこいよ」

周りに聞こえないように気遣う、小声。

「きっと自分が思ってるより酒回ってるぞ。ここに居たら飲まされるから」

自分も一緒に出るから、とまで言ってくれた高瀬が、これ以上は飲まない方がいいとグラスを遠ざけてくれる。
気を抜けば一気に飛んでいきそうな意識は、かなりの酔いだろうと誠自身も思う。そして、自分のような大きな男が潰れたら確かに大変だろうということも。
しかし、高瀬に付き合わせては逆に目立ちそうだから、

「いや、俺ひとりで大丈夫やで」

かろうじてまだしっかりとしている思考と呂律を思えば大丈夫だろうからと、誠はやんわりと高瀬に遠慮して、いつもの倍以上に重く感じる腰を浮かせた。

「ホントに大丈夫か?」
「ああ。サンキュ」

そんなやりとりをして誠が席を立つと、それに気づいた拓郎がアハッと笑った。

「あ~ほら、誠、すでに酔っぱらいじゃん。顔真っ赤だし、フラッフラだし」

食べないで飲んでるからだぞ、と楽しげな拓郎の笑い声が、背後から聞こえる。

「っさい、アホ。お前も真っ赤やろが」

軽く振り返りいちおうそうツッコんで、誠は個室を出て、そのまま店の外へと出た。笑顔でしっかり言い返せる程度には、やっぱりまだ多少の余裕はありそうだなんて、ちょっとホッとしながら。

店の入口から少し歩いて、隣の店との間。その狭い空間に腰を下ろした誠は、壁に寄りかかると、外気を大きく吸い込んでから息をついた。
室内の籠った空気と違い、からりと晴れた今日の風はすがすがしい。酔っていなければ若干肌寒さを感じる程度の涼しい空気も、火照った顔にとても気持ちが良くて、誠はようやくリラックスできた。
しかし、緊張の糸が切れたおかげで、酔いも一気に回ったようで。ふわふわとした感覚が、そのまま眠気を誘うだけでなく、頭痛も呼び寄せてきた。

「あ~、帰りてぇ…」

このままベッドに沈み込んでしまいたい。でも帰るのすら面倒くさい。
ならば少しだけここで眠ってみようかと、ここなら起こしてくる人間もいないからと、誠はスッと目を閉じる。
その時だった。

「誠っ」

またもやそんな邪魔が入って。
それは、先ほど起こされた高瀬ではなく、しかし誠が良く知る声。聞こえるはずのないその人の声がはっきりと耳に届いて、思わず戻った意識が、誠の顔を横へと向けさせた。
そこには、ぼんやりとだが絶対に見間違うことのない、その声の主が駆け寄ってくる影があった。

「…りょうたさん?」
「大丈夫?飲みすぎたか?」

傍にしゃがみ込んできた風見が、心配そうに眉を顰めながら、誠の肩にそっと手を置いて覗き込んでくる。

「え、何であんたが…?」

どう考えても風見が気づくわけがなくて、真剣な風見に反し誠はただただポカンとしてしまう。
そう、風見とは、店では全然喋っていないのだ。風見は自分たちとは別の連中とずっと会話していて、こちらには見向きもしなかったのだから。
すると風見は、小さく息を吐いてから誠の頭を優しく撫でてきた。

「最初っからずっと、お前の飲み方はまずいと思ってたよ。でもあんな場所で注意するのも、何か保護者みたいでおかしいし。ていうか最近の俺がそんなこと言える立場じゃないことぐらい、さすがに俺だってちゃんと自覚してるし。
それより、そんな薄着でこんなとこいたら今度こそ風邪ひくぞ。早く帰ろう?送るから」

酔った頭にも優しい、風見の触れ方。心を落ち着かせてくれるような手の感触は、いつでも誠に安心感をくれる。
やっぱり風見は、自分の変化に敏感だ。誠は、しみじみとそう感じた。見ていないようで、ちゃんと見ていてくれるのだと。

「ありがとう涼太さん…」

だから気が付けば、誠はそう口走っていた。
そうだ、これでじゅうぶんじゃないかと。この人は多少の横暴はあったとして、それ以上にいつだって自分に優しいじゃないかと。それがどんな理由だって、失うことに比べれば何百倍もマシじゃないかと。そんなことを思いながら。
そんな誠に、風見は一瞬だけ顔を歪ませたものの、

「誠、ここで待ってて。俺、すぐ戻ってくるから。な?」

両手で誠の頬を挟んで子供に言い聞かせるようにそう言ってから、立ち上がって。

「いいか?ちゃんと待ってろよ?すぐ戻るからっ」

そう念を押して誠が頷くのを確認すると、次の瞬間には走って行ってしまった。

「慌しい人やなぁ」

風のように去っていく風見を見送りながら、誠は思わず笑ってしまう。いつだって肝が据わって堂々としているくせに、時折こうしてバタバタと落ち着きなく立ち回る風見も、やっぱり愛しい。
結局自分はもう、風見がどんな姿だって愛しく思ってしまうのだと、だいぶ救いようのない恋心に誠はまた苦笑いしてから、今度こそ目を閉じた。
もちろん、風見が戻って来た瞬間に叩き起こされたが。


あれから自分がどうなったのか。
誠は、いまいちよく覚えていない。
所々覚えている気もするが、どれが現実でどれが夢だったかは曖昧なままだ。
眠りに落ちかけていた自分は戻ってきた風見に起こされ、しばらくそのまま2人でその場に居た。"タクシーが来る"とかなんとか風見が言っていた気がするけれど、それすら誠はよく覚えていない。
ただ、

『誠』

自分を呼ぶ風見の声が優しくて安心したことは、ハッキリ覚えている。そして、風見が自分の肩を抱き寄せてずっと寄りかからせてくれていたことも。
しかし、すべては自分の都合の良い夢だったかもしれないとも、誠は思う。
タクシーが来ると自分を立ち上がらせてくれた風見が、腰を抱くようにしてずっと支えてくれていたなんて。タクシーの中でも肩を貸してくれて、『大丈夫?気分悪くなったら言いなよ』と声を掛けてくれていたなんて。

『お前がこんな風に飲んだのは、きっと俺のせいだ。ゴメンね、誠』

そんなことを、言ったくれたなんて。昨夜の言葉を気にして、意地っ張りなはずの風見が素直にそんなことを言ったなんて。
酒に飲まれた自分の、身勝手な夢か幻聴に違いないと。
そうじゃなければ自分は、風見への想いにケジメがつけられないから。世界で一番、たった一人好きなのに叶わぬ人にそんなに優しくされたことが現実だったら、とてもじゃないが割り切れない。
だから……
夢なら自分も、少しだけ素直に、いつも言えないことを言ってもいいだろうか、なんて。

『俺、涼太さんが居てくれたから役者続けられたんやで』

そんなことを口走った気がするが。
それも誠は、いまいちよく覚えていない。

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