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「立ち入り禁止(誠×風)」
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立ち入り禁止 5-2

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―――あれ、なんかまずかったか?

自分では大したこと言ったつもりないのだが、何か地雷を踏んでしまったかと、誠は少しだけ焦りを感じた。
失言?いやまさか、実じゃあるまいし、と。

「あ、ごめん、俺なんかまずいこと言うた?」

慌ててそんな風に謝ると、風見はゆっくり首を振り、小さく笑った。

「誠ってさ、いっつも俺を甘やかすよね」

不意に、そんな言葉。

「甘やかす?」
「そう。お互いに微妙な空気になったときとか、険悪ムードになったときとか、どんなときでも必ず誠が最後は許してくれる。本当はお互いが原因の可能性が高いし俺が100%悪いときだってあるのに、それでも誠は最初は怒っても、すぐに折れてくれる。誠が謝ってくれる。俺から謝ったことなんて、ホント、お前の1割にも満たない」
「だってそれは、たぶん俺が悪かったんやろうから」
「ほら、そういうとこだよ」

即座にそう言い返してくる風見の、いつになく低いトーンの声。それでも今日は、その声が2人の空気を和らげている。

「俺、誠のそういう優しさ、ちゃんとわかってたはずなのに。この気持ちに気付いた瞬間、すっかり忘れてしまってたんだ。好きになればなるほど、自分があまりにいっぱいいっぱいで、自分だけが苦しんでるような気すらしてきちゃってさ」

こんな気持ち抱えて、苦しいのは自分だけなのだと、そんな身勝手な苛立ちが募ってしまったのだと風見は打ち明ける。

「気付いたのはいつだっただろ。今のドラマでお前と去年、共演したときかな。もとから俺がお前たち兄弟が好みで特に誠がタイプってのは嘘じゃないけど、恋とかそういうのとはまた別次元だったはずなんだ。それが、お前が恋人っていうシチュエーションを仕事とはいえ経験した途端、なんか普通にぜんぶ持ってかれて。10年以上付き合ってきて、こんなのベタすぎるんだけどさ、お前が好きでたまらなくなった」

外見だけじゃなく、中身も含めてすべて。自分が描いた理想の恋人は、こんなに近くにいたことに、フィクションとはいえ恋人同士という関係を経験したことで気付いてしまったのだと。
誠の、さりげない気遣いも優しさも、おおらかな性格を思わせる豪快な笑い方も、男前のくせに色気もムードもない残念な性格も。一度"好きだ"と気付いてしまえば、全てが風見の気持ちを加速させた。付き合いの浅い人間と違って自分たちには10年以上という月日がある分、一度火が点いた想いは歯止めが利かなくなった。

「これもまたベタなんだけど……誠の優しさとか、俺を甘やかしてくれるとことか、手っ取り早く実感したくなる度に、酒に頼ってた」

限度を超えた飲み方をする頻度が増えていたのも、敢えて誠のマンションの近くの店を選んでいたのも、誠を独占するため。いい歳してバカだと思いつつも、止められなかったのだと。風見は、苦笑いで頭を掻く。

「誠に、好きだって言ってみたりベタベタしてみたり、ふざけてでもそういうことしてないと自分の心がパンクしそうで。そのうちさ、仲間にまで……司にまでムカついてきて」
「……え?」
「お前が俺に壁作ってるんじゃないかって気づいたとき、最初は俺の気持ちに気づかれたからなんじゃないかって不安になったんだ。俺は例えふざけてやってるとしても心ん中じゃギリギリの状態だし、隠してるつもりでも顔とか態度に出てたんじゃないかなって。
でも、どう考えても誠は気づいてなさそうだし。じゃあ何を俺に隠してるんだろうっていろいろ考えてたら、もしかしたら司とのことなんじゃないかって」
「高ちゃんとのことって?」
「司とお前の、その…2人の関係、俺疑ってたんだ」
「は?」

思わず誠は、目を丸くして呆けた声を出した。
今、聞き捨てならないというか、恐ろしい一言を聞いた気がする。
顔が自分でもわかるほど引きつって、誠は思わずメロンパンをベンチに置いた。

「何でそんなこと思うん?」
「だって、なんか仲良いし…」
「そんなん昔からやろ」
「俺の知らない、2人だけの時間がいっぱいあって。なんか…」

ユニット関係者ではない自分だけが、知らない空間があること。それは今までは寂しい程度にしか思っていなかったが、この気持ちに気付いてからは、素直にそう思えなくなった風見は、曲がった見方をしてしまうようになってしまっていたようで。
誠は、そこまで思いつめられていた風見に驚いて声が出なかったが、風見としては真剣にそんなことを考えていたことは、思いつめた横顔を見れば明らかだった。

「司は誠と現場一緒になることも多いし、俺とは条件が違いすぎる。こんなの不利だって。そんなの俺がはっきりさせないで足踏みしてるのが原因なのに、やっぱり俺、自分が被害者になった気分になってたんだ」

自分は苦しいのに、高瀬はずるい、と。
風見のそんな言葉が、誠の胸を締め付けた。

「誠の一挙手一投足はもちろん、司のことまで疑って左右されて」

俯く仕草に、風見の必死な感情がはっきり表れていて。

「自分がどんどん嫌な奴になって」

泣くんじゃないかと、心配になってくる。

「でもどうにもならないから結局お前に苛立ちぶつけて。どんなに俺が聞き出そうとしてもお前言わないし、それはお前にとっては本当に言いたくない悩みだったんだろうけど、お前の悩みは司との関係っていう図式が出来ちゃってる俺には、お前がどんどん離れていってるような気分がして。自分へのイライラをお前への怒りに変換して八つ当たりすることで、治めようとしてた。それが一番嫌なのに、一番したくないこと、一番したくない相手にやっちゃってさ。誠への気持ちが伝わらない言い訳を、いっつも探してた」

『そんなに誠のこと分かるってんなら、お前がコイツのマネージャーになってやれば?』

誠の脳裏に、高瀬と自分に向けて吐き捨てた、あの日の風見の言葉が蘇る。
そして風見もまた、あの日のことを考えているようで。

「あのときもさ、突然現れたのは司なのに、まるで俺が邪魔してる気分になって。苦し紛れとはいえあんなこと言って。あんなの誠が怒って当然なのに、俺はやっぱりお前を責めてたんだ、心ん中で」
「俺を?」
「俺がどんな思いでそんなこと言ったのか、ちょっとぐらい考えてくれてもいいんじゃないかって。そんなの誠にわかるわけないのに、俺はそうやってまた自分を守ろうとして。お前から、"司に謝れ"って言葉が出るのは当然なのに、俺はただ、自分だけが除け者になった気分になってた」

『俺だけならまだしも、高ちゃんに失礼やろ。謝れやっ』

そう言われたとき、顔を背けてしまった理由はそんなことだったのだと、風見は苦笑いで告白する。

「誠の痛みとか、俺、なんも考えてなかったよ」

肩を落とす風見があまりに小さく見えて、"もういいよ"と言ってやりたいけれど、続きが聞きたい気持ちも本心で、誠はただ黙って風見を見つめていた。

風見の様子が最近おかしかった理由が、やっとわかった。
そしてそれは、とても愛しい理由だ。

風見は、自分のことが好きだから、気持ちが伝わらなくてイライラしていた。誠が作った壁、ギリギリの境界線、それらへの風見の怒りは、怒りじゃなくて淋しさや不安の表れだった。
自分に"好き"だとか"誠ならOK"なんて発言を連発したのも、ただの冗談なんかじゃなくて、そこに本気を込めていた。

『誠って、いま付き合ってる人、いる?もしくは好きな人』
『別に、居らんよ』
『あ、また嘘ついた』
『ついてへんよ、何やねんそれ』
『そんなの自分がいっちばん知ってるんじゃないのかぁ?』

自分にとにかく突っかかって皮肉を言ったのも、高瀬とのことを誤解して、そのことを何が何でも言おうとしない誠が、風見には恋人を守る姿に見えてしまったから。
高瀬が部屋に来ていること知っているくせに、酔い潰れた自分の迎えが誠じゃなきゃ嫌だとダダをこねたのも、誠と高瀬を2人きりにしたくなかったから。
そう、風見は、高瀬に嫉妬していたのだ。

『涼太さんのストライクゾーンは、ホンマ広くなったもんな。心と一緒で。"人間の男であること"やったっけ?』

誠のその発言に対していつになくキレたのも、誠のことを本気で想っていたからこそだと。

「そうやったんか……」

風見は、そんな風に想ってくれていた。信じられないがそれが事実なのだとようやく理解した誠は、ふと、もう1人不審な行動をとっていた奴がいたことに気づいた。
もう1人というのは、もちろん高瀬だ。
シャイなはずの高瀬が、最近やけに自分にベタベタしたがっていた。しかもそれは、今になって思えば、決まって風見のいる前や風見の耳に入るような状況下で。そのときだけ、自分に対しておかしな行動をとっていた。そのことに誠は気付いたのだ。

―――ああ俺、ハメられたんか……

『おせっかいでもガンガン首つっこまさしてもらうからな』

あれは、本気だったのだと。
誠がいつまで経っても我慢しているから断念して、誠と違って行動に出すことで何とかしようとしていた風見を落とさせたってわけかと。
どうやら自分は高瀬という友人を見くびっていたようだと、誠はまた肩を落とす。
しかも、感謝せざるをえないというのが、さらに悔しい。やり過ぎ感は否めないが、結局、誠は風見の本心を聞けたのだから。
だが、高瀬よりも何よりも、やっぱり……

「涼太さんは、ズルいわ」

それが、誠の本音だ。

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